子連れジャマイカ滞在日記

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フィネルップ 尚子
富山県

タイプ/職種
シニア海外ボランティア
日本語教育
派遣国
中南米
ジャマイカ キングストン市
一言メッセージ
9歳の娘を連れてジャマイカに赴任し、大学で日本語を教えています。人手もお金も足りない大学で、安く効率的に日本語を学ぶ方法を模索しています。

 

ジャマイカの果物

2019.11.05

文化 生活

 ジャマイカに来て初めて食べた果物はいくつもありますが、噂で美味しいと聞いていて、食べてみて期待どおりに美味しかったのが、このブレッドフルーツ(パンの実)です。あぶり焼きや蒸し焼きにした後、皮をむいて、(ジャマイカ人は絶対にしませんが)バターやクリームチーズを塗って食べると、パンのホクホク感と芋味が口の中に広がる、不思議美味しいパンです。

 ブレッドフルーツの木は、放っておいても勝手にパンが実る魔法の木として、5度のハリケーンの被害から飢饉が起こった1780年から1786年の間に輸入が計画されました。当時はアメリカ独立戦争の真っ最中で、アメリカからの食料輸入も不可能とあって、なんとしてでも自給自足が必要だったわけです。そこでイギリス王の命を受けたウィリアム・ブライ(William Bligh)という艦長さんが、ティモールやタヒチでブレッドフルーツの苗木を手に入れ、戦艦バウンティでジャマイカに向かったのですが、船員に水を与えずに、毎日大切な苗木に欠かさず水をやっていたため、船員の反乱に遭い、小さな船に乗せられて海に捨てられてしまいます。命からがら陸地にたどり着いた艦長さんは、執念の2度目の渡航でブレッドフルーツの苗木の輸入に成功します。この冒険物語に基づき、多くの文学作品や映画が作られています。どの作品も脚色が多く、実話とかなり違うのですが、1935年に作られた、クラーク・ゲーブル(『風と共に去りぬ』の主演男優)が反乱軍のリーダー役を演じる『艦船バウンティ(の反乱) (Mutiny on the Bounty)』は、オスカーの作品賞を受賞しています。

 ブレッドフルーツは瞬く間にジャマイカで繁殖したのですが、ジャマイカ人は怖がって長い間食べようとしなかったそうです。でも今ではブレッドフルーツは大人気。ダンスホールレゲエの「Roast or Fry (Breadfruit) 」のような、ブレッドフルーツについて歌う曲がヒットするほど、ジャマイカにはブレッドフルーツ愛が溢れています。めでたし、めでたし。

 こちらは、「臭い足の親指 (Stinking Toe)」。右から、娘の足、殻を割る前の臭い足の親指、殻を割って中身が見える臭い足の親指。果物になんという命名を、と思われるかもしれませんが、確かに足の親指のような形状で、ジャマイカの全国紙、オブザーバーの記事によれば、「ほとんどの人にとって耐えられない」臭いです。夏が季節で、夏になると、親指三本入りの袋一つ60円でスーパーに並んでいます。硬い殻がしっかり臭いを包み込んでいるので、岩で割らないと臭いはしませんが、割ると納豆のような強烈なにおいで人を撃退します。

 この臭いからは想像もできませんが、きなこのようにほのかな甘みのあるやさしい味です。鉄分・カルシウムなどのミネラルやビタミンAを中心とするビタミンが豊富で、滋養強壮によいと言われ、中南米・カリブ諸国で広く食されているそうです。殻の中身は、触るとパウダー状にほぐれるので、ジャマイカではスムージーなどに入れて、エナジードリンクとして飲まれています。

 臭い足の親指の木は、シロアリやカビを寄せ付けないので、ジャマイカの先住民、アラワク族の人たちはこの木で船を作っていたそうです。この他、魔術や恋のおまじない、結婚式などで使われていたそうです。ジャマイカでは今でも、彫刻や建築に使われています。

 エキゾチックな果物ばかり・・・という誤った印象を与えないために、柑橘類の中で生産量が世界一、最も愛されている柑橘類と言えるオレンジの写真も載せておきましょう。写真は、アパートの庭でほぼ一年中たわわに実るオレンジ。手を伸ばせば届くところにオレンジがいくつも実っています。オレンジはインド原産で中国を経てポルトガルに渡り、そこから世界中に伝播したそうです。ジャマイカでは外来種ですが、このように庭に観葉植物として植えられてもいますし、生産もされています。

 同じ柑橘類で、西インド諸島原産の果物は、グレープフルーツです。原産地はバルバドスと言われることもありますが、原産地はジャマイカかもしれないと言い張るジャマイカ人もいます(参照;オリバー・シニア『ジャマイカの遺産AからZ』26頁(1983年))。脂肪燃焼と疲労回復の効果に優れると言われるグレープフルーツ。筋肉質で疲れ知らずのジャマイカ人を見ていると、やっぱりジャマイカが原産地なのでは、と思われてきます。