JICA海外協力隊の世界日記

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今月のキャプテンを決めるMVPとは!? さわやかNo,25

今回はチーム作りをしていく上で,欠かせない取り組みを紹介したいと思います。

それが【月間MVP表彰】!!!

~目次~

◎MVPとは?

◎TEAM SWYKのMVP表彰はどうやるの?

◎MVPを選ぶ基準とは?

◎これをすることによって得られる効果は?

◎いつ・どんな形で表彰するの?

◎MVP選出により,キャプテンを務めた前後の変化

◎MVPとは?

MVPという言葉を一度は聞いたことがあるでしょうか?

これはスポーツ界で主に使われる言葉なのですが,【Most Valuable Player】(最優秀選手)の頭文字をとったもので,シーズン毎,または試合毎に最も活躍した選手に贈られる賞です。

そんなMVP選出を私のチームでも行っています。

◎TEAM SWYKのMVP表彰はどうやるの?

でも,他のMVP表彰と一味違うのは,お偉いさんが選ばないということ。

普通のMVP表彰はきっと,その団体・連盟のトップまたはそれなりの権力のある人が,「今月はこの選手を表彰しよう!」「この大会で目立った選手はこの選手だな!」と決めていると思います。(おそらく)

しかし,私のチームのMVP表彰は,まず権力者は誰でもないですので,選手同士が選びます。

「え?選手同士で選ぶって大丈夫?」と思った人,そうなんですよ!

基準が曖昧だとこの選出は非常に難しいと思います。

なぜなら,普通は「頑張ったのを認めて欲しい!」「MVPに選ばれたい!」とどの選手も思っているはずです。

じゃあ自分を推薦する!!!と,したいところですが,それはできないことになっているのです。

◎MVPを選ぶ基準とは?

監督が決めるわけでもない,自分を推薦することもできない。

それじゃあ一体誰が選ぶのか?

MVP選出のための《ルール・選出方法》は以下の通りです。

・月に一回,その月の中で「一番チームに貢献した選手を選ぶ」

・選手間でアンケートを取り,得票数が多かった選手がその月のMVPとして,来月の表彰までキャプテンを務める

《選考時の注意点》

・自分以外の選手を選出すること

・なぜ,その選手を選んだのかの理由も明確であること

・理由は,試合の中での結果ではなく(例えば,ヒットを打った・良い投球をした等は選考基準外),準備や片付けを率先して行っているや,仲間へのフォロー・チームのムード作りをしているかなどを選考の基準とする。

試合の結果は,その日の調子や相手によって大きく異なります。

プロの世界では,結果が命なので試合での結果が重視された選考となります。

しかし,子どもがプレーするグラウンドにそのような考え方は必要ありません。

“試合で打ったから偉い。打てなかったからダメ”ではなく,誰でもその気になればできることを選考の基準とし,考え方・取り組み方を“チームのために”を念頭に置き行動をすることで,周りから評価されるというシステムになっています。

◎これをすることによって得られる効果は?

もちろん,MVPに選ばれた選手は照れくさそうにしながらも,内心めちゃくちゃ喜んでいるのが伝わります。

それもそうです。自分のしてきたことを肯定的に受け取り,評価してくれる人の存在は自分にとってすごく大きなものです。

相手を信用する一助にもなりますし,選手間で選ばれているため,大きな責任感も養われます。

選ばれた選手の自己肯定感を育むことを目的としているところもありますが,それ以上に,全選手に対して周りを観察する能力・素直に人の頑張りを認められる能力・人に委ねられる能力を伸ばしてもらいたいと思っています。

この取り組みは,「選ばれた!よっしゃー」「おめでとう!キャプテンよろしくねー」と,ここを目的にしているわけではありません。

そこまでの過程をこの取り組みの中では大切にしています。

自分のことばかりを見ていては,いざ選出するとなった時に理由が思い浮かびません。普段から,周りの選手に注意を向け,観察し,他人から学ぶという意識を持っていなければ,選出は難しいはずです。また,自分が一番!という気持ちだけでも選出は難しい。素直に,「あの人はいつもチームのために頑張っているな」という心がないと,選ぶことはできません。また,選ばれた選手がキャプテンをするわけなので,選んだ側に責任があります。認めて・大役を委ねる気持ちを持てるかどうか。チームスポーツならではの,組織作りで大事なことだと思います。

◎いつ・どんな形で表彰するの?

月末の練習の終わりに発表・表彰するため,その一つ前の練習でアンケート用紙を配り,記入してもらいます。

記入内容は2点。「自分が選ぶMVPの名前」と「なぜ,彼または彼女を選んだのか?」の理由を書いてもらいます。

最初の頃は紙を渡して,家で書いてきてね!というやり方でやっていたのですが,次の練習時に「持ってくるの忘れました〜〜」という子が爆発的に多かったので,現在は練習中に一人一人呼び出して,書いてもらう時間を取っています。

この時の,選手が紙に記入するときの顔をみるのも,また楽しい。

“責任をもつ”ことで生まれる名前を書くまでの『間』。本当にこの人で相応しいかを自分の中で問いただすその間は,チームメイトへの信頼と,自分の評価軸の確認です。

一人一人のみる視点や感じ方が違うところに,それぞれの個性があるし,それを子ども達同士が,本当によく見ているなと,書かれた理由を見て感心します。

発表時には,全員きちんと整列をし,ピシーーーっとした空気を作ります。そして,日本の大会等の表彰でよく使われるあのBGMをかけ,発表。

上の写真のような賞状と,王冠が渡されます。

発表後は,旧キャプテンの挨拶と,新キャプテンによる挨拶という引き継ぎ交替式。

一言一言,子どもながらに責任のある言葉を選び,決意表明する様子は逞しささえ感じます。

そんなこんなで,毎月末はMVP表彰と,キャプテンの交替式。

このチームならではの,このチームに根付いた文化です。

◎MVP選出により,キャプテンを務めた前後の変化

3枚目の写真は,旧キャプテンが,私としている野球ノート(交換ノート)でMVPに選ばれて,1ヶ月間キャプテンを務めての感想と成長できたことが書かれています。

「キャプテンをさせてもらえたことで,僕は成長することができました。次は◯◯がキャプテンです。最高のチームになるだろうと思います。本当にありがとうございました」と書いてくれていました。

キャプテンをする以前は,練習はとても率先してチームのために動いていましたが,試合になれば,ミスをすれば泣き,怒り,チームの雰囲気をぶち壊すこともしばしばあった彼。

こう書いてくれたことが嬉しくて嬉しくて,この子のお母さんに『ガブリエルがこんなことを書いてくれましたよ!』と見てもらいました。

するとお母さん。

「家でも不安なことがあると,すぐに周りをシャットアウトしてしまい,自分を塞ぎ込む性格だった。両親以外の大人を怖がり,学校の先生であっても話しかけたり,自分の想いを口にすることはできなかったんです。でも,周りのみんなにキャプテンに選ばれ,自信が持てたようで,グラウンドでの顔も変わったし,何よりこのノートに自分の想いを先生宛に書いていることが彼の大きな変化です。」

と言ってくださいました。

非常に嬉しかったです。

子ども同士の関係を強化しつつ,一人一人の成長に繋がるこうした取り組みをさらにしていきたいなと思います。

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