JICA海外協力隊の世界日記

ジャマイカ×水泳×パラリンピック

縫い物から考える義務教育とジャマイカの教育

2016年の夏、世界的に大流行したポケモンgo。

通常、ゲームと言えば家で行う物という認識が強く、引きこもりの原因としてもよく挙げられることも多いが、ポケモンgoはそれを覆すような画期的なシステムを搭載したゲーム。

ジャマイカでもそのブームは凄まじく、大学を通るたびにポケモンを求めて走り回る学生を見てきた。

元々ゲーム好きな私も、友人に誘われてそんな学生の群に紛れて私も走っていたことがあるのは言うまでもない。

こんにちは、とある週の歩行距離は100km、本間です。

一日平均、15km弱ですからね。今考えると恐ろしいですね。

今はもうやっていませんが実際に当時やってみて思ったのは、まず運動不足が圧倒的に解消される。

そして、周りの人とコミュニケーションの1つにもなる。

スポーツをやっていると分かるが、意外と英語が喋れなくても上手いことコミュニケーションが取れてしまうもの。ゲームも同じで、目的を同じにする人が集まると自然と団結する。ゲームもやり方によっては外国での暮らしのコミュニケーションの一つとして十分にあると感じました。

そして、どこどこにポケモンが出たとすぐに教えてくれるジャマイカ人の親切さも垣間見れました。

さて、本題に戻りますが、縫い物してました。

写真をみてわかる通り、プールフラッグの作成ですね。

いかに経費を節約して物を作るか。ジャマイカに来てから用具が全然ない環境の中で、いつも頭の片隅で考えています。

そして今回至ったのが、

ロープは買って旗はテーブルクロスで縫えばいいや。

という、なんとも投げやりな考え。

裁縫道具をたまたま友人から頂けてしまい実行に移りましたが、テーブルクロスが意外と簡単に縫えちゃったため、玉止めと玉結びしかできない私でもすんなり完成。

フラッグの数は最小限しか縫ってないですが、それでもそこそこ形になる。

お金も1000円ぐらいで済んでますかね。

正規品だと買おうとすれば三角形のフラッグ1つで100円以上しますから、それだけで画像にある数で3000円弱とか。 ロープやらポールも合わせたらどうなってしまうのだろう…

ちなみにテーブルクロスは200円もしない額の上に、これだけ型とってもまだ生地は半分以上残ってるのでだいぶお金に優しく済みました。

10年以上ぶりに縫い物した私ですが、ふと思ったのが、

玉止めとか玉結びとかをはじめとして、当時は一生使うことないだろうと思いつつも学校で義務教育の一つとして学んでいたことが、意外とここに来て役に立っているということ。

英語では中学英語程度で生活しているし、理科では酸素がないと火が燃えない仕組みを知って魚とりする時は火おこしするし、家庭科ではたまたま1回やった魚を捌く実習の経験が海に行った時に生きているし、算数では時間計ったり距離の計算したりで欠かせない。

他の科目でも、何かしらつながるものがある。

単純にこういう教育を受けれたのは今になったらすごくありがたい。

そして、こういった教育が義務教育として扱われる日本では必ず全員が学ぶのに対し、ジャマイカではどうやら差があるようだ。

縫い物なんて学校では習ったことない。水泳の授業なんて受けたことない。

このようなことはたまに聞くが、これには単に教育環境の差だけでなく、教育システムや教える側が抱える問題も影響しているのかもしれない。

そう考える1つに、ジャマイカには、「Gsat」 (Grade Six Achievement Test) なるテストが存在する。

すごく簡単に言えば、このテストで行く高校(日本言う、中学と高校の6年間)が決まりますよ、というもの。

このテストに通れない場合、普通の高校には行けずにそれとは別の学校に行くことになる。

それを、小学6年生の子どもが受けなければならない。

普通の高校と別の学校にどのくらいの教育レベルの差があるのかは分からないが、テストの点数で分けている以上はレベルに差があるのが普通であろうし、もしかしたら先生のレベルも違うのかもしれない。

義務教育を9年間受け、少し大人に片足突っ込み始めた14.15歳で自ら行きたい道を選んで最初の受験をした私にとったら、

小学6年生という完全な子どもの時期にテストを勝手に受けさせられ、その結果で勝手に敷かれたレールの上を歩かなければならない、

という少し酷なテストに聞こえてしまう。

そして、6年生の前に、「G4LT」(Grade 4 literacy,numeracy tests) なるテストも存在するらしい。

記事を読むと、

Students must attain mastery of Grade 4 Literacy and Numeracy to qualify to sit the Grade Six Achievement Test (GSAT).

とある。つまり、このテストが突破できないと、GSATすら受けることもできないらしい…

いつの間にか人生の岐路に立たされているのである。

最近突如として浮き具を卒業し、普通に歩き出した子どもたち。陸では補助具が無いと歩けない子どもも、のんびり1年半ぐらいでここまでこれた。

この子達で8歳ぐらい。

そう考えると、1年もあればいくらでも伸びる素質をもつ子ども達が、10歳という幼い時点で振り分けられてしまうのはやはり厳しい。

私の場合、6年生の時点では成績も真ん中より上ぐらいだったが、4年生の時点だと例えば漢字の小テストは毎回10点中1点とかそんなレベルで、成績はクラスで後ろから数えた方が圧倒的に早かった。

私がもし子どもの時にジャマイカで暮らしていたら、G4LTで躓いてGSATは受けれていないだろうな…

そして、もう1つの教育に関わる問題の可能性が、先生のレベルである。

というのも水泳で言えば、ほとんどのコーチや先生はプールに入ることすらなく、指導者によっては上から金属の棒を持って、

手はこうしてこうだ!

と子どもの腕を棒で突いて叫んでいるだけなのだ。

4泳法全て泳げる選手ならまだしも、呼吸することすらままならない溺れかけの子ども達にこれは酷い…

そしてここで思うのが、

実は指導者が泳げないのではないか、

ということ。

とあるプールでは、何故か一時的に指導を頼まれた監視員がプールに入ってちゃんと補助して指導していたのを見て、逆に笑ってしまった。

泳げる者からしたら、それが安全かつ適切な指導方法だと自然と分かるのかもしれない。

しかし実際に指導をするのはコーチだから、いかにこの監視員が優秀でも誰にも気づかれることなくその指導能力が生かせず埋もれてしまうのはもったいないなぁ。

そして学校教育の現場でも、先生が指導できない場合があるという話も、他の隊員から聞いたことがある。

小学校なら多くの科目があれば1つぐらい苦手なものがあるのは仕方がないが、指導できないというのは困りもの。

こういった指導者側の差が学校ごとにもあるとなれば、GSAT等で振り分ける意味がますますなくなり、上と下でひたすら差が出てしまうだけになる。

私たち大人は、大人になるとどうしても、

もっと勉強しろ、もっとしっかりやれ!

と、子ども達(とその成績)に目が向きがちだが、

教育でも生活でも、その子ども達を指導する立場にある私たち大人の方が見直すべき面を多く持ち合わせているようである。

と、ジャマイカに暮らしてみて感じる。

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