JICA海外協力隊の世界日記

バヌアツの海と空の間で

ティラピアと黒魔術

バヌアツにはブルーホールと呼ばれる神秘的なほど碧く澄んだ池が点在しています。
ここに訪れるツーリストも多く観光スポットの一つですがサント島にはまだそれほど旅行者自体が多くなくとてものんびりできます。
水中には無数の魚が泳ぎまわっていて水遊びをしながら間近で見られるのも楽しみの一つです。
ここの魚はほぼ観賞用で獲っていないので、観光客に出す料理にはブルーホールから水を引いた池で養殖したティラピアを利用しています。

水産局の仕事としてティラピア養殖事業があることは以前ここでも書きましたが、ティラピアの環境適応能力の高さと生命力で収穫までほとんど手が掛からないので池の作り方、稚魚の導入まで済んでしまうと養殖している農家は相談や報告には来なくなってしまうので定期的に池の様子を見に巡回しています。
1月中旬頃に上記のティラピア養殖業者を尋ねたところ池が干上がっていました。

どうしたことか事情を聴くと11月の雨の多い時期に突然池の魚が大量死してしまったそうで、オーナーの女性は
『この土地にはブラックマジックがあって私の事業がうまくいってることを快く思わない連中が黒魔術で池の魚を殺してしまったんだ。実際に魚が死ぬ間際、魚たちは怯えたように一か所に固まりその後死んでしまった。でも私はそんなことでは挫けない、来月再チャレンジしてみるわ』
と周囲に人はいないのにヒソヒソ声で、まるで怪談を話すように説明してくれました。
瞬間的に池に毒物を流し込まれたのかとも思いましたが、出来るだけ原因を特定しようとその時の天気や気温、飼育状況などをいろいろ聞いていると、同行した水産局のスタッフは黒魔術を信じ切っていて、関わると自分も呪いを受けてしまうと思っているのか質問攻めにしている私を見てウインクでそれくらいにしておこうと促していました。
一見なにも問題は見当たらないのですが聞き進めていくうちに許容量の2倍の過密な状態で飼っていたことが判明し、酸欠が主な原因だったと結論付けました。
料理としての需要はあるので生産量を落とさないように同じサイズの池をもう一つ作る提案で話がまとまるとオーナーの先ほどまでのおどろおどろしい話し方が一変して笑顔で大きな声で話始めたので同僚と顔を見合わせて笑ってしまいました。

今回に限らずバヌアツでは不可解な出来事はブラックマジックの一言で片付いてしまうことがあり、これは一つの習慣のようなものですが水産局としては養殖等うまくいかない時は何か原因があると探れるよう同僚と力を合わせて頑張っていきたいと思います。

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