JICA海外協力隊の世界日記

5Sでゴー 薬剤師マラウイ奮闘日記

マラウイの「お見舞い」

先日、同僚に「学生時代の友達が病棟に入院しているから会いに行こう」と誘われた。見知らぬ外国人の私が一緒に行っても大丈夫か不安だったが、同僚について行った。お友達はすでに2週間以上入院しているそうだが、だいぶ改善してきているようだった。ちなみに日本と違い、病室には患者名を示す名札は掲示されていないし、ナースステーションにも患者の一覧表のようなものはない。事前に病室の情報があれば良いが分からない場合は大変である。病室が分からず看護師に尋ねるとだいたいの場合、看護師は大声で患者名を呼ぶ。患者さんもしくは付き添い者がそれを聞いて返事をすることで患者の所在が判明するのである。もし返事がなければ、患者さんは居ないとみなされる!? 病棟が変わっていようものなら、探すのは一苦労でかなりの時間を要することもしばしばである。幸いその日は同僚のお友達にすんなり会うことができた。そして同僚は簡単に挨拶をしてあっさり別れて来た。そういうものなのかなと思った。

翌日出勤すると同僚は大きな荷物を持っており、荷物からは水筒が見える。9時前に、荷物を届けに行くから一緒に行こうとまた誘われた。(就業時間は7時半らしいが、通常8時半頃からぼちぼち働き始める人が多く、同僚はいつも9時頃出勤してくる…) 荷物の中身はお茶の水筒と、ジャガイモや玉ねぎで作ったスープで、お友達に差し入れするために作ってきたとのこと。持ってみるとかなり重たい。同僚はミニバス(乗客ぎゅう詰めのワゴン車)を2つ乗り継いで出勤してくるし、自宅には電気がないと聞いているので作るのも持ってくるのも大変だったろうと思う。そしていざ病室に行くと、昨日居たベッドにお友達の姿が見えない、すでにどこかに移動している様子。同室の患者さんもどこに行ったか知らないというし、ナースステーションにいた職員も知らないという。しばらく探したがお友達は見つからず私たちは職場の薬局に戻ってきた。同僚はとてもがっかりしている。薬局の他の職員は彼女が持ち帰った水筒やお鍋に気が付き、笑顔で「友達はきっと退院したんだよ、みんなで食べようよ」と同僚を誘う。同僚は退院できる状態ではないと断り、仕事を始めた。普段は楽しそうに働きしゃべり続ける同僚が何も言わずに黙々と働いている。1時間程経った頃、同僚に聞かれた。「ジャガイモのスープを食べたことある?みんなを誘って食べようか…」。正直、同僚の作ったお茶やスープがどんなものか興味津々でぜひ味見をしたいと思ったが、あまりにがっかりした様子の同僚をみて私も悲しくなり言った。「1回で諦めるのはやめてもう1度探しに行ってみよう!それでダメなら味見させてね。」正直、お友達が見つかると信じていたわけではない。あまりにがっかりした様子の同僚をそのままにしておけなかっただけだ。仕事はちょっと後回しにして(こういう時に仕事時間でも、他の職員は何も言わず笑顔で送りだしてくれるのはマラウイの良い所ではある)10時前に2人でもう一度病棟へ。会えないかもしれないので今度は荷物は持たずに行く。同僚はかなり弱気になっている。2回目は出勤している看護師の数も増えており、転床先を知っているスタッフが居て新しい病室が判明し、同僚はお友達に会うことができた。彼女はとてもうれしそうに私に言った。「私は話をしているから荷物を取ってきて~」。なぜ私が??と思わないこともなかったが(笑)、お友達に会えてとてもうれしそうな様子をみて、私は喜んで荷物を取りに戻った。結局私は味見できなかったが、もし私が体調を崩したら彼女はきっと私のためにお茶とスープを作ってくれるだろう。

日本では病室は個人情報だからと教えないことも多い。人のお見舞いに行くのも行っても良いか気を遣う。食べ物の持ち込みは禁止されている状況も少なくない。でもマラウイはちょっと違う。まず病室には患者さんよりも付き添っている家族の数が多い。ちょっとしたことでも知り合いが入院したらみんなが駆けつける。病院の敷地内には多くの人々が集っている。食事をしたり洗濯したり生活しているような場面も多い。(1枚目の写真は病院の中庭のような場所、主に小児病棟に入院している患者さんの家族が集まっている) 同僚はお友達のためにお茶とスープを作り持ってきた。手間や材料費は決して少ない負担ではなかったはずである。それでもお見舞いを持ってきた彼女、会えなくてがっかりし落ち込んでいた彼女、最終的にお見舞いを渡せて喜んでいた彼女の温かさが、隣にいる私も幸せな気分にしてくれた。味見の誘惑に負けず、諦めずにもう1度探しに行こうと提案して本当に良かったと思った。現地語での同僚とお友達の会話は全然分からなかったが、楽しそうな様子をそばで見ているだけで私も楽しい時間を過ごすことができた。

その後もたびたび私は同僚について家族だったり友達だったり、誰かしらのお見舞いに行っている。先週は薬局のスタッフがマラリアで入院した。これはかなりの大イベントとなった!? まずお見舞い金の集金。これが私には大問題! 日本ではそれなりに決まっている相場というものが全くないのだ。「気持ちだから、ふところ具合で払える分を出し合えば、いくらでも良いんだよ」と言い、各自が払う金額は地位や年齢に関係なくバラバラで、私にとってはいくら払えば良いか非常に難しい。そして総出で病室へ。みんなで少し話をしてお祈りをした(マラウイは多くがキリスト教である)。私なら具合の悪い時に同僚たちに会いたいか微妙なところだが、マラリアの彼は調子が悪そうにも関わらず笑顔でみんなを受け入れていた。ちゃんと会って様子を確認し、お見舞いを伝える。また1つマラウイ人の素敵な所を発見した。

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