2026/04/28 Tue
自然
隊員Gのセントルシア日記_76 〜Fall and Spring〜

私の任国・セントルシアは熱帯ですので、冬はありません。以前もお話ししたように、セントルシアの冬至の日(12月20日頃)の太陽の南中高度が、日本の秋分の日(9月20日頃)や春分の日(3月20日頃)のそれに匹敵しますので、秋から冬、そして春へと向かう日々が、丸ごと抜け落ちることになります。しかし、よく観察していると、FallやSpringのタイミングはありそうなのです。1つ目の画像は、トロピカル・アーモンドの木の紅葉です。(熱帯での紅葉は、例外的です。)ツヤツヤした赤い葉が、力強さを感じさせてくれますが、しばらくすると落葉し、赤い葉の絨毯を周囲に敷き詰めます。2つ目の画像は、葉が少なくなりつつある鳳凰木です。初夏には、炎のような赤い花をつけますので、「火の鳥」がカリブの海へと飛び立つ勢いを感じ取ることができました。また、真夏には、青々と葉を繁らせ、木陰が心地よい憩いの場を提供してくれました。しかし乾季終盤の今、全ての養分を実(豆)に取られ、光合成の役割を終えた葉は見る影もありません。この季節感は、どう考えても、葉を落とすFallそのものです。入り江の向こう岸に目をやっても、丘全体のイメージとして、茶色っぽい草木の様子を感じとることができるのです。もちろん、日本の秋ほど、鮮やかな紅葉や落葉ではありませんが。この季節は、やはり郷愁に誘われます。

ところが、調べてみると、面白いことがわかりました。温帯の落葉樹が葉を落とすのは、寒さ対策なのです。冬になると、土の中の水分が凍る可能性があり、根から水分を吸収できなくなります。すると、木は水不足の状態に陥りますので、蒸散機能をもつ葉を切り離し、節水を心がけて、寒さに備える必要があるのです。葉をリサイクルする方向に進化したのですから、実に賢い選択ですよね。これに対して、熱帯の鳳凰木が乾季に葉を落とすのは、乾燥対策です。乾季には、土壌の水分が減り、水不足の状態に陥りやすくなります。すると、蒸散による水分損失の負担が重くのしかかりますので、葉を切り離して節水する、という仕組みなのです。しかし、セントルシアは海洋性熱帯気候ですので、乾季でも局所的な雨は降ります。従って、乾燥というストレスの高低は、場所によって異なることになります。2つ目の画像をよく見ると、向かって左半分の葉は、右半分ほど失われていません。おそらくは、渇水の影響が少ないのでしょうね。それにしても、乾燥というストレスのかかり具合によって、葉をリサイクルするかどうかを判断するとは、温帯の落葉樹に劣らぬ賢さです。

そして、日本のように、気温上昇がトリガーとなって、花が一斉にSpringするような春は、残念ながらセントルシアにはありません。ところが、先ほどの鳳凰木の例で、引き続き話をするならば、乾季から雨季に切り替わるタイミング(4月終わりから6月初め頃)で、乾燥ストレスから一斉に解放されます。すると、雨への期待感が、成長予感を増幅し、一気に開花、受粉、種子づくりへと動き出すようです。ストレスの反動なのかもしれませんね。結果として、葉の再生よりも、開花が優先され、丸裸の鳳凰木に、赤く美しい花が咲き乱れるのです。ここで気になるのが、桜(ソメイヨシノ)との比較です。桜も、ご存じのように、葉よりも先に花が咲くのですが、温帯と熱帯では、理由が異なります。桜は、葉のない状態で、花を咲かせることで、受粉に有利になるように目立たせているのです。例えば3つ目の画像にあるブーゲンビリアは、乾季でも美しく咲き誇っていますので、熱帯では一年を通じて競争相手が多いのです。しかし、受粉媒体である鳥や昆虫も多く、葉より先に開花して目立つべき必然はあまり見当たらないのです。 ありがたいことに今回も、自然の摂理への畏怖の気持ちを、より豊かにすることのできる、清々しいミニ探究となりました。疑問をもつことは、実に楽しい。
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