JICA海外協力隊の世界日記

マラウィ・デイズ

珍 客

家の中では様々な生き物に遭遇する。
ヤモリ、トカゲ、羽アリ、蛾、クモ、蚊、ゴキブリ…
さすがにもう慣れた。
ヤモリなんかはよく見ると
実はとても愛らしい目をしている。
思わずじっくり観察してしまうくらいだ。
ときどき家の中で飛び回る珍客はコウモリ。
漢字で書くと「蝙蝠」。虫偏だが哺乳類である。
何度屋内で遭遇してもコウモリには慣れない。
見た目の不気味さもあるが、
噛まれたときの感染症が何より恐ろしい。
半時間ほど格闘しただろうか。
その小さな獣は疲れて床にうずくまった。
私は軍手を2重にして、さらにその上からビニール袋で覆うという、
意味があるのかないのかわからない抵抗を試み、
その黒い獣をつかむ。
手を噛まれるのだけは避けたい。
強く力を入れすぎて刺激しないように。
その細い首の両側を挟むようにそっと。
そして小走りで外に出て、思いっきり遠くの空へ投げる。
ひとつの戦いが終わった。
でも正直、もう勘弁…。
ある夜、また空飛ぶ獣が室内に入ってきた。
またか…。あー…。
しぶしぶホウキや軍手などの小道具を準備し、
戦闘態勢に入ろうとしていたときだった。
これ以上ないというタイミングで
ウォッチマン(警備員)が出勤してきた。
私は例の獣を指差し外へ追い出すようにお願いする。
すると彼は、慣れた様子で床にうずくまる不気味な背中を踏んづけた。
しかも素足で。
そしてギーギーと鳴きながら羽をバタつかせている胴体を、
今度は素手でつかみ窓の外へポイ!
なんと素早い手馴れた動きなんだろう。
あんなに長く悪魔と格闘してた自分はなんだったのだろうか。

職場の人に相談すると、すぐに家に来てくれた。
壁と屋根の間にある隙間があやしいらしい。
JICA事務所に連絡すると、現地のセメント業者を手配してくれた。
初回、作業員は現状把握と見積もりをし、
翌週に隙間を塞ぐ作業と駆除スプレーをして完了した。
2回とも、なんと約束時間より1時間も早く来てくれた。
時間に遅れるのが当たり前のマラウイでは驚くべきことだ。
「ちゃんと仕事してるところ写真に撮ってくれよ」
と張り切る二人組。
手際よく次々と隙間を塞いでいく。
それから2週間。
家の中でコウモリに遭遇することはなくなった。
たとえ、またどこかから侵入してきてももう大丈夫。
我がウォッチマンが踏んづけてしまうだろうから。
素足で。

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