JICA海外協力隊の世界日記

イッペーの花咲く頃

うれしい出来事と課題

 「あなただったのか・・・日本人が来たって!」その一言からの振り返りを記します。サンパウロ近郊には私の配属母体であるサンパウロ日伯援護協会が運営する4つの老人施設や、他に日系団体が展開する老人ホームが点在しますが、希望があっても入居定員や経済面から非日系の施設選択をせざるをえない事情もあります。高齢移民1世の方が言語の違う施設に入居され、言葉の不自由さのなかで生活されることは大変なことです。私がブラジルに来るきっかけになったのも、日本語でのケアでお役に立てるのなら・・・そんな気持ちからが始まりでした。余暇を利用して日系施設以外の老人ホームを訪問し、日本人入居者の方々へ日本語での話し掛けや傾聴を行いました。ポルトガル語での介護を受けている日常の中では、「こんにちは〇〇さん」の在り来り挨拶の一言でも表情が一転し、閉じていた目を大きく開き、心が動く瞬間がわかり、懸命に「自分はここにいる」と訴えてこられる様子が伝わってきます。他言語での医療・介護は高齢者にとって厳しい現状が垣間見えます。晩年において元来の言葉や習慣で暮らすことは大切な生きる術です。言葉の通じる安心から少しでも孤独感を補うことができるのならと訪問を繰り返しました。最近になり、訪問した施設に暮らしていた方がイぺランジアホームへ転居されてきました。お話しを伺うなかで、以前暮らされていた施設へ訪問したことがあると申し上げると・・・「あなただったのか・・・日本人が来たって!」っと驚きの言葉が返り、「日本人の女性が来てくれたと皆が喜んでいたんだよ!」とその様子を聞かせてくれました。ほんの少しの訪問を喜んでいただいたことに嬉しさを覚える反面、寂しい思いをされておられることを再確認しました。日本でも課題とされている独居老人問題同様に、移民110周年を迎えるブラジル日系社会においても、高齢移民への孤立感を緩和する支援が必要不可欠な状況であることを今後も伝えていきたいと思います。

 

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ