JICA海外協力隊の世界日記

みんなあのねのセネガル便り

みんなあのね、「くじらぐも」

「四じかんめのことです。

一ねん二くみの子どもたちがたいそうをしていると、

空に、大きなくじらがあらわれました。

まっしろいくものくじらです。」

幼稚園からの帰り道に見た空に浮かぶ雲を見て、

「くじらぐも」を思い出した。

「くじらぐも」とは、

小学校の一年生の教科書にも載っている物語で、

ある日の一年二組の体育の時間に

白い大きなくじらのカタチをした雲が現れ、

その「くじらぐも」がクラスの子どもたちと先生を背中に乗せて、

空を飛びまわるという話である。

体育の時間という日常の中に、

突然「くじらぐも」が現れ非日常が始まるのは、

なんともわくわくする話である。

何気ない幼稚園生活の中にもわくわくを届けたいと思い、

教室にくじらを浮かべようと先生方に相談。

タタアミ(年中クラス担任の先生)が、

「クジラは子どもに身近でないから、ヤボイにしましょう」と言う。

ヤボイというのは、セネガルの食卓にもよく並ぶ魚で、

名前のように野暮ったいことはないのであるが、(いや、野暮ったい?)

私は「ヤボイかぁ…。」と思ってしまった。

特に根拠はないのだが、

「やっぱり、くじらぐもでなきゃなぁ」と思うので、
タタアミにもう一度くじらを提案。

ところが、逆にタタアミに

1時間ほどお茶を飲みながらヤボイにしようと説得され、

教室にヤボイを浮かべることに決まった。

ヤボイの材料は、段ボールと布の切れ端、そしてボンドである。

段ボールは近くの商店でもらい、

布は近所の仕立て屋さんや保護者からいただいた。

そして、ボンドのみ、

1キロ1000FCFA(日本円にして200円ほど)で購入。

さて、早速ヤボイをつくりましょう。

1キロのボンドは小さなバケツに入っている。
小さなバケツに手を入れ、ボンドを取るときの感触も

子どもたちは楽しんでいる様子で、いい笑顔。

セネガルで売られている生地は色鮮やかなものが多い。

そのため、まるで南国のキレイな海にいるような魚になっていく。

ヤボイとは大違いだ。

布がしわにならないよう伸ばしながら貼る作業は、

子どもたちにとって少し難しい作業であったが、

真剣な表情で一生懸命に取り組んでいた。

となりの子どもにちょっかいを出すといった

定番のやり取りもないほどの集中力で、

どんどん布を貼っていく。

タタアミも、自分のものを作り始める。

子どもに負けず、良い表情。

私は、先生方も活動を楽しむことは、

とても大切なことだと考えている。

一つ一つの作業を大人が楽しめなければ、

その楽しさを子どもに伝えることはできない。

それに、先生方が楽しみながら参加したほうが、雰囲気も良い。

あたたかい雰囲気の中での活動のほうが、

子どもたちものびのびと参加することができる。

雰囲気作りも大事。先生は時にエンターテイナーにもなる。

ヤボイをつくりながら、

「段ボールと布の切れ端なんて、ごみだったのにねぇ。」
と、タタアミ。

そう、ごみに見えるものでも、まだまだ使い道があったりするもの。

私は、セネガルに来てから

空き箱など工作の材料が集めにくいと感じている。

例えば、肉はパックに入って売られていないし、

食品関係は、包装されていないものがほとんどである。

お菓子はビニール袋のものが多い。

水もビニールの袋に入れられて売られているものがある。

こちらはトイレットペーパーを使う人が少なく、

芯で工作、なんていうことも難しい。

段ボール箱は、商店などで譲ってもらえるが、

ワインなど、お酒の段ボールは使わないでほしいという先生もいる。

子どもに「おうちから持っておいでー!」と言っても、

なかなか集まらないのだ。

なかなか手ごわいセネガルの空き箱事情である。

「今あるもので、工作をする。」

私自身も毎日が勉強であるし、

子どもの発想に知恵をもらうことも多い。

「なにができるかな」と考えているとわくわくする。

先生や子どもたちも同じ気持ちだとうれしいな。

さて、ヤボイの完成だ。

子どもたちもどこか誇らしげな笑顔。

子どもたちが作ったヤボイは、教室に吊るされた。

30匹を超えるヤボイが吊るされているのは、なんとも素敵。

先生にとっても、子どもにとっても、

そして、私にとっても大満足な活動になった。

タタアミはすっかり、段ボールと布の組み合わせにはまり、

子どもたちの送り迎えをする保護者に

布や段ボール、空き箱をお願いし、

なんと、「布と段ボールで何ができるか」という勉強会をしようと

提案してきた。

勉強会やら研修会、研究会なんていうと少し堅苦しいし、

こちらもネクタイを締めて、なんて緊張もしてしまうし、

私はウォロフ語(現地語)も仏語(公用語)もうまく話せないし、

と、タタアミにいろいろ言い訳をして、

活動先のシテニャフ幼稚園職員と、

隣接する小学校の先生から参加者を募り、

いっしょに布と段ボール箱を使った作品作りをすることにした。

開催時期は、未定。

それが、セネガル。

タタアミお気に入りの子どもたちが作ったヤボイたちは、

子どもたちの笑顔を見守るように、

風に吹かれながら教室の中を泳いでいる。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ