JICA海外協力隊の世界日記

クズ・ザンポーラ♪ 幸せの国の農場便り♪

ブータン農業の父。

クズ・ザンポーラ♪

世界中の皆さん、こんにちは。南アジアの山岳国 ブータンの野菜栽培隊員の大橋です。

ブータンの農業のお話しを語る前にこの方の存在を語らないといけないと感じますので、今日は「ブータン農業の父」と称えられるダショー 西岡京治氏についてのお話しです。

西岡 京治氏は1933年に当時の日本統治時代の朝鮮の京城(現 ソウル)で生まれ、戦後に帰国後は大阪府立大学農学部を出て同大学院にて「照葉樹林文化論」で有名な中尾佐助氏による指導を受けました。

その後、大阪市立大学大学院の理学研究科の研究生になり、その際に現在は「創造性開発」の分野で有名な「KJ法」の生みの親である川喜田二郎氏による影響を受け、同氏が隊長となる「西北ネパール学術調査隊」に参加し、初めてこの地域を訪れる事になりました。

研究生を終えた後、一度は大阪府立園芸高校の教諭となりますが再度、上記の調査団に入り副隊長となりネパール周辺の農業環境の知見を得ることになりました。

そして、このブータンへは1964年に現在のJICA 国際協力機構の前進となる海外技術協力事業団のコロンボ・プランにより、農業指導者として訪れる事になりました。

つまり、既に今から50年以上も前にこのブータンの地で農業技術改善指導をされた日本人が居たと言う事になります。彼が赴任した当初は隣国のインド人による農業指導が有り、あまり良い対応をされませんでしたが、ブータンの人々と共に歩みながら、日本から導入した米や野菜、果実の栽培指導により、徐々にブータンの農業に与える影響力は大きくなりました。

上の写真は彼のこれまでのブータン農業に対しての貢献を紹介する為の展示室、通称「西岡ミュージアム」の前に掲げられたスタンドです。

この西岡ミュージアムは、彼が最初に開拓したボンデ農場(現在の私の活動任地)のかつての敷地内の一部に、今は農業機械センター(AMC)が存在し、その中の建物内に有ります。

彼は28年間に及ぶ農業指導の中で、私が所属する野菜や果実の種苗生産をする「国立種苗センター(NSC:National Seed Center)」以外に、先に挙げた田植機やパワーテーラー等の農機の品質・研究・開発を行う「農業機械センター(AMC:Agricultural Machine Center)」、収穫後の農産物の加工処理を行う「食品加工センター(PHC: Post Harvest Center)」の、主に3つの施設を私の活動するボンデ地区に設立しました。

さらに、これらの3つの組織は兄弟機関と呼ばれ、同時に現在はそれぞれの機関にもJICAボランティア(JV,SV)が派遣されており、今日でも日本とブータンの関係を保っている事になります。

また、私はこの「西岡ミュージアム」にはJICAボランティアとして来る以前に、アグリツーリズムとしてブータンを訪れた際にもこの地を訪れて、見学をさせて頂きました。今でも日本から多くの観光客がココを訪れ、ブータンの農業に日本人の影響力が有った事を学びます。

ちなみに、本施設は今年の1月にはアトランタオリンピックの女子マラソン金メダリストとなった高橋尚子さんや、6月には秋篠宮内親王眞子様も御歴訪されました。

また、この写真は「西岡チョルテン」と呼ばれる仏塔で、「チョルテン」とは現地の言葉で仏塔を表します。この仏塔は彼の死後、彼の功績を称えて建てられた仏塔になり、私の配属先であるNSCの真横に存在します。そして、「西岡ミュージアム」と同様にココも多くの観光客が訪れます。

西岡氏はこのパロでの農業技術指導の後、中南部のシェムガン地区における開発を行い、荒野の開墾から始まり、パロと同様に日本から野菜の品種導入をし、品種改良してこの国の農業開発に大きく貢献しました。彼の功績は農法の開発に留まらず、灌漑農道等のインフラ開発、食生活の改善、生活基盤の構築、その他の産業開発にまで影響がおよびました。

ここまで彼の活動がブータンで浸透したのは彼の活動方針が一方的な援助姿勢では無く、ブータンの現状に即したブータンの人々と共に活動する方針だったからだと言われてます。

そして、彼は1980年に時のブータン国王 ジグミ・シンゲ・ワンチュク4代目国王より「国の恩人」として、冒頭にも書いた民間人に贈られる最高の爵位である「ダショー」と呼ばれる称号を外国人として初めて授かり、同国では西岡氏の存在は今でも最も有名な日本人として彼の活動と共に知られております。

私は西岡京治氏の存在はブータン人にとって、「Japan」や「JICA」と言う言葉をより身近な存在にし、我々「日本人」に対してとても親身になって対応してくれる一番の理由に感じました。

その中で、かつて彼が文字通り汗水垂らして活動をされたボンデ農場で私は活動が出来る事を誇りに思い、今後さらにブータン農業の開発に貢献が出来たらと思い、これからの活動もまた頑張りたいと感じます。

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