子連れジャマイカ滞在日記

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フィネルップ 尚子
富山県

タイプ/職種
シニア海外ボランティア
日本語教育
派遣国
中南米
ジャマイカ キングストン市
一言メッセージ
9歳の娘を連れてジャマイカに赴任し、大学で日本語を教えています。人手もお金も足りない大学で、安く効率的に日本語を学ぶ方法を模索しています。

 

家、家にあらず。継ぐをもて家とす。

2019.11.13

人 文化 活動

 タイトルは、世阿弥が能の理論書『風姿花伝』に記した言葉です。家というものはただ続いているだけではだめで、その家の芸を継承してこそ家が続くといえるという意味です。

 最近、下の階に住むミャンマー人の友人(写真はNeedpix.comからダウンロードしたミャンマーの景色で、彼女のイメージ。)の家でお茶をしていたときにふと思い出した言葉です。彼女はお医者さんで、4人のお子さんは皆、既に成人。ご長男がお医者さんで、7人のお孫さんのうち、一番上が今UWIの医学部で勉強中だとか。家業である医学を代々受け継いで、世阿弥の教えを実践していますね。そして本人はまだ現役。勤務医でありながら、信用できる患者さんを自宅で診ることもあるそうです。

 ミャンマーの政治が不安定だったことから、1990年にジャマイカに移住し、既に30年。患者さんが、「妻だ」「恋人だ」と、訪れるたびに次々と別の女性を連れ来て、結婚はどちらか一方が死ぬまで続くものだと信じていた彼女はカルチャーショックを受けたそうですが、道で車が故障した時に親切に車を直してくれたり、運転手が道を横断する歩行者をゆっくり待ってくれたりと、ジャマイカ人の親切なところが好きだと、明るく語る移民一世です。

 写真はキャンパスにある孔子学院の執務室でエグゼクティブを気取るカルビンさん。カルビンさんは、言語学を主専攻、中国語と日本語を副専攻として、優秀な成績を収め、今年卒業しました。中国の客家人のおじい様がパナマ運河の完成で職を失い、ジャマイカにやってきたという、移民三世です。

 親戚は皆、既にアメリカなどに移住して、ジャマイカに残っているのはカルビンさんとお父様だけだったのですが、そのお父様がこの夏亡くなり、カルビンさん一人に。その後、JETプログラム(語学指導等をする外国青年招致事業)に応募して日本で働きたいと言ってきたので、志望動機を添削したり、推薦状を書いたりしたのですが、結局、家を守るためにジャマイカに残ることにしたと、推薦状を手渡そうと思っていた矢先に言われました。

 カルビンさんの夢は、去年のスピーチ大会で語ったとおり、ジャマイカに学校を作って、メイド・イン・ジャマイカの製品を作れるジャマイカ人を育てること。今はジャマイカでやることがあると判断したのでしょう。少し残念な気もしますが、これでよかったと思える日が来るでしょう。

 写真は、最近娘が最初から最後まで一人で焼いたフォッカッチャ。フォッカッチャは、イタリアの手焼きパン。ピザの原型と言われるパンで、料理初心者にも簡単に焼け、材料もオリーブオイルや小麦粉など安くて簡単に手に入る健康的なものばかり。

 我が家で娘に受け継がれているのは家訓「健康第一」くらいでしょうか。移民の流入も国民の流出も多いジャマイカで、国境を越えて家業が受け継がれているのを日々目にしていると、娘に何を受け継いでもらいたいか、考えさせられます。