JICA海外協力隊の世界日記

みんなあのねのセネガル便り

みんなあのね、「きれいでいることの難しさ」

途上国は不衛生な環境にあるところが多い。

赴任前の私はそう思っていたが、

実際に110カ月以上の生活を経た今、

私の任地サンルイは、地域によっては不衛生な環境であると思う。

特に、ゲンダール地区やタリベの住むダーラ(寄宿舎)の多い地域は、

不衛生な環境であると思われる。

清潔でいることは、様々な病気の感染の予防において重要で、

一人一人が清潔でいることと、地域が清潔であること、

ともに重要である。

子どもたちに衛生指導を行うこともあるが、

地域の衛生が保たれていないため、

不衛生によって問題が生じてしまう。

私の住むサンルイは、セネガル川の河口に位置している。

人々は、川と海のすぐそばで生活をしている。

タリベと呼ばれる子どもたちは、川の水で洗濯をし、水浴びをする。

地域の子どもたちが川沿いで遊ぶ姿もよく見かける。

地域の人々は、この川で漁をし、その魚は食卓に並ぶ。

しかし、子どもたちが遊び、食卓に並ぶ魚が泳ぐ川に、

地域の人々はごみを捨て、子どもも大人も排泄をしている。

ゲンダール地区にも下水管は通っているが、

下水管から汚水が漏れて、道路一面に水が溜まっていることもある。

建設途中の家に住む家族もおり、

マラリアの感染のリスクがあっても窓に網戸がない家もある。

アメーバや細菌による下痢や赤痢、

腸内の寄生虫、コレラなどの病気が広がりやすい。

例えば、

下痢をしていたり、寄生虫がいたりする人が川で排便をし、

その大便をヒツジやヤギなどの家畜が食べ、口や足を汚すとする。

子どもはその家畜の世話をしているうちに

大便の一部が子どもに移ることもある。

手を洗わずにご飯を食べるという子どもも多い。

またその子どもに触れた手で家族が食事の支度をし、

その食事を家族で食べると、

気がつけば、下痢をする人や寄生虫もちの人が

家族内に増えている。

こうして、様々な種類の感染が、いまのような経路で

一人の人から地域の人に移っていく。

もし、排泄をトイレでしていたら、

家畜に触れたあとに手を洗っていたら、

食事の支度をする際、こまめに手を洗っていたら、

このような感染は防げていたかもしれない。

子どもたちへの衛生指導は、

「排泄のあとや食事の前には手を洗おう」

「水浴びをして体をきれいに保とう」

「素足で歩かないようにしよう」

などと伝えたり、

「こまめに掃除をしよう」

「ござや毛布は日光に当てるようにしよう」

などと話している。

しかし、タリベと呼ばれる子どもたちへの

衛生指導は一筋縄にはいかない。

タリベの住む家は、電気や水道が通っていないところも多く、

タリベの生活用水は、川の水であることが多い。

さきほど書いた通り、きれいな川の水ではない。

手を洗う、水浴びをするという知識があっても、

行動に移すことが難しいのである。

一人一人が清潔でいることが難しく、

彼らの住む地域も清潔でないことがほとんどなのである。

十分な広さのない狭い家に住む彼らは、

病気のタリベも健康なタリベもいっしょに寝るし、

ござや毛布を共有している。

病気のタリベ、ただれや皮膚のかゆみ、

シラミのあるタリベは健康なタリベと離れたところで寝てもらいたいが、

そうはいかずに感染が広がっていく。

限られた枚数の洋服しか持たないタリベは

洗濯することも難しく、

とくに思春期を迎えた子どもはズボンの洗濯頻度が極端に落ちる

そのため、タリベの中では、皮膚疾患に悩むタリベも多い。

いまは、タリベたちに

公共の井戸の場所や無料診療所の場所を教えたり、

行動に移せないかもしれないけれど知識を伝えたりしている。

任期が残り1か月で、

期限付きのボランティアによる衛生指導の限界を感じているが、

タリベだけでなく、関わった人の頭の中に知識が残り、

行動に移せる状況になったときに移せるよう、

大事なことをひとつひとつ伝えて行けたらと思う。

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