2026/09/09 Wed
活動
「学びたい」を聞いてみたら

名 前:藤咲 聡
隊 次:2025年2次隊
職 種:PCインストラクター
配属先:リロングウェ職業訓練センター
出身地:茨城県
ある日、いつものようにシラバスに沿って授業を進めていると、学生たちの様子が少し気になった。
「彼らは、どんな学びを求めてこの学校に進学してきたのだろう?」
私は現在、マラウイの首都リロングウェにある職業訓練校で、ICTコースを担当している。
授業では、決められたシラバスに沿って、コンピューターの基礎理論やソフトウェアの使い方などを教えている。これらはICTを学ぶ上で必要な基礎であり、学生たちにとっても大切な内容である。
一方で、授業中にどこか物足りなさそうにしている学生の姿も見られた。セカンダリースクールを卒業(日本の高校卒業に相当)した学生たちが、この学校に進学してきている。彼らは、ここで何を学び、将来どのようなことに役立てたいと思っているのだろう。そこで、授業の合間などの空いた時間を利用して、学生一人ひとりに話を聞いてみた。
「このICTコースで、何を学びたい?」
「それを将来、どんなことに役立てたい?」
すると、私がそれまで想像していなかった、学生たちの将来に対する思いが見えてきた。
- 「自分でビジネスを始めたい」
学生たちの話を聞いていて特に印象に残ったのは、「将来、自分でビジネスを始めたい」と考えている学生が非常に多かったことだ。もちろん、全員が起業を考えているわけではない。しかし、全体の半数以上の学生が何らかの形で起業を意識していた。そして、ICTの中でも、データアナリシスやデジタルデザインなど、将来の仕事やビジネスに直接つながりそうな分野に興味を持っている学生が多かった。一方で、興味のある分野はあるものの、「将来、どんなことに役立てたいか」については、まだ具体的なイメージを持てていない学生も多かった。
私はそれまで、マラウイでは若者にとって十分な働き口がないという話を聞いていた。しかし、それはあくまで周囲から聞いた「マラウイの現状」だった。学生たち自身の話を聞いて初めて、それが彼らの将来に対する意識にも直接つながっていることを実感した。
日本で学生だった頃の自分を振り返ってみる。
私は学生の頃、自分の将来について考える際、前提として会社などの組織があり、そこで何をするかということを考えていた。もちろん、起業を念頭に将来を考えている人もいるだろう。しかし、「就職先がなければ、自分で仕事をつくる」という発想を、学生の頃からこれほど身近な選択肢として、どれだけの人が考えているだろうか。マラウイの学生たちの話を聞きながら、日本との違いを強く感じた。
- 「本当に必要とされているのだろうか」
学生たちの話を聞いているうちに、私は一つのアイデアを思いついた。
「それなら、普段のICTの授業とは別に、将来のビジネスに役立つ知識やスキルを学べるワークショップをやってみよう。」
そこで、学生たちが実際のビジネスを考える際に役立ちそうな内容を組み合わせ、ワークショップを企画することにした。例えば、SWOT分析や3C分析、4Pといった基本的なビジネスフレームワーク、Excelを使った収支計算や損益分析、Webページの作り方、フライヤーやバナーの作成などである。単に私が「これは役に立つだろう」と考えたものだけを教えるのではなく、起業する際に求められるスキルと、学生たちから聞いた「学びたいこと」の両方を意識して内容を組み立てた。
しかし、ワークショップを始める前に、一つ心配なことがあった。
「本当に学生たちはこれを望んでいるのだろうか。」
「自分が勝手に必要だと思い込んで、独りよがりな活動になっていないだろうか。」
そんな不安があった。
そして、学生たちにワークショップの開催をアナウンスした。
その瞬間、教室から拍手と歓声が上がった。
学生たちの反応が、私を後押ししてくれた。
- 真剣な表情に変わっていく学生たち
ワークショップへの参加は任意としたが、毎回ほぼすべての学生が参加してくれた。グループワークでは、それぞれが考えたビジネスについて、商品やサービス、ターゲット、競合、価格設定などについて意見を出し合った。最初は戸惑う場面もあったが、回を重ねるにつれて学生同士が積極的に意見を出し合い、時には白熱した議論になることもあった。発表する学生の話を聞きながら、他の学生が熱心に質問している姿もあった。普段の授業ではあまり見たことのない、真剣な表情を見せる学生もいた。
私は、その様子を見ながら、学生たちが「何かを覚える」だけではなく、「自分の将来のために学ぶ」という意識を持ち始めているように感じた。
- 学生たちから学んだこと
私は以前、企業で仕事をしており、教育に携わった経験はない。人生で初めて教師という立場になり、同僚の教師の姿を見よう見まねで教壇に立っていた。今回の経験を通して、私は「教える」ということについて改めて考えるようになった。
教師として、シラバスに沿って授業を進めることはもちろん大切である。卒業時の試験に合格し、認定を受けることが本コースのゴールである。しかし、それだけでは学生が本当に必要としている学びに十分に応えられないこともある。学生たちは何を学びたいのか。何に興味を持っているのか。そして、学んだことを将来どのように役立てるのか。まずは学生の声に耳を傾け、彼らと同じ目線に立って考えてみる。そうすることで初めて見えてくるものがあるのだと、今回の経験を通して改めて感じた。
そして、もう一つ強く感じたことがある。
それは、マラウイの学生たちが自分自身の将来について真剣に考えているということだ。仕事を得ること、自分で仕事をつくること。学生たちにとって「学ぶ」ということは、単に学校を卒業し、認定を受けるためだけのものではないのかもしれない。自分の将来の生活を切り開くための、より切実な意味を持っているように感じた。
私はこれからも、「教えるべきこと」を教えるだけではなく、学生たちが「学びたいこと」に耳を傾けていきたい。
そして、彼らがそれぞれの未来を思い描き、その未来に一歩近づくための学びを、少しでも後押しできればと思っている。
グループワークの様子

ワークの内容を確認しあう学生たち

プレゼンテーションの様子1

プレゼンテーションの様子2

SHARE





