JICA海外協力隊の世界日記

牛vaca日誌 in PARAGUAY

生乳の行方。

こんにちは。

サンペドロ・デル・パラナ市、家畜飼育隊員の弓削です。

今回は、搾乳された生乳がどのように販売されているのか、紹介したいと思います。

酪農家の収入源、といえばもちろん「生乳販売」です。

私たちが支援を行っている小規模酪農家さん達の多くは、

上の写真の様に搾乳後の搾りたての生乳をペットボトルに入れ、近所の人々に販売、という方法を取っています。

出荷額は1リットルあたり約3,000グアラニー(約60円)。

普通のパックに入った牛乳は5,000グアラニー(約100円)で販売されているので、それに比べると安価です。

とはいえ、生乳をそのまま売っている酪農家さんは実はそう多くはありません。

このような販売方法を取れる酪農家さんとは、たくさんの人々が暮らす市街地にアクセスできる場所に牧場を持っている酪農家さんのみなのです。

郊外に住む人々の中には自宅で搾乳牛を所有している人も多く、郊外では買い手がなかなかいないのが現状なのです。

では、このような酪農家はどのようにして収入を得ているのか、

それは、生乳より日持ちのする「チーズ」の販売です。

酪農家のチーズの作り方はいたってシンプル。

搾りたての生乳にレンネットと呼ばれる酵素を加えてしばらくすると、液体と凝固物に分かれます。液体はホエ―と呼ばれ豚のエサに。そして残る凝固物こそがチーズであり、枠に入れて形成、乾燥させて完成です。

(枠にいれて形成、乾燥しているところ)

こうしてできたチーズは一定量がたまると市街地に運ばれ、販売されます。

10リットルの生乳から約1Kgのチーズができ、この1Kgのチーズは15,000~20,000グアラニー(約300円~約400円)で個人や商店相手に販売されます。

チーズの味は淡泊で、日本人にとっては少し物足りない味かもしれませんが、パラグアイの食生活には欠かすことができません。チパ(もちもちしたチーズパンみたいなもの)、ソパ・パラグアージャ(チーズ、トウモロコシ粉、卵、豚油などを混ぜて焼いたもの)などパラグアイの伝統料理を初め、ご飯に一緒に入れて炊いたり、作り立てのまだ乾燥しきっていないチーズは生のまま、ハチミツやジャムを塗って食べたりと、その使い道は多岐にわたります。

牛乳は嫌いでもチーズは大好き、という人も。

買い手が付かないことはほとんどありません。

(販売される日まで冷蔵庫にて保存されているチーズ)

「加工した方が付加価値も付きそうだし、じゃあ全部チーズに加工して販売すれば?」

という意見もあるかもしれませんが、

実は、チーズに加工して販売することが収入増に繋がる、というわけではないのです。

1kgのチーズを作るのに必要な生乳の量は約10リットル。

そしてこの1kgのチーズで得る収入は15,000~20,000グアラニー(約300円~約400円)、

つまり10リットルの生乳からチーズを作って販売する場合の収入は

15,000~20,000グアラニー(約300円~約400円)です。

一方、

この10リットルを、生乳のまま販売(1リットルあたり3,000グアラニー、約60円で取引)したとすると、

3,000グアラニー×10リットル=30,000グアラニー(約600円)の収入となります。

つまり、加工して販売するよりも直接消費者に販売する方が高収入を得ることができるのです。

こうした事情もあり、郊外に住む酪農家さんの中には生乳のまま販売したい、という人もたくさんいるのですが、何十kmも先の市街地まで毎日生乳を運ぶこともできず、なかなか難しいのが現状です。

どのようにすれば生乳を販売することができるのか、集乳所を設置して乳製品工場に販売しよう!など、いろいろと案は挙がっているのですが、話は全く進んでいません。

いつかはすべての酪農家さんが望むような方法で生乳を販売できる日が来ればいいのですが・・・

それはまだまだ先の話になりそうです。

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