JICA海外協力隊の世界日記

みんなあのねのセネガル便り

みんなあのね、「小さな変化が」

「みんなあのね」と話しかけるように、

セネガルの暮らしや子どもたちの表情を伝えたいと思って

書き綴っているみんなあのねのセネガル便り。

去年から活動させていただいているシテニャフ幼稚園。

ご無沙汰している今年度の活動紹介、

保護者の方々に世界日記への写真掲載の確認が取れたため、

いきいきした子どもたち、

いきいきした先生方との日々をお伝えしていきたい。

2年目、シテニャフ幼稚園の変化がある。

小さな変化かもしれないけれど、前に進んでいる証だ。

まず、絵本の読み聞かせの時間ができたということ。

現地の人たちにとって本は身近な存在とは言えず、

読書の習慣もほとんどない。

本屋で売られている本はフランス語で書かれているものがほとんどで、

種類も少ない。

以前から絵本の読み聞かせをしたいとは考えていたのだけれど、

サンルイには市立図書館などもなく、あきらめていた。

しかし、

サンルイ市には他の地方都市よりも絵本があることに気が付いた。

サンルイ市は、海外のNGO団体などが多く存在し、

世界からたくさんの支援の手が差し伸べられている。

その中には、

孤児院やタリベ支援センターなどを運営している施設があり、

それらの施設には各国からの寄付によって絵本が届いている。

今まで、幼稚園と各施設のコミュニティはないに等しい状況だった。

そこで、孤児院でも定期的に活動している私がパイプ役となり、

幼稚園と各施設をつなげ、

施設の絵本を借りられるようにお願いしたのだ。

シテニャフ幼稚園の子どもたちは、絵本の時間を楽しみにしていて、

長く座っているのが苦手な子も、

絵本を食い入るようにして姿勢良く座っている。

変化の二つ目は、先生方の服装である。

セネガルの女性の一般的な服装は、運動に適しているとは言い難い。

ズボンではなくスカートで、タイトなスタイルだ。

そして、ヒールのある靴を合わせて履くのが一般的である。

去年は、先生方もそのような洋服を着て保育にあたっていた。

図工の時間に服が汚れたことをブツブツ言う先生もいたので、

私は、汚れてもいい服、動きやすい服を着たらどうかと提案してきた。

しかし、セネガル人女性はお洒落が大好きであるし、

イスラム教であることもあってズボンを履く人は少ない。

文化的な背景も考えられ、途中から服装を提案することはやめていた。

2年目になり、いつの間にか先生方がズボンで登園するようになり、

服が汚れるのを嫌がっていた先生はどこで買ったのか知らないけれど

白衣を着て保育にあたっている。

セネガルの一般的な服装が少数派になってきた最近では、

ズボンが当たり前になってきている。

朝早く来て、スカートからズボンに着替える先生もいる。

なぜ2年目になって変わってきたのか分からないけれど、

私にとってはとてもうれしい変化である。

三つ目は、園児への対応である。

年少クラスのムハメッド君という男の子は、お絵かきの時間、

すぐに飽きてしまって離席してしまうことがほとんどで、

クレヨンや色鉛筆を手にするときも色を選ぶ様子はなく、

一番手前にあるのを手にし、

少しペンを走らせるだけでもう十分という様子だった。

ところが、先日、

ボールペンで描いているとき、彼はまったく席を離れようとせず、

絵本の時間になっても嬉しそうにペンを握っていた。

絵本の読み聞かせを始めようとした先生が、

彼をみんなのところへ連れてこようとしたとき、

白衣の先生、タタ・バーチョが言ったのだ。

「彼はいま絵を描くことに夢中になっているから、

 満足するまで描かせましょう。」

結局ムハメッド君は、保護者の迎えの時間までペンを握っていた。

彼の作品は、たくさんの直線、曲線、点でできあがっていて、

一生懸命ペンを走らせ続けていたのがわかった。

彼の集中力はすごく、

白衣の先生、タタ・バーチョも途中から

「終わった?」「終わった?」と何度も聞くくらいだ。

先生が、子どもの気持ちに寄り添い、

いま彼になにが一番必要なことかを考えている場面を目にした私は

とてもうれしかった、

彼はお絵かきの楽しさを実感できたであろう。

子どもたちが何かに夢中になる力を伸ばすことは、とても大切だ。

「あんなに描いて疲れないのかしら、

 それにこれなにを描いたのよ?」

と、嬉しそうな白衣の先生タタ・バーチョの表情をみて

わたしもなんだか笑顔になってしまった。

これからムハメッド君がお絵かきのときに

どんな表情でどんな絵を描いていくのが、とても楽しみである。

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