JICA海外協力隊の世界日記

マラウィ・デイズ

ミニバスは今日も行く!

マラウイの移動手段の一つであるミニバスには

時刻表や予定など存在しない。

乗客で満席になるまで目的地へ出発しないからだ。

待ち時間が長くなったときは、

車内の人々を観察するのもおもしろい。

たくさんの野菜を入れた大きなバケツを持った農婦。

まだ生きてる鶏の足を逆さまにして持っている青年。

周りにたくさん人がいようと構わず授乳する母親。

無遠慮にじーっとこちらを見続ける子ども。

スマホに夢中になっている今風の若い女性。

狭いバスの中はさながら人間模様の宝庫。

いつ出発するかわからない蒸し暑い車内での

待ち時間は先がよめない。

だから誰もがこうやって、ひたすら待つのだ。

何十分も、何時間も。

バスが満席になるまで。

定員の約2倍の乗客を詰め込み、

ぎゅうぎゅうになったところでようやく出発。

ドライバーはスピードを上げ目的地へ向かう。

その日のバス移動も、容赦のない陽射しの強さと

人口密度の高さのせいで、車内は溶けそうに

暑かった。冷房などもちろんない。

両隣の乗客とは当然のように肌と肌が密着していた。

あるとき、前方を淡い緑のクルマが

ゆっくりゆっくり走っているのに気付いた。

バスのドライバーは迷わず

アクセルを踏み込み追い抜こうとする。

もちろん対向車がいないことを確認して。

その淡い緑のクルマを運転していたのは、

初老の男性だった。

穏やかな笑みを浮かべ、気持ちよく先をゆずり

こちらのバスを見送ってくれた。

バスはしばらく快調に走っているかに思えた。

しかし、何やら異音がしており様子が変である。

前方の道路に警察官が立っているのが見えた。

すべての通行車両に静止を呼びかけているようだ。

マラウイの道路ではよくあること。

私が乗っていたミニバスも道路脇へ停止した。

警察官の表情が穏やかではない。

そしてバスのドライバーの表情も硬い。

警察官がドライバーに話しかける。

定員オーバーの事を注意されているのだろうか。

現地語だしよくわからない。

乗客は全員降りるよう指示された。

降車した私が見たものは、派手にパンクしている

バスの前輪だった。

数分ほど過ぎ、見覚えのある淡い緑のクルマが

バスの後ろに停止した。

あの初老男性のクルマだ。

警察官は少し目配せしただけですぐに通過させ、

私たちの横をゆっくりと追い越していった。

急ぐ必要などない。

日々の暮らしもそうかも知れない。

たくさんの予定を詰めて急いで走っても、

途中で何が起こるかわからない。

炎天下の路上で、パンクしたミニバスを

降ろされた私たちは、幸いなことに後から来た

同型のミニバスにすぐに乗り継ぐことができた。

私は窓際の席に座り、古くて堅くなっている窓を

力を込めて横にスライドさせた。

蒸し暑い車内に、少しだけ涼しい風が入ってきた。

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