JICA海外協力隊の世界日記

全身サモア

ミュージアムがつなぐもの

日本のミュージアムでは大抵年末か年度末に、来年度行う予定になっている企画展のスケジュールくらい出しますが、現在私がいるサモア国立博物館には、なんと年間スケジュールなるものがありません。教育スポーツ文化省の一部なので、ミニストリーの年間マネジメント計画があり、イベントの種類と回数くらいは目安がありますが…

派遣された当初こそ、次年度行うイベントの大体のスケジュールを決めた方がいいのではないかと提案していましたが、段々とスケジュールを決めない真意がわかってきました。それは…

突然決まることが、多すぎる!!

ここサモアでは、ボスが言ったことが絶対な部分があるため(その絶対をいかに崩していくかが私の重要な仕事だったりするわけですが…)ミュージアムの人たちで決めていたことが、その上のACEOの一言で覆ってしまったりします。まあスケジュールがフレキシブルなことで、チャンスを掴みやすいとも言えるのかもしれませんが。

今回は、そんなサモア国立博物館で昨年末に行われたイベントを紹介します。

①ミュージアム・トーク「Hot Topics in Museums and Heritages」(10月31日)

関西大学の村田麻里子先生、金沢大学の谷川竜一先生をはじめとする、ミュージアムと文化多様性に関する研究チームが、サモアをご視察されるという嬉しい連絡を受け、ミュージアムトークをお願いしました。

サモアには博物館学芸員を養成する課程はもちろん、博物館に関する専門的な知識を得られる場がありません。そこで今回は、一線で活躍される研究者のお二人が、博物館学や文化遺産に関わる領域で最近関心を持っているトピックについて発表していただきました。文化に関連する施設で働く人々、外国からの留学生など様々な方々が聴衆として集まり、発表後のQ & Aセッションでは、発表とサモア国内の問題を照らし合わせて活発な議論が行われました。

②ポーランド独立100周年記念イベント(11月6日)

ニュージーランドにあるポーランド大使館(パシフィック地域も管轄)からの持ち込みイベントで、大使自らが会場の下見や折衝、当日のセッティングなど全てをされていたことが印象的だったイベント。ポーランドの独立について、歴史も学ぶことができました。その後は、ポーランドのショートフィルムの上映会。近隣の小学生十数名も急遽このイベントへ招待され、ポーランドの絵本などをゲットして嬉しそうでした(ミュージアムで行う必然性の議論はさておき…)

会場装飾やセッティングなどお手伝いしましたが、企画者とミュージアムがもう少し話し合いながらイベントを作っていけたらいいのにな…と思った瞬間でした。

③展覧会 "The History of Chinese in Samoa"(11月29日より)

1903年にサモア国内のプランテーションで働くことを許可された中国人労働者の人々。現在では、サモアのおよそ1/4の方々が中国系の祖先を持つと言われています。おじいさんが中国からサモアへ渡ったRonaさん。彼女が中国大使館から展覧会開催のための予算を得て、図書館などで収集していたサモアにおける中国の方々の資料を展示しました。展覧会のオープニングは、中国系の祖先を持つサモアの人々が一堂に会する機会になっていたのが印象的でした。

ミュージアムというと、モノの収集と展示が中心で、とても静かなところだと思われがちですが、収集されるモノを作りだしたのも人であり、それを見るのもまた人であり……ミュージアムで行う内容によって、こんなにも集う人の多様性が生み出せるのかと驚き、博物館の可能性を感じました。

まあ願わくば、ミュージアムが主体となって、企画を受け入れる際にも外部の企画者とよくコミュニケーションを取り、企画の受け皿として責任を持つことが理想ですが…つぎはぎだらけのミュージアムにならないよう、これからどうしていくべきか真剣に検討する時期に来ていると思います。

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