JICA海外協力隊の世界日記

ミクロネシア日記「ことこと」

スーパーのトレーから広がる光景

ひもで足を結ばれているのは、とことこ歩くにわとりです。

ファウンドレイジングデーという校内のイベントで、ある子どもがお家から持ってきたにわとりでした。ポンペイでは、だいたいの家庭で、にわとりを飼っています。早朝、にわとりに起こされることも少なくありません。

けれども、今日は、のんびりした休日の朝。にわとりが鳴くのも気にせずに、いつもより朝ねぼうしました。朝食をとりに台所へ行き、冷蔵庫を開けると、そこには……、

にわとりがいました。

何度見ても、やっぱり心臓がいつもぎゅっとつかまれたみたいにいつもびっくりしてしまう、命つきた動物のそのまんまの姿。

日本人からしてみれば、とってもワイルドに思えるポンペイの食文化。

こちらでは、にわとりにかぎらず、ぶたや犬(こちらでは犬もたまに食べる)など、ありとあらゆる食べ物を、自分たちで解体しています。ですので、キッチンのそばに大きなぶたの頭を乗せたたらいが置いてあったり、ホストファミリーがにわとりの羽をむしりとっていたりなど、これまで、ぎょっとした光景が数知れず。

いちいちぎゃーぎゃーさわいでいるわたしを、「おいしいのに。」とホストファミリーはいつも笑って見ています。そして、

「犬を食べる文化がないなら、それにおどろくのはわかるけど、日本人は、チキンやぶたは食べないのかい?」

と聞かれました。

確かに。言われてみれば、チキンもぶたも、おいしいおいしいと言って今まで日本にいたときからたくさん食べてきました。

それなのに、わたしは、食用のために殺されたチキンも、ぶたも、その命の丸ごとの姿を見たことがありませんでした。

今まで、たったの一度も。

そう考えると、何だか自分の方が奇妙な気さえしてきました。

写真は、おそう式のお供え物のために、殺される直前のぶたたちです。

手足をなわでしばられ、横たわっています。

ただならぬふんい気を察しているのでしょうか。一頭が鳴くと、それにつられて他のぶたも、いっせいに鳴き始めます。

かなしいその声が、しばらく耳からはなれませんでした。

急所をつかれ、息絶えたぶたの体を、男たちが大きなナイフで切りさいていきます。

当たり前のように、ぶたの手足をおさえたり、内臓を取り出したりして手伝っている、小さな子どもたち。辺りは血だらけ、子どもたちの手も、息絶えたぶたの真っ赤な血で染められています。

それが、ポンペイの日常。ちょっぴりこわかったけれど、その光景には、いただく大切な命の姿がぎゅっとつまっていました。

日本のスーパーで、わたしたちが目にするきれいに整えられたお肉にも、

そこには、同じように息絶えた生き物の姿があったことを、命が宿っていたことを、忘れないでいようと思いました。

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