JICA海外協力隊の世界日記

5Sでゴー 薬剤師マラウイ奮闘日記

6歳のシルビアが作るシマ

「首都で暮らしているだけではマラウイの生活は分からない!水も電気もない村の生活を体験しに私の村に行くわよ!」という誘いを受け!?、同僚の実家の村にお邪魔した。私が普段生活している首都リロングウェとは全く違う生活がそこにはあった。リロングウェは首都だけあって、多くの人が仕事を持ち現金の収入を得て生活している。しかし村の生活は、ほぼ自給自足で自分達の食べる食物や動物を育て生活している。お邪魔したお家は同僚のお母さんと妹さん、妹さんの6歳と1歳の娘さんの4人暮らし。周囲には同僚のおじさんやおばさんもいっぱい居て、常に誰かが顔を見せに来ている。

6歳のシルビアはプライマリースクールの1年生(日本でいえば小学校1年生)。毎日片道4時間!かけて学校に通っているそうだ(たぶん本当、車ででも40分かかった、そしてかなりの坂道、当然舗装などされていない)。私がお邪魔したのは学校のない土曜日と日曜日。彼女は家事のお手伝いや妹のお世話と働きっぱなし。たまに不服そうに唇をとがらせているが、それでも次から次に頼まれたことをこなしていく。畑の収穫に一緒に行き、野菜を取ったり運んだり。井戸へ水汲みに行きお水を運んだり。妹と遊んだり、食事の準備を手伝ったり。

日曜日のお昼に彼女が何か頼まれて台所用の建物で作業を始めたので見ていた。彼女はかまどの火をおこし、必要な食器を洗い、ウファと呼ばれるメイズ(トウモロコシ)粉をふるいにかけシマを作り始めた。シマはウファを練って作るマラウイの主食だ。薪の量で火力を調節し、私には触れない熱い鍋を上手に扱い、鍋を持ち上げる時にはトウモロコシの芯を2つ使い器用に移動させ。とっても楽しそうに誇らしそうにシマを作っていた。私は何とも言えない思いになった。かわいそうとか哀れとか大変そうとかそういうマイナスの感情ではない。上手く表現できないが、日本ではまだまだ育てられているだけの6歳の少女が、マラウイでは生きるための知恵を駆使して家族のために生活の一部を担っていることに感動したのだと思う。

日本とマラウイとどちらが幸せなのか分からないが、彼女の生活が不幸だとも思えない。派遣前の訓練期間にも同じような議題の話し合いをしたことがある。発展途上国の生活が不幸とは思わないが、子供にはいろいろな選択肢が与えられその中から自分で選べるのが理想ではないかという意見が多かった。彼女のおばである私の同僚はこの村の生活から抜け出し、現在職を持って働き収入を得ている。村に行くまで知らなかったが、同僚は必至に勉強し優秀な成績を維持し支援者を獲得して大学まで進んだそうで、村の中では特別な存在であった。6歳のシルビアには村で生きる母親と都会に出て行ったおばの両方がそばにいる。多くの村の子供が村で生活する人だけしか身近にいないことを考えると、シルビアは選択肢がいくつか見える分、恵まれているのかもしれない。

ちなみに同僚にも同じくらいの子供がいるが、同僚の子供はシマを作ったり火を扱ったりはまだしないそうだ。また公立のプライマリースクールは少し遠いので(といっても1時間はかからない!?)学費のかかる有料の私立のプライマリースクールに通っている。マラウイでも都会と田舎での格差が大きくなりつつあることを実感する。日々貧富の差を感じることはあるが、子供の格差を感じるのは本当に悲しい。

シルビアは粉だらけ、灰だらけになりながらもシマを完成させ、ごちそうしてくれた。大人が作るシマは、2、3個に分けて盛られるが、シルビアが作ったシマは少し柔らかく大きな1つの塊になっていた。それでも私はとても美味しくいただいた。そして何より誇らしげな彼女の様子に幸せな気分にさせてもらった。

6歳のシルビアが家族のためにシマを作る。私は不幸だとは思わない。ただ、シルビアを含めて火が身近にあるマラウイの子供たちの火傷が多いことも事実である。安全面が少しずつ向上するための進歩は必要だと感じた。でも常に家族に囲まれて、家族と一緒に笑っている彼女はとても幸せそうだった。

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