JICA海外協力隊の世界日記

黒海中継 by チーム・ギレスン

トルコ・ギレスン県の食品小売流通事情の一考察

チーム・ギレスン 丹羽です。

今迄、地域の歴史等をご案内してきたが、今回はJICA活動内容の一部をお伝えしたい。ギレスン県チャモルック郡の乾燥インゲン豆の地域認証取得関連の活動をしている。その一環で、同産品のマーケティング活動に関するアンケート調査を、県庁所在地ギレスン市とチャモルックの2ヶ所で今春に実施した。設問は全体で約30項目 (設問は、マーケティング4P《4要素》に沿いつつ、回答は殆ど選択方式とした)で、そのうち生活者の購買行動の違いについて、日本との比較も含め言及する。尚、皆様のご理解の一助とすべく、参考に以下3項目を記載します。

①トルコ食品小売流通の一般事情・他: ・スーパーマーケット(SM:süpermarket)売上の食品市場シェアは、2011年に始めて50%を越え、食料品店(バッカル:bakkal)や青空市場(パザール:pazar)の伝統的業態からシェアを奪いつつ、近年は年率9%程の成長率と推定(出典により多少統計数字が違う事、了承下さい)。SM業態の全国19千店舗のうち、60%がディスカウンター(DS)。 ・個別チェーン企業について…*BIM(DS)4500店舗、年商145億トルコリラTL(1TL≒36円)・約5200億円, *A・101(DS)4400店舗、年商33億TL・約1200億円, *ŞOK(DS)2600店舗、50億TL・1800億円, *カルフール・サ(SM) ’16目標750店舗、年商50億TL・1800億円, *ミグロス(SM)1150店舗、81億TL・2900億円、多岐に渡る業態を展開(ジェット~MMM) ・比較参照(日本に於ける大手食品小売流通) *イオングループ(イオン・マックスバリュ等1440店舗、売上高8.2兆円)、*IYグループ(国内7-11;19000店・IY186店舗、関連売上高10兆円)、*CGCグループ(加盟店舗数4000、売

②ギレスン県について: 黒海地域の北東部に位置し人口43万人、ギレスン市は黒海沿岸部にて10万人程、チャモルックは県下の17の郡の一つで、最南部(=最も内陸)に位置し、人口3千人程(?)だが夏季は出稼ぎ帰り等にて7千人程になる。県の農地の64%が最大作物で且つ最大輸出商品のヘーゼルナッツの畑である。但し、該当畑は黒海沿岸から25K程範囲の場所に集中し、それ以外の内陸での生産は無い。ギレスン市内には30程のSM(DS含む)とSSM(スーパーSM=大型スーパー)が3店舗あり、各地で週1回はパザールが開かれる。チャモルックではSMが1店舗、数店の食料品店が中心部にあるが、24を数える遠隔地のキョイ(köy: チャモルックでは小規模村落)に、食料品店もほぼ無い。

③小売流通構造: 全般的には、季節の野菜・果物は鮮度等の関係からパザールでの購入頻度が高く、調味料等の一般加工食品はSMが強いと想定される。適温流通の関係からか精肉・鮮魚のパザールでの販売は無く、肉はSMや専門店(kasap)での購入と思われる。DSや食料品店の生鮮食品の品揃えは少ない。SMでは、当然ワンストップショッピングのメリットはあるが、私見では商品管理に一部の課題があり、野菜等の鮮度が落ちると安売りを繰り返す様子もある。パザールではKg単位の販売が多く、一人/二人世帯は困る場合があろう。又、低温流通・保管等、適温管理や衛生管理に課題があると思われる。商品カテゴリーの違い等により生活者の複数場所購買もあろう。

以上、前置きが長くなったが、今回のアンケートの一項目にて、普段どこで乾燥インゲン豆を購入するかを聞いた。都市部のギレスンではSMが46%(ミグロス等のSSMも9%)、地域食料品店16%、パザール15%、友人から(arkadaşlardan)が14%となった。一方チャモルックでは、友人30%、パザール26%、農家での自作(ürün kendime)19%、移動販売業者(seyyar satıcı)11%、地域食料品店6%の結果となった。以下、多少コメントします。

①地方郡部ほど、伝統的業態即ちバザール等の比率が高い傾向があるのでは。

②農業産地にて保存(常温)食品で生産地の場合、友人からの直接購入が多い。又、自作農家は購入しない比率も高い。

③キョイのように山間部に位置し、交通が厄介な場所は移動販売(車)の仕組みが根付いており、重要なライフラインだと思われる。現在の日本はCVSの役割が高いが、この国には存在しない。

④トルコの圧倒的消費地はイスタンブルであり、大型モールが93あると聞いている。尚、出店に際し安全管理面との綱引きはあろうが、営業時間帯、立地、惣菜等の品揃え、各種サービス機能等CVS(コンビニエンスストア)のニーズはあるのでは。

⑤一方、地方郡部では需要想定規模からSMの出店も稀な場合がある。

⑥一生活者でも、ある特定商品を、季節によっては友人から購入したり、SMで買ったり、パザールで購入(複数購買)する場合もあろう。パザールの来客者は比較的年齢層が高い様子だが、対面販売のメリットを活かすべきだとも思う。又、場所により衛生管理状況等違いがある。尚、カード決済比率が高まればSM比率も高まる。

⑦これら結果も踏まえ、小型容量(1Kg)新商品のギレスン市内でのアイテム化は、SMを最優先とすべき。

*今回、全て手作りの小規模な調査(N数は各57と39)であり、十全では無い事は認識している。一方、アンケートを通し、同じ県内でも商品購入先業態の違いが大きいことを実感した。最後に、一方通行は宜しく無いので、質問等あれば、是非ご連絡願います。

チーム・ギレスン SV 丹羽世之樹

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