JICA海外協力隊の世界日記

吉田考が見せたい中国

新学期が始まって

9月から新学期が始まって、新一年生が入学してきた。

私の配属されている財貿学校は中国の中ではクラブ活動がとても活発な学校である。

私は日本語倶楽部の担任を務めていて、クラブ活動の新入生勧誘活動の為、駆り出されることになった。

食堂で食事をして、職員室に戻ってから会場に向かおうとしていたら、学生からQQ電話がかかってきた。

(中国ではQQWechatというSNSを使う人が非常に多い。携帯電話を持っていてこれらを使っていない人はほぼいないのでとても便利。)

「先生、まだですか」

電話を受けながら、駆け足で会場に向かった。

会場はクラブ活動の勧誘をする学生と勧誘される学生たちで、賑わっていた。

クラブの子が「先生、やっときた」と言いながら出迎えてくれた。

彼らは食事もとらず勧誘活動を行っていたそうだ。

コスプレをして新入生を呼び込む学生もいるが、それは他の部活の学生も同様に行っている。

地味な私が勧誘の席に座って、通り過ぎる学生に「こんにちは」とだけ挨拶すれば、皆驚いて日本人かどうか確認してくる。

アニメや漫画などのサブカルチャーの影響で、日本や日本語にセンサーが働く中国人はとても多いが、外国人と交流する機会は本当に稀で、まさか自分が入学した学校に日本人が教師をしているなんて予想していなかったという反応なのだ。

物見珍しさで、入部希望の記名がどんどん集まってしまった。

しかし、恐らくほとんどの学生は途中で辞めていってしまうだろう。

ともあれ、大漁といった感じで勧誘した学生たちは満足しているようだった。

それから、国慶節という中国の連休があり、クラブ活動は連休が明けてから行われた。

第1回目の活動が行われる前、クラブの部長が平仮名・片仮名の50音を平日2週間程度かけてコツコツ教えてくれていた。

活動前、部長から聞いたのだが、それでも50音の習熟度は低いそうだ。

そこで、第1回目の活動は50音を言いながら体を動かさせるために「ケンケンパ」を行ってみた。

ごくごく単純だが、片足で「ケン」両足で「パ」と言わなくてはいけないだが、言う言葉を変化させれば座学とは違う訓練になるし、学生による自発的な活動になると思ったからだ。

しかし「ケンケンパ」を高校生にやらせるという活動は、果たして彼らにとってどうなのだろうか、という不安を抱えながら、学生たちに説明した。

中国の学生は、授業となるとどれも受け身であるので、こういったアクティブワークに戸惑った。

まず学生たちは、「机を動かしてスペースを作るよ」といっても、なかなか動こうとしてくれない。

部長も一緒に手伝ってくれて、何とか教室の中心にスペースを空けた。

私は思い切って、床にチョークで丸を描いていった。

その行為自体、学生たちにとって大胆なこともあって、どっと声が沸き上がった。

描き上げて軽快に飛びながら「ケンケンパ」と言って学生たちに見せ、学生たちにもやってみるように言うと、いとも簡単にやってのけて得意げになった。

23人の学生が飛んだあと、部長が提案した。

「先生、わたしも描いていいですか」

部長に任せてみると、丸の間隔を極端に広げる指示が追加された。

私はその発想に感心させられた。

難易度が上がったケンケンパに挑戦しようとする学生がどんどん白熱していった。

部長の案の他に、足を着くときの体の向きを指定する指示や、床に手を着けなくてはいけないという指示が追加された。

学生たちの熱に便乗して、私も『ケン』『パ』の代わりに『ポ』『ポン』や『チョン』『チ』、『ヒ』『フ』など様々な組み合わせで飛ばせてみた。

盛り上がっている中で、学生から私に指名が入った。

「先生もやってみて」

私も学生たちの熱に押されて、新ケンケンパをやってみることにした。

こうも難しいステップを飛びながら50音を発するとなかなか難しい。

更に手を着く指示なんて、日本人には思いもよらないものだと思う。

興奮して、ちょっと頑張りすぎて腰を痛めてしまった。

活動が終わり、

「ケンケンパっておもしろいですね」

と学生が言ってくれた。

私もまさか、中国で日本の遊びが変化して親しまれることになるとは予想していなかったので、とても感動した。

みんなのケンケンパ:

https://www.bilibili.com/video/av16328791/


後日病院に腰を見てもらいに行ったのだが、心配してくれた先生方が駆けつけてくれて宴会になってしまった。

屈託ない笑顔の先生たち、中国人ってみんないつも笑顔だ。

笑顔のエネルギーが本当に大きくて、細かいことはどうでもよい気分にさせられてばかりである。

実は私たちは、どうでもいいことばかりに気を張っていることが多いのかもしれない。

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