難民支援記録ー30年後の平和構築をデザインする

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近藤 靖
(神奈川県)

ボランティア/職種
青年海外協力隊
コミュニティ開発
派遣国
アフリカ
ウガンダ イシンギロ県カビンゴ
一言メッセージ
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の下で 生計向上活動に従事します。日本の先進技術を用いて平和構築を牽引します。

 

11月:UNHCRでの難民支援1年を振り返る。

2018.12.21

活動

<写真は、年次活動報告会の開始挨拶をするMusa氏と私>

こんにちは、難民支援の活動は10月末に1年を過ぎました。

前回の告知通り、年次活動報告会と、社会調査(消費者調査)の結果について触れます。

◆年次活動報告

始めに報告会について触れますが、ポイントは2点です。

1.15分で伝えられたこと、伝えられなかったこと

年次報告会では、質疑応答込みの15分での発表が求められます。登壇者への依頼事項は「具体的な活動内容・自身の工夫した点」を挙げることです。私の場合は組織のプロジェクト内部での仕事の割合が多く、前提情報として難民支援の枠組みや、年間の活動計画を話すことで時間を使ってしまい、先に挙げた依頼事項の後半については3つ挙げた為、

視聴者の消化不良となってしまったのでは、と反省しています。とはいえ、改めて発表資料を振り返ると、現場の問題をシステムとして捉えて、既存でない答えを導きだしたことから、問題解決のプロセス自体は赴任先の求めるものだったかと考えています。

私が工夫した活動3点は、それぞれ生産・加工・販売に関わる問題への取り組みです。

一つ一つの課題は結びついていて、どれか一つを解決するだけでは、最終的な目標(=普及)は実現しません。1年間で稲作普及をシステムとして捉えて、解決策をデザインする所までは進みましたが、成果として現れるまでのマネジメントはまだまだ発展途上だと感じています。

2.難民農家が語るコメの価値

<写真は、”農作業・費用の見える化”がもたらす価値を説明するMusa氏>

報告会では難民居住地からコンゴ人農家を呼びました。ムサ・ヨナシ氏はコンゴ民主共和国から8年前に兄と共に逃れてきた20代男性で、母国でも稲作の経験を持ちます。彼はUNHCRの稲作普及活動にて、対象受益者となる農家グループの代表者です。

私は支援機関側ですから、受益者の視点で語れる彼に同伴を依頼しました。

彼が報告会で語ったのは、農家として習得した技術と、消費者としてのコメの価値についてです。彼の言葉で語る技術の価値には、説得力を感じられました。聴衆の方々も真剣に聞いている様子が伝わり、それは2-3分の時間でしたが印象的でした。

参加された聴衆の方々の中には稲作専門家や、在ウガンダ日本国大使もおり、ムサ氏は専門家と情報交換できたことを、発表の後に教えてくれました。

発表前日、二人でレストランにて資料を眺めつつお互いの話す場所や内容について

下打ち合わせを行い、翌日の早朝にはリハーサルを行いましたが、難民と一つの発表を作り上げていくプロセスは、私にとって何事にも代えられない瞬間でした。

<写真は、中消費層を左に、高消費層を右のグラフにおいた難民の出身国別の割合 ※N=200 >

◆社会調査結果「所得、国籍毎の差違は機会である」

年次報告会で触れた、活動3「販売への取り組み」は難民への社会調査です。

調査内容は主に「食費」「食習慣」、そして「理想の食事スタイル」です。言い換えると、コメの想定購買者を知り、販売者としてのアプローチを探る為の質問です。

出身者の多い四国籍、総計200世帯の農家に対して行った結果の一部を紹介します。

1.食 費:・半数が低消費層、25%が中消費層にある。

・一方、高消費層(ウガンダ人の平均以上)は特定の国籍、地域に偏っている。

2.食習慣:・朝ご飯を食べない人が多いが、昼ご飯はほぼ全ての人が食べている。

・白とうもろこし(メイズ)、大豆は国籍を問わず鉄板メニューであるが、

質問1の食費が高い層になると、コメを食べるという回答が多い。

3.理想像:・コメと答えた世帯が大半である(質問・質問者による誘導に注意している)

この質問票だけでも、「誰に」「いつ」「いくらで」「どうやって」コメを売るかという販売戦略を練る上での色々な仮説が導けると思われますが、同時に、質問票の設計が甘く、想定しなかった答えもあり、正確な情報が得られないこともありました。

この質問を通じて気づいたことに、俯瞰してみるとウガンダのその他地域と比べて、難民居住地は多様な人間が集まっており、それ自体がマーケットとしての強みと考えられるかも知れません。

加えてコメは、既存の消費者=富裕層だけでなく、上に挙げたように潜在的な消費者が多いため、「国籍」×「売り方」の組合せ次第で、買い手がいくつも存在すると認識しています。

これは農産物のビジネス展開における定石かも知れませんが、難民居住地でもビジネスの

フレームワークに基づきつつ、支援機関と外部者(私もやムサ氏のような難民)を含めて

アイデアを出し、答えにあたるまで走りながら思い浮かんだアイデアを実行していくのが最善かと考えています。

今回は書ききれませんが、1年間の経験知として既存のシステム(UNHCRから受益者へのアプローチ)では解決できない、見つからない問題の解決策に到達する方法は、課題を

整理して全体像を捉えて、枠を取ってデザインする考え方ではないか、と考えます。