JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_85 〜Workshop〜

 派遣国によっては、海外協力隊が「日本祭り」のようなイベントを自主開催することがあります。現地のみなさんに日本文化を体験してもらう絶好の機会となります。「異文化社会における相互理解の深化と共生」も、協力隊の重要なミッションの一つなのです。私たちセントルシア隊員も、昨年10月末のJOCV派遣30周年の記念式典に合わせて、日本文化を紹介する機会を設けました。演舞や演武の鑑賞をはじめ、実体験として色紙を折る、毛筆で字を書く、伝承遊びを楽しむ、浴衣を試着する、教科書の違いに触れるなど、来場者は思い思いに日本文化を味わってくれました。

 今回は、現地在住の協力隊OV(経験者)のご紹介によって、あるセカンダリー・スクールの生徒希望者を対象に、日本語と日本文化のワーク・ショップ(体験教室)を開講するご縁に恵まれました。1回あたり80分の4回シリーズを毎週金曜日に実施しましたので、短期集中型のワークショップです。日本祭りとは異なり、学校で実施しますので、ハンズ・オンの体験や、マインズ・オンの体験が、子ども達の成長に良い影響を及ぼすことを願いながら、仲間の協力隊員とともに、準備を進めました。実際に、ワークショップに参加する理由を尋ねてみると、「日本へのあこがれ」を挙げる生徒がいれば、「新しいことを体験するのが好き」という積極的な生徒もいます。また、一方で「先生に推薦された」という生徒もいましたので、日本への興味を新たに開拓することのできる好機でもあったのです。

 どの回も、およそ日本語教室40分、日本文化体験40分という時間配分で進めました。日本語教室の方は、初回、まず0から9までの数字を扱いました。順番に数字をカウントしていくゲームや、電話番号を伝言リレーしていくゲーム、提示された数字の人数のグループをつくるゲームに取り組みながら、日本語の数字の発音を楽しみました。二回目は、日本語のあいさつです。コミュニティー・スクールと位置づけられる学校ですので、「感謝の気持ちをもって、人々にあいさつをすることで、コミュニティーの雰囲気を作り出すことができる。」というメッセージを乗せて、習得を進めました。例えば、「『こんにちは』には『ありがとう』の気持ちが含まれるべきなんだよ」という、アプローチを試みたのです。三回目は、日本語で自己紹介。スキット風に、実際に自己紹介する場面を設けたのですが、発音がとても上手い。やはり、若い生徒達の頭は柔らかいですね。ファシリテーターの私自身が、感激してしまいました。最終回は、「〜は日本語で何ですか?」という疑問文です。参加生徒が質問して、日本人ボランティアが答える、という対話形式で進めました。小学生や中学生が、普段「How do you say 〜 in Japanese?」と英語で、私たちに質問することの多い、人気のWHクエスチョンです。日本語でやりとりすることの楽しさが、少し伝わったのではないでしょうか。

 日本文化の方は、まず、日本文化のバック・グラウンドとなる基本情報を、少しずつ紹介しました。具体的には、宗教、食事、四季などに関する話題です。宗教については、一神教と多神教の違いを、避けて通ることはできません。自然崇拝や祖先崇拝という切り口で、話を進めたのですが、センシティブな話題であるだけに、少し難しく響いたかもしれません。食事については、日本には同じ島国として、海産物が食卓に上る日常があることを、説明しました。比べて、セントルシアでは、海産物がホテルや高級レストランに流れてしまうので、「少し残念」という感想を正直に語りました。四季については、まず日本の季節感を紹介しました。その後、トロピカル・アーモンドの紅葉と落葉(Fall)を根拠に、セントルシアにも乾季の終わりに短いFallがあるのではないか。また、フラムボイヤントの開花の様子(Spring Out)を根拠に、雨季の始めに短いSpringがあるのではないか、と投げかけてみました。冬はセントルシアにはないので、雪が降るほどに寒いこと。寒過ぎて、蚊は冬を越せないこと。寒さを凌ぐために、鍋を囲む団欒や、入浴、布団などの暖かい文化が育まれてきたことなどを紹介しました。

 日本文化体験としては、二回目に書道を楽しみました。硬筆では、その日に学習した「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」「おやすみ」「ありがとう」のあいさつを、筆順を守りながら書く体験をしました。毛筆の方は、ネーム・タグとして用意した、自分の名前(ひらがな)を手本として書くことに人気が集まりました。毛筆でのカリグラフィーは初体験だったようで、教室は清々しい緊張感に包まれました。三回目は、折り紙を楽しみました。折り方見本を頼りに、鶴、豚、鳥、手裏剣を折るのですが、例えば「折り紙の角と角をしっかりとあわせて折る」などの細かな作業が苦手な生徒は、少し苦労しました。しかし、鮮やかな色紙は、どの生徒にとっても、お気に入りだったようです。後半は、紙飛行がどこまで遠く飛ばせるかの競争です。屋外の開放感を味わうことのできる、気持ちのよい大会となりました。子どもは、教室の中よりも、やはり校庭が似合いますね。洋の東西を問わず、あたりまえの命題なのかもしれませんが、あらためて校庭の心地よさを確認することができました。緑の中を飛んでいく白い紙飛行機が、ワークショップ参加者全員の視線を集める。とても素敵な時間となりました。最終回は、日本アニメの紹介です。ここセントルシアでも、日本アニメは有名で、みんなよく知っていました。ファシリテーターが、日本アニメの特徴を、「Effort・Friendship・Victory」の3つにまとめる辺りは、特に生徒たちの共感を集めました。最後に、アニメ・ソング「We Are」を参加者全員で歌ったのですが、生徒たちが一生懸命に歌う表情の中に、「Effort・Friendship・Victory」を見るような気がしました。

 セントルシア隊員5名で取り組んだ今回のワークショップは、とても小さな一歩なのかもしれません。しかし、世界中に散らばっている協力隊員が、同じような取り組みを進め、「異文化社会における相互理解の深化と共生」に、それぞれ貢献しています。大きなうねりに、勇気をもらう思いがします。

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