JICA海外協力隊の世界日記

ジャマイカよ、めざせコミュニティ防災 2016-2018

飛べ、ジャマイカ号! ペットボトルロケットと環境・理科・未来

ジャマイカにおける青年海外協力隊派遣取極30周年を記念する行事の一環として、JICAボランティアの有志で作成したペットボトルロケットを打ち上げました。


一連の記念行事の最後ということで、失敗すれば記念行事全体の印象すら左右しかねない中、関係者のみなさまのご理解とご尽力により無事に記念行事のフ ィナーレを飾ることができました。


また、使用済みのペットボトルと、学校教育の理科の知識で何ができるのかを、記念行事に参加したジャマイカ政府の要人にインパクトのある形で伝えることができました。


日本とジャマイカの両国政府が青年海外協力隊の派遣取極を交わしたのは1987年のこと。


それから30年が経った今年、2017年の7月下旬に派遣取極30周年を記念する行事が執り行われました。


午前中はジャマイカの首相を表敬訪問、夜には在ジャマイカ日本大使公邸にてレセプションというスケジュール。


外務・外商大臣はじめ、ジャマイカ政府の要人も参加したレセプションが終わりに近づく頃、私たちペットボトルロケットチームは慌ただしく打ち上げの準備にとりかかっていました。


当日は、ブルー・マウンテン山脈から吹いてくる北東の弱い風も収まり、まさにロケット日和。


ほとんど新月に近い月齢のため、ロケットにつけられたライトスティックの蛍光色が暗い中に映えます。


BGMを流す役の私は、ロケットから少し離れたところから見守りながら、上手くいくことを祈っていました。

ロケット打ち上げプロジェクトの立ち上げは記念行事の1か月弱前。


1人の環境教育隊員の呼びかけでプロジェクトチームが結成されました。


発起人かつプロジェクトリーダーである前述の環境教育隊員の指揮の下、デザイン担当と演出担当の隊員がそれぞれ1名ずつ集まりました。


なお、特別な技能のない私は進捗管理・雑用担当を拝命しました。


7月上旬、キングストンの隊員連絡所に集まってペットボトルロケットを実際に作るべく工作をしたのですが、思った以上に時間がかかりました。


特に難しかったのが上の写真の安全装置の部分。


しっかりペットボトルを保持できなかったり、あるいは上手く安全装置を外すことができなかったりで、何度も修正を重ねました。


ロケットの試射ができる状態まで作り上げるといつの間にか午後10時。


隊員連絡所の敷地内で試射を行ったところ、予想以上に高く飛んでチーム一同大喜び。


ペットボトルロケットを片付けた後、隊員連絡所の食堂で思い思いに寛ぐ中、プロジェクトリーダー役の隊員が口にした言葉が印象的でした。


「理科教育がもっと浸透すればこの国は変わる。

ペットボトルロケットを飛ばせば学校で教えている理科で何ができるのかわかりやすく示せる。

使用済みのペットボトルロケットを使うことで環境教育にもなる。

そして何より、30周年記念行事に参加する予定のジャマイカ政府の要人に実際に見てもらえれば、きっと思いは伝わって、何かが変わり始める。」


普段は他の隊員が気持ちよく過ごせるよう気遣いに徹している彼女の熱い思いを聞いて、思わず姿勢を正したのを覚えています。


その後もプロジェクトリーダー役の隊員は、自身のペットボトルロケットにかける熱意を裏切らない大活躍を続けます。


JICAジャマイカ事務所との調整、デザイン担当・演出担当隊員との細部のイメージの擦りあわせ、当日配布用のロケット作成の手順書の監修など、細かいけれど重要な仕事が盛り沢山。


在ジャマイカ日本大使館さんの安全に対する懸念を払拭するために、JICAジャマイカ事務所の調整員さんと一緒に、大使公邸でロケットを試射してみせたのも彼女。


打ち上げ前日にキングストンで合流した時、いよいよ本番を残すのみだとほっとしたように言っていました。


「ちゃんと飛ぶといいんだけどねー」


不安でないわけがないにも関わらず、努めて明るく振る舞うプロジェクトリーダー役の隊員の言葉は、責任感とリーダーシップの両方を感じさせるものでした。

そうして迎えた本番の夜。


すべてのプログラムが終わり、残すところはペットボトルロケットの打ち上げのみ。


早速、英語に堪能なデザイン担当の隊員がペットボトルロケットの説明を始めます。


打ち合わせとは違う内容で、手短に終わらせようとしているのに気づき、私も予定よりも早くBGMを再生し始めました。


空気を充填しているのを良く見ようと近づくジャマイカ政府の外務・外商大臣にプロジェクトリーダー役の隊員がもう少しロケットから離れるように伝えるのが見えました。


程なくロケット発射へのカウントダウンが始まります。


安全装置を外すための紐が引かれ、一瞬の間の後にロケットは真上に飛びあがりました。


レセプションの参加者から歓声が上がります。


すぐに2本目のロケットに空気が充填され、安全装置解除用の紐が外務・外商大臣に手渡されました。


再びカウントダウンが始まり、外務・外商大臣がそれに合わせて紐を引きました。


さっきよりもより高く飛ぶロケットの行方を見送ると、外務・外商大臣が驚きと喜びの入り混じった表情をしながら拍手をしました。


そして、別のジャマイカ政府要人と笑顔でハイタッチ。


どうやら大きなインパクトを与えることができたようです。


こうして、1か月に及ぶペットボトルロケット打ち上げプロジェクトは、どうにか成功の裡に終わることができました。


プロジェクトリーダー役の隊員のところには、既にいくつかロケット打ち上げデモンストレーション実施の依頼が舞い込んでいるとのこと。


これをきっかけに環境に対する意識が向上し、理科に興味を持った子どもさんが増えれば、本当にジャマイカの国の未来が変わるかもしれません。


軽い気持ちで参加したプロジェクトでしたが、思いがけず、自分とは違うやり方でジャマイカの発展に貢献しようとする他の隊員の技と思いを目の当たりにすることができました。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ