全身サモア

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慶野 結香
(神奈川県/秋田県)

ボランティア/職種
青年海外協力隊
学芸員
派遣国
大洋州
サモア 首都アピア
一言メッセージ
2016-3次隊として、2017年1月末から太平洋の真ん中に浮かぶサモア独立国にある国立博物館(Museum of Samoa)へ学芸員として派遣されています。

 

博物館資料を公開する

2018.02.27

文化 活動

サモア国立博物館には約500点もの収蔵品があり、その多くは博物館内に展示されています(収蔵品保護のためには、時々展示替えをするのが理想的だけれど……)しかし展示環境的に、なかなかギャラリー内に出せないものも多く、その代表が「タパ布」と呼ばれる樹皮布です。サモアでは「シアポ―(Siapo)」と呼ばれています。

コットン素材が、現在のように衣服の主流となる前は、腰巻き布としても使用されていたシアポ―。今では踊りを披露するときぐらいしか身につけているのを見ませんが、様々な図柄があり、その図柄のつけ方も何種類かあり、年代によって図柄の流行もあり、細かく見ていくととても面白いものです。身につける他にも、儀礼交換財として(主流はやはり編んだマットですが)現在でも結婚式やお葬式で交換されていたりします(トンガやフィジーほどではないけど!)

現代美術作家として世界的に活躍しているユキ・キハラさんが、最近作品制作のためにシアポ―をリサーチしているということで、樹皮布をカルチャーセンターで実際に作っている姉妹を連れて、博物館に見学に来てくれました。職場の同僚は気の進まない様子でしたが(めんどくさいことが嫌いだから笑)博物館資料を研究のために公開することは、博物館の社会教育施設としての基本的な役割の一つであり、常設できていない展示品を広げることはコンディションチェックのためにも必要であり、資料を専門家に見せることは博物館にとっても収蔵品の新たな一面を考察するいい機会であり……と博物館にとっても受けない理由がないいい申し出でした。

博物館には20点を超えるシアポ―や関連資料が収蔵されています。コレクターなどから寄贈された1800年代のものもあり、なかには出自がわからないながらも興味深いものがたくさん。実際にシアポ―を作っている二人と対話することで、これらが何の用途で作られたか、染料は何かなどなど推察することができました。

特にみんなの興味を惹いたのはブルーの染料が用いられたシアポ―で、これはインディゴ染料の可能性が高いとのこと。ラマ(ククイの木)から取れる黒い染料による色つけもランダムでなかなか面白いものになっています。

サモアの博物館にはフリーハンドによる染め付けがされたものは少ないですが(もう現在はウポル、サバイイ島では作られてないことになっています。アメリカンサモアのツツイラ島ではかろうじて受け継がれ、コミュニティカレッジでも教えられている)版木による染め付けの方法についてなど、作りての視点からもたらされた情報はとても貴重で、改めてマテリアル・カルチャー面白いなと。サモアに慣れてくると、村とかに行かない限りは知的興奮する機会も限られてきますが、久しぶりに職場でいい体験をしました。ユキちゃんとハニパレ・シスターズありがとー。

実は上記の資料公開も、ACEOの許可を得たり、時にはCEOにレターが必要だったりと通常の機関ではあり得ない、非常に足取りの重い公開の仕組みになっているのですが(ミュージアムとしては収蔵品の情報公開と研究への寄与は存在意義として必須なものの、それよりもサモアでは収蔵品情報が機密のようになっている……長い年月をかけていつか公開される機会があればいいなと思い、オフライン・データベースを作成中ですが)プロフェッショナルなリクエスト以外にも、興味ある人がいて事前に言ってもらえればということで、時折ゲリラ的に公開したりもしています。2018年2月5日には、JICA関係の奥様方が、主にシアポ―に興味をもって見に来てくれました。首都アピアのタウンでは、市場の一角でお土産物の小さいシアポ―しか目にしない昨今。図柄もわかりやすくモチーフを描いたものが多くなり、幾何学的で暗示的な伝統パターンは少なくなりつつあります。古いものでも保存状態がよければ樹皮布は100年後でもきれいに残ることや、世界的に使われている「セイ」の柄、耳につける花の図案の不変のかわいらしさなど、何でもいいので面白さを感じてもらえれば(そして願わくば生活のなかで、なにかの拍子に思い返してもらえたら)いいなあと思っているこのごろです。