JICA海外協力隊の世界日記

まるタイ日記

タイガーマスク

5月15日から新学期がはじまり、ウィチェンマトゥ中高校に、新しい日本語の先生が来ました。先生のお名前はヌットです(写真右)。ヌット先生は、大学生のとき、日本語専攻でした。ジャニーズのアイドルが大好きで、日本のドラマや映画にも詳しいです。お宅には、DVDのコレクションがたくさんあるそうです。
ラウィワン先生(写真左)は、2001年からウィチェンマトゥ中高校で日本語を教えています。もともとは化学の教師で、研究のために熊本大学に留学したこともあります。トラン出身で、カニとめん類が好物です。毎日定時を過ぎても教室にのこって、授業準備をしています。まじめで、一生けんめいで、ときどき(本人曰く)おっちょこちょいで、かわいらしい先生です。
今までは、ラウィワン先生といっしょに授業に入り、主に文法説明などはラウィワン先生が、発音や作文、漢字などは日本人であるわたしが担当してきました。現在は、これにヌット先生も加わり、3人でティーム・ティーチング(複数の教師が協力して授業をおこなう指導方法のこと)をしています。生徒の人数も少ないですので、より細かな指導ができることと期待しています。

今年度は、1年生20名、2年生12名、3年生19名、総勢51名の高校生たちと日本語を勉強していきます。ヌット先生が赴任したおかげで、以前よりもコマ数を増やすことができ、今学期は授業24コマ+JLPT(日本語能力試験)対策4コマとなりました。先学期は、これに加えて、日本語クラブも週1コマありましたが、今年はなくなってしてしまいました。実は、ダンスクラブをつくりたい高校2年生の女の子が、顧問になってくれる先生を探しており、ラウィワン先生は彼女のために、日本語クラブをなくして、代わりにダンスクラブの顧問になってあげたのです。わたしも踊るのは好きなので、ダンスクラブには賛成ですが、日本語クラブに入るのを楽しみにしていた生徒もいましたので、少し可哀想です。そういった生徒たちには、個別に文化紹介をできたら、と思っています。

ところで、日本語クラスの新入生歓迎には、“不思議”な伝統があります。高校1年生が入学すると、高校2‐3年生がそれぞれ担当する新入生を決めて、お世話をします。“不思議”なのは、先輩がまるでタイガーマスクのように、匿名で後輩にお菓子やメッセージカードを残していくことです。後輩はわくわくしながら、自分宛てのプレゼントを受け取りますが、誰がそれをくれたのかは、わかりません。新学期がはじまってから、このプレゼント攻撃は毎日つづき、そのうちに、先輩がホワイトボードにメッセージを書いているところを後輩が目撃して、タイガーマスクが外れてしまったり、メッセージに秘められたヒントを少しずつ解いて、先輩の名前を当てたりする後輩も現れます。
おもしろいのは、タイの生徒が、新入生たちを、まるで長年待ち望んだ娘や息子のように、たいそうかわいがっていることです。まず、高校1年生の集合写真を指差しては、この子の名前は?とわたしに聞き、後輩の名前を入手。先日つくった、高校1年生の「日本語の勉強で がんばりたいこと」の鯉のぼりも、食い入るように見て、後輩たちの特徴をリサーチ。そして、身銭を切って、後輩にお菓子やジュースを購入。おかげで近ごろ、日本語の教室の冷蔵庫は、生徒が入れた炭酸飲料でいっぱいです。
これもタイの文化。先輩と後輩のきずなが築かれていく過程を観察するのは、なかなか楽しいものです。

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