JICA海外協力隊の世界日記

純風満帆なバウカウ生活

威風堂々

どーも、うちのゲストハウスのお手伝いさんが部屋の前で夜遅くまでいちゃいちゃするのでイライラしている小林です。

表題の写真は、8月に行ったスタディツアー時に同僚PTのPricelaにプレゼンしてもらったときの写真です。このときティモール人PTと日本人PTの思考プロセスの違いが顕著にでたのを鮮明に覚えています。

さてさて、先日の続きです。

問題は、同僚たちが行動変容(内側から殻を破って、外へでていく)を起こせないのはなぜか。

冒頭でも述べた「思考プロセスの違い」をもとに、JOCVの診療補助や見学で得た受動的な技術向上を、実際の診療場面に活用できない例から考察したいと思います。

先日の投稿でもあげたこの折れ線グラフ。みなさんお気づきかもしれませんが、10月と11月で患者数が減っています。特に理学療法科患者数が減り、整形外科診療補助数が増えています。

gurahu.JPG

これは、純粋に理学療法実施回数が減っていることを示唆しています。

原因は直ぐに分かりました、理学療法科の患者再診数が著しく減っています。

(筆者が10月、11月に障害者関連の仕事で留守にすることが多かったことも関係しますが、、、)

grahu6.JPG

つまり新規の患者は継続的に来ているが、フォローアップをせずに一回で終了しているということです。これはもちろん患者ごとに診療の仕方は違いますが、再診をせずして治療の効果判定(患者が良くなったか悪くなったか)ができているのか疑問に残ります、、、

そこで質問

筆者:「患者に対して治療をして、再診せずして治療効果の判定ができるのか?」

同僚:「基本的にどのケースに関しても再診は必要だ。」

同僚も再診の必要性を認識しているよう。

再度、質問

筆者:「では、なぜ再診率が悪い?」

同僚:「治療道具がないからだ」

そう、実は10月初旬に理学療法科の赤外線治療器が壊れました。

e8.JPG

彼らにとっては、これは治療の生命線のようです。同僚の理学療法士はインドネシアの大学を卒業しているのですが、物理療法の授業が大半で、運動療法等の授業は全然ないようです。(昔の日本と似ているのか)

ということで、再度質問

筆者:「なぜ、赤外線治療器が必要なの?」

同僚:「効果があるから」

筆者:「効果はどのようなもの?」

同僚:「例えば肩に照射したら筋肉が柔らかくなって、腕が軽くなる」

そこで、筆者が一つ例を提示。左側は徒手的にストレッチ(肩甲骨周囲)を行っている絵、右側は赤外線照射(肩甲骨周囲)を行っている絵。

grahu7.JPG

筆者:「上の絵の左右ともに治療目的は似ているけど、赤外線治療器じゃないとできないかな?」

同僚:「患者は、赤外線治療器がないと治療した気にならないから再診にこない」

そこで、筆者がまた一つ例を提示。

grahu9.JPG筆者:「僕はほとんどの患者(新患13名中、12名)が再診にきているよ」

同僚:「PTは一人一人の診療の仕方が違うから」

筆者:「治療内容には言及していないよ。ただ原因は道具だけじゃないとこのグラフで分かるよ、道具がない状況はみんな一緒だから」

同僚:「ではなぜ純だけ再診が多いの?」

筆者:「治療の前後でしっかり評価しているから。例えば、治療前に肩が50°しか上がらなかった人が、治療後に120°以上あがるようになったことをしっかり伝えたら、次も来たくなるよ」

同僚:「では、一人一人の技術を向上するにはどうしたらいい?」

筆者:「まず患者をたくさん診ること。そして、自分の治療で患者に変化があったかをしっかり評価するのが大切。だから再診はとても大切、新患で離すと患者が喜ぶ姿とか達成感も得られないから自分たちのモチベーションも上げられない」

同僚:「分かったけど、部屋も狭いし、道具もないから良い治療はできないよ。道具を使用しない治療は大学で学んでないから、また勉強しないといけない」

さて、かなりはしょりましたが、ここで僕と同僚の思考プロセスを比較してみたいと思います。

筆者:患者再診率が悪い→PTが適切な理学療法評価と治療ができていない→患者が効果を実感せずに再診しない

同僚:患者再診率が悪い→治療道具や施設が整ってない→治療道具なく良い治療ができないことから患者に再診の動機づけを与えられないため再診しない

筆者の思考は「自身の行動を原因」としています。

同僚の思考は「他人や環境を原因」としています。

同僚たちは自身の行動を振り返るという思考プロセスを苦手としています。自身の行動は周囲の人や環境という条件が整った状態で発揮されるということで、現在私も彼らにとっては「あって当然のもの」という位置にあるんだなと感じさせられました。

この思考プロセスは、同僚たちの行動変容を阻害している原因と考えられるでしょう。

実際、この思考プロセスはそのまま同僚たちの態度に現れています。まさに威風堂々、会議中も「私は悪くない」と言わんばかりにドンと座っています。

さてどう解決していくか。彼らにとっては私は「あって当然のもの」、つまり一つの便利なツールとなっています。

視点を変えると、僕という「道具」をうまく活用できないかなというところです。

例えばこのような使い方があります。

同僚が顔面神経麻痺の新患へ理学療法をする場面

同僚:「この病院は電気治療器がないから頬を家で毎日マッサージしてください。それから明後日もう一度来てください」

患者:「はい」

同僚:「純、医師からステロイドを処方されてるのは普通なの」

筆者:「顔面神経麻痺の初期治療はステロイド治療だよ、医師から7日分処方されてるから再診は7日後でよいんじゃないかな、あんまり早くから理学療法すると後で後遺症(病的共同運動)がでるかもしれないよ」

同僚:「なるほそ。それでは、7日後に再診に来てください」

この一連のやりとりの中で、治療の舵取りは同僚が行っています。その中で「同僚が主体的に行っている治療の中で悩んだことを同僚から質問してくる」というプロセスは、今回の課題解決の一手段だと感じました。

いつもは私の治療中に同僚が私に質問してきたり見て学ぶことが多いのですが、これは受動的で問題意識も目標もありません。私自身も自分がやったことをフィードバックするのが一番勉強になります。

思考プロセスを変えることを目的にするのではなく、彼らが主体的に働けるサポートをすることが彼らのためになるかなーと考えています。

「そんな悠長なことしよったら、なんも変わらん」と言われてしまうかもしれませんが、彼らにとって便利な存在になることで「患者が笑顔で満足」できたら良いなと思います。

ということで、ハッピーメリークリスマス&良いお年を。

注)患者さんのことを分かりやすいように、「患者」と統一して表記しています。

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