JICA海外協力隊の世界日記

吉田考が見せたい中国

それぞれの進路

1119日、2人の学生たちが武漢を発ち、日本へ向かった。

思えばちょうど一年になる。

中国に来て、よちよち歩きの日本語教師の自分が、さんざん迷惑をかけた最初の学生たちだった。

不甲斐なくて、申し訳なくて、それでも私を受け入れてくれていた生徒達。

空回りばかりで、大したこともしてあげられなかったと思う。

1年後の彼らが帰国するころ、私の任期は終了しているので、もう会うことができなくなってしまうかもしれない。

そう思うと非常に切ない気持ちになる。

駅で見送りしたとき、幾人かの学生、担任の先生、そして彼らの両親がいて、皆思い思いに別れを惜しんでいた。

私も彼らに「日本で身体に気をつけて、頑張ってね。」と伝えた。

送り出す者になって初めてわかったが、この言葉には伝えたい気持ちがすべて込められないが、それ以上の気持ちが込められていると思う。

でも、やはり私たちの間にも境界はあるので、それだけしか伝えられないし、そこまでしか伝えてはいけないものだと思う。

彼らと別れて尚、胸から溢れる気持ちがこれまでのことを回想させた。

こんな余韻、一生忘れられそうにない。

他方、今日は宝石加工学科の卒業記念パーティーがあった。

宝石加工学科のある学生は独学で日本語を勉強している。

専門の宝石加工で、ヒスイの装飾品を見せてもらったことがある。

将来、職人になりたいそうである。

写真は、学生がつくった携帯カバー。

私が学校の寮に寝泊まりした夜、色々な話をした。

日本のドラマ・映画・漫画の話、日本で観光したい場所、それから彼の専門である宝石加工の話、中国で今まで行った場所の話、彼の友達の話、本当に色々と話した。

外で食事したり、一緒に散歩に行ったりもした。

彼は私のことを友達だと言ってくれる。

私も彼のことが好きだ。

彼にもっと積極的に日本語を教えたかった。

でも彼はもうすぐ仮卒業し、学校外実習に参加する。

学生時代と比べようがないほど、忙しい日々をおくることになる。

彼にも頑張ってほしいが、彼はまだ武漢にいるので、これからも交流を続けていきたい。

そして最後は、現在の3年生の一人が大学受験に向けて外部の塾に通うことを決意し、学校を早期卒業した話。

彼は武漢では珍しいタイプで、非常に穏やかで優しい性格だ。

いろいろ周りが見えているし、とても配慮がある。

そういう彼だからやはり女性にもてるが、一途で純粋でかわいらしい子だ。

男性にとっても一緒にいてとても落ち着くタイプだと思う。

彼はこの一年間、日本語倶楽部をけん引してきた。

私は彼がいたから、楽しい一年を過ごすことができたと言っても過言ではない。

学生との間に入り、上手く調整してくれていた。

その彼が学校・クラブを去ってしまうことが、実はかなり不安だ。

しかし彼もまた同じように寂しいと感じてくれていて、それが私にとって、涙が出るほど嬉しい。

受験に日本語は使えないそうなので、しばらく勉強しなくなってしまうだろう。

もしかして生涯使うことがなくなるかもしれない。

ただ彼なら、日本語の勉強を通じて、日本的な考えや日本語の美しさを繊細に感じ取っていたと思う。

言語を操る以上に、彼の中に蓄積されたものが、彼の将来の何かにいい影響を与えてくれることを祈っている。

みんな、正直手放したくない。

でも彼らの未来は、もはや私の庇護のもとではない。

いや、それもおこがましいところだ(笑)

何にせよ、送り出すべきだ。

力強く生きて、きっと面白い人生を歩んでいくに違いない。

頑張れ、今までありがとう。

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