ルワンダかけはし通信~ブホロ ブホロ

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小郷 智子
(大阪府)

タイプ/職種
青年海外協力隊
コミュニティ開発
派遣国
アフリカ
ルワンダ ルワマガナ郡
一言メッセージ
かねてからの「途上国の現場を見たい」という思いから、銀行を辞めてルワンダの地へ。人々の温かさに触れながら、日々ルワンダと自分の可能性に挑戦しています!合言葉は「ブホロブホロ(=少しずつ少しずつ)」!

 

ルワンダのイノベーションセンター、k-Lab/Fab-Labについて

2018.11.22

人 生活

雨季らしく雨の日が続き、庭のイビゴーリ(トウモロコシ)がすくすくと育っています。水と土の力強さを感じています。

さて、今回は首都キガリの『k-Lab/Fab-Lab』があるイノベーションセンターについて紹介します!

■施設概要

「k-Lab」の存在はルワンダに来る前にネットで知りました。前職の職業柄イノベーション関連を調査する事も多く、ルワンダの地にあるイノベーションセンターの実態に非常に興味がありました。そこで、ルワンダに到着してからルワンダのICT担当の方に依頼をし、案内して頂きました。

この施設はTelecom Houseという建物の6階にあります(JICAルワンダ事務所からも歩いて行けます)。

同施設の設立にはなんとJICAの支援も入っており、資金面だけでなく設立後センターが有機的に機能する為の仕組み作りにも大きく貢献しているそうです。k-Labの看板にはJICAのロゴも入っており、k-LabのHPの設立者一覧にはJICAのICT専門家の方の名前も掲載されています。

【写真①:Telcom Houseの外観】

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【写真②:6階の入り口】

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◇k-Labとは

IT事業の起業を促進する若者向けのインキュベーション施設。日本でもこの手の類似の施設が増えているような話を少し前から耳にするようになったので、馴染みのある人もいるかと思います。

k-Labは政府の施設で、誰でも無料で自由に利用できます。k-Labの'k'はknowledgeの'k'です。

【写真③:k-Labの看板。右上にはJICAのロゴも】

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中はフリースペースになっていて、PCを持ったまま自由に移動しながらデスクワークが出来る環境です。広い会議スペースもある為、打ち合わせやワークショップ等も可能です。

若者がPCを囲みながら色々ディスカッションしたり、アプリケーションを開発したりして、ICT技術の向上からベンチャー起業を促進するのがねらいの施設です。

また、k-LabとFab-Labの間にカフェスペースもあり、コーヒーブレイクも楽しめます。

※k-Labサイト:

https://klab.rw/public/about

【写真④:上、中_k-Lab内部の様子。フリースペースでテラスにも席があり、自由に使える/下_カフェスペース

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◇Fab-Labとは

【写真⑤:Fab-Labの看板】

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k-Labの隣の部屋にあるFab-Labも同じく技術向上・活用促進を目指した施設です。'Fab'は'fabrication'の意味で、こちらは実際の「もの作り」をメインにしています。ここには3Dプリンターやレーザーカッター等の機材もあり、木工製品の試作品等が並んでいます。学んだ技術で実際に試作品を作ることが出来る場を提供し、もの作りやデザイン力、最先端技術等の競争力を高めていこう、というのがねらいのようです。

※Fab-Labサイト:

https://www.fablabs.io/labs/FabLabRwanda

【トップページ&写真⑥:Fab-Lab内部の様子】

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■ワークショップも開催

k-Labでは不定期にワークショップが開催されています。

10月に私が1人で再訪した際には、東アフリカ全体のICTをテーマにしたワークショップが開催されていました。プレゼンテーターがスライドを使ってシステム概要等を説明しており、参加者は大学生以上の若者の様でした。一応登録制のようで入り口に受付が設けられており、登録名簿のようなものも用意されていました(が、多分その場での参加も可能だった様子)。

この他、ハッカソン(短期間で集中的に開発作業をし、その間に製作したアプリ等の出来栄えを競うイベント)やセッション等様々なイベントが開催されているようです。

【写真⑦:ワークショップの様子】

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■政府も力を入れているICT

ルワンダは資源国ではなく、また内陸で交通の要所から外れていて産業には不利な地理的条件と考えられている為、地理的不利に左右されないICTを利用した産業の発展に力を入れた「ICT立国」を目指しています。これについては国家指針である『Vision2020』でも「ICTに注力し国力を高めていく」旨を明確に謳っています。

※Vision2020:

http://fortuneofafrica.com/rwanda/2014/04/30/rwanda-vision-2020/

そしてJICAもルワンダのICT振興を積極的に支援しています。例えばk-Lab等のハード面以外にもICT人材開発支援として「トゥンバ高等技術専門学校」(情報工学コース等を備える)の教育体制強化を支援しました。

※トゥンバ高等技術専門学校強化支援プロジェクト

https://www.jica.go.jp/project/rwanda/0613816/

しかしルワンダのICTレベルの実情としてはまだまだ立ち上がりの印象です。要因の一つは首都と地方のギャップがあまりにも大きい事が挙げられるかと思います。私の主観ですが、首都キガリでは教育によるICT立国を目指す風を感じられますが、一方地方ではまだまだ基本的なインフラ(水、電気、交通、医療)、食料事情を整える事が優先されるべき印象を受けます。「ICT立国」を目指す為に底上げするには、最先端技術の教育体制の発展と、一般市民への裾野の拡大との両方が望まれるかと思います。

とはいえ、国家一丸となって不利な状況から「ICT立国でルワンダはこれから発展を目指すんだ!」という気概は素晴らしいと思います。

■ルワンダ各地で増えつつある、起業イベントや支援プログラム

私がルワンダに来てから1年半の間で、各地で「起業プレゼンコンテスト」や「支援プロジェクト」等を目にする機会が格段に増えてきました。国全体で若者の起業を促進していこう、という雰囲気を感じます。

首都キガリだけではなく、私の任地のルワマガナ郡でも、女性、若者、ICT...等のテーマで色々なイベントを目にする機会が多くあります。

【写真⑧:ルワマガナ郡庁で開催されたコンテスト】

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5月に開催された『TAS2018』の最終日でも、10代の女性を対象にしたICTコンテスト『Ms.Geek』のセッションが開催されていました。

◇ICTイベント、TAS2018参加!(再掲)

http://world-diary.jica.go.jp/ogotomoko/activity/icttas2018.php

【写真⑨:ルワマガナ郡庁で開催された、若者の起業支援プロジェクトの会議(ファイナンス支援等)】

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■k-Lab/Fab-Labのメリット

私がこの施設を見学して感じたメリットは以下です。

・同じ志を持った若者が一堂に会し、ディスカッションし切磋琢磨出来る貴重な場である

・若者同士のネットワークが広がる

・誰でも無料で利用可能である

・内部はフリースペースである為、適宜好きな場所で活動出来る

・行き来が自由な為、仲間とディスカッションをしやすい雰囲気がある

・ワークショップ等のイベントも開催されている為、情報・知識の共有、向上の機会がある

・IT関連の企業等も同Telecom Houseのテナントとして入っているので、事業連携の可能性もある(かも)

【写真⑩:フリースペースで話し合いながら作業をする若者達】

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■課題

一方で、以下のような課題も感じます。

①情報発信の不十分さ

恐らくこの施設の存在は首都キガリ在住の一部の若者にしか知られていません。

地方の若者はこの施設の存在自体を知りませんでした(私の任地で関心のありそうな子にこの施設を紹介した所、後日訪問し「なんていい施設なんだ!知らなくて損をしていた!」という感想でした)

本来、無料で利用できる政府施設であり、起業を目指す人々にとって格好の試行環境なのであれば、もっと若者でごった返していてもいいくらいだと思っていたのですが、わりと整然としていてスペースにも余裕がありました。おそらく限られた同じメンバーがリピートして使っているだけの様子です。

首都と地方のアクセスの問題もあるかと思いますが、キガリの大学生だけでももっといるはずなので、情報発信が不足していると感じます。

これから広報にもっと力を入れる事で、まだまだ既存のインフラでも活動の活性度を高める事が出来ると思います。

②実業連携への難しさ

このk-Labから実際に起業したとしても、軌道に乗せるのは非常に難しいです。ルワンダの97.8%を占める中小企業の内、その多くが事業の継続に失敗しています。要因として考えられるのは、(1)基本的なビジネス知識の不十分さ(知識を得る機会がない)、(2)ただ作ってるだけでは...?(ルワンダ市場のニーズを把握しているのか?)、という事が考えられます。

しかし、ビジネス知識に関するワークショップ等も開催されているようなので、改善余地はあるかと思います。

③起業意欲がまだまだ希薄

そして、起業に関する情報が少ない為か、このような場に集まっている若者でもなかなか起業へ踏み切るのが難しいようです。前例が少ない為か失敗を極度に恐れている感じがあります。

確かに企業は安易には出来ませんが、私は任地で友人(=彼は相応の知識と経験と起業意欲あり)と起業について話す機会が何度かあり、「ルワンダの現状を踏まえるなら、もっと起業を始めてもいいのでは...」と思いました。

(新規事業が初めからスムーズに成功する事は滅多にない事だと思うのですが、「失敗するからいやだ」「企業に就職した方が楽だ」と考えている印象を受けます。但しルワンダの就職率は非常に低いという状況である為(就職口が非常に少ない)、「コネが無いから卒業後も就職出来ないんだ」という言い分をよく耳にします。そのようなルワンダの状況を鑑みるなら、「ただ誰かが就職口をあてがってくれるのを待つのではなく、自分のスキルを活かして起業した方がよほど可能性は高いのでは...」と思ったりします。少なくとも、日本よりは制度的にも雰囲気的にも起業はしやすい印象があります。

戦後の日本を振り返っても、当時は職が無く、多くの人が色々な分野で小さな起業をし、それが発展して今に至っているのではないかと思います。

とはいえ、ルワンダはまだまだ過渡期で変化の中にあり、日々の動きを追うのが非常に楽しいですし、今後の発展の仕方が興味深いです。

日本は非常に高度に発展していますが、一方で成熟し切っている感があり、限られたパイの中を競い合っている印象があるので、そういった意味ではルワンダはまだまだどの分野にも可能性があると思います。

■参考情報

この世界日記の原稿を書き上げ、事前確認の為にJICAルワンダ事務所に提出した所、事務所の方から下記情報を共有して貰いました。鮫島弘子さんという方のルワンダのICTに関する取材記事です。丁寧に取材されていてルワンダの置かれている環境やJICAの取り組み等も分かりやすく書かれており、ルワンダのICT環境を知るのに非常に参考になるかと思います。

私は鮫島さん程取材を重ねていませんし居住者としての見解ですが、意見の方向性が類似している部分もあり、「やはりルワンダを見ていると、感じるものに共通点があるものだな」と思いました。

◇鮫島弘子のアフリカビジネス入門2017 第3章-ルワンダICT立国編

https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NBO/16/jica1111/vol3_1/

次世代を担う若者の士気と技術を高める数少ない貴重な場として、k-Lab/Fab-Labがもっと活用されていけば...と思います。