JICA海外協力隊の世界日記

全身サモア

サモアで「展示する」ということ

私が活動を行っているサモア国立博物館では、7月1日(土)から新しい展覧会がオープンしました。

在サモアのオーストラリア大使館の企画に展示場所を貸している形ですが、キャンベラにあるオーストラリア国立博物館が2013年から翌年にかけて開催したアボリジナルアートの大型展覧会 "Old Masters : Australia's Great Bark Artists" から10作品を選び、パネルにして諸外国で巡回展示することで、先住民の芸術を広めようというというこの企画。

オーストラリアから搬入されたパネルは、実際の作品よりも小さめで、すべての作品を同じ大きさで見せてしまうという強引さもありますが、樹皮に描かれた繊細な線の一本ずつがギリギリ確認できるプリントであり、さらには作家の紹介と描かれたモチーフの図解まで読みやすい長さやデザインで情報が付与されていました。パネル作成者の見る人々への配慮がとても感じられます。

サモアの国立博物館でも、一点だけアボリジナルアートを所蔵しており、今回はパネルだけでなく実際のペインティングも同時に見てもらえることになりました。加えて、先住民のブーメランやイルカの彫像など関連する収蔵品も同じ空間に展示しています。

今回はこの展覧会の準備を手伝うなかでみえてきた、サモアで「展示する」ことについて書いておきたいと思います。

展示作業に入る前に「どんな風に展示する?」とサモア人の同僚と話していて、来場者の目線の位置を考慮して、同じ高さできれいに揃えて展示できるといいよね、と話していたのですが…気づいたらリズミカルかつ、下からパネルを仰ぎ見る展示となっていました。

このような展示になったのは、展示の作業に来てくれた業者の人たちが、元々室内にあった抜けない釘を活かしたというテクニカルな側面も大きいのですが。日本で展示作業をしていると、基本は成人の目線の高さを中心として作品や物体を配置することが多く、それ以外の展示を行うにはそうする積極的な理由(子どもを対象とした展示だとか、デザイン上の理由だとか)が求められます。元あった釘なんか抜くのが普通という日本から、なんでも活かしてしまうサモアの文化のなかにいるんだなという実感が湧いてきますね。合理性みたいなものはあるけれど、ただ別の尺度の合理性で動いているんだなあという気がしています。

博物館にいることで、サモアの展示位置は高めかもしれないと疑っていたのですが、この仰ぎ見る展示を目にして思い出したのは、多くのサモア人家庭に飾ってある写真のこと。ファレ(家)の外から見えるオープンスペース上部に記念写真を展示する家庭が多いのですが、その展示がまさに仰ぐ姿勢。日本でも古い民家などで先祖代々の写真を飾っていたりしますが、ただ見やすい位置に展示するのではなくて、敬うという意味がものを見せることにこめられている気がして、印象深い出来事でした。

またこれは偶然だと思うのですが、リズミカルな展示はアボリジニの音楽をも内包する描線と親和性があって、図らずしも私が学生時代に研究していた、展示するものの内容と見せ方の思想的な一致や関わりをも体現するものになっていたのでした。

さて、そんなこんなで迎えたオープニングセレモニー前日。それまでも招待状のデザインやら発送手伝いやらという作業はしていましたが、今回は会場を貸しているということもあって、展示作業よりもセレモニーの準備が正念場だった!

「今日はここまで作業をします」というような打ち合わせのないまま、普段は定時前の明るい時間に帰っていく同僚たち(もちろん私も帰ってますが)と一緒に、なんと大雨のなか暗くなるまで掃除やなくなってしまっていたラベル作りなどに勤しみました。

オープニングセレモニー当日は朝から会場作りや装飾を。いかにものを持ってきて(やはり足し算の美学というか、ものは多く置かれていたほうがよいらしい)空間をアレンジするかということにみんなで頭を悩ませつつの作業でしたが、ココナッツリーフをどこからか持ってきてみんなで編み上げる様子や、敷地内のどこかから花をとってきてすいすい活けていくさまは、ほほえましくも素晴らしい光景で、今回一番こころに残ったのでした。

写真は、6月から一緒に働きはじめたMuseum Officerのアイナちゃん。

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