JICA海外協力隊の世界日記

マラウイ便り

「1000クワチャの問い」

名前:木村直

隊次:2024年度1次隊

職種:障害児・者支援

配属先:リロングウェ教員養成大学付属小学校

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ミニバスに乗っていると、大きな荷物を持った年配の男性が声をかけてきた。

市街地まで行く交通費が足りず、1000クワチャ(約80円ほど)がほしいというお願いだった。

正直、よくある場面だ。

外国人である自分が渡すことで、良くない前例になるかもしれない。

ここで一人に渡したら、誰にでもあげなければならなくなるかもしれない。

そんな考えが、いつものように頭を巡った。

そう思って、私は一度、断った。

男性は少し残念そうな表情をして、男性は静かにバスを離れ歩いていった。

目的地までは、決して近くない距離だったが

彼は何も言わず、歩き始めた。

いつもなら、断ったことを迷わなかったと思う。

でもその日は、なぜか落ち着かなかった。

走り出したバスの中で、私はずっとその後ろ姿を考えていた。

私の頭の中はずっと忙しかった。

なぜそう感じていたのか、今も分からない。

「誰にでも言っているのかもしれない。」

「ここで渡すのは正しいのか。」

「いつもの自分なら、きっとそのままにしていた。」

「なぜ声をかけてきたのが私だったのか。」

「本当に困っていたのか。」

私の行動が正解かどうかを考える余裕もなく、ただ時間だけが長く感じられた。

答えは出ないまま、もう一度バスを止めて

「歩いてるあのおじさんを乗せて」とドライバーに伝え

私は彼の運賃をミニバスのコンダクターに渡した。

助けてあげた、という気持ちは不思議と湧かなかった。

良かったとも正解だったとも、今でもはっきりとはわからない。

それでもあの数分間、私は久しぶりに

「俯瞰する自分」ではなく、

「当事者」として、すごくドキドキした。

頭で整理する前に、感情が動いて、迷って、揺れて、自分に問い続けていた。

マラウイでの生活は、こうした小さな出来事を通して、

「自分が何を大切にしたいのか」

「自分はどうありたいのか」

静かに差し出して、問い直す時間を与えてくれる。

答えは出なくてもいいと思った。

ただ、その問いを持ち続けて生きていきたいと思った。

立ち止まって考えたあの時間そのものが、今の私にとって大切な経験だったように思う。

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