JICA海外協力隊の世界日記

牛vaca日誌 in PARAGUAY

酪農家の決断。

普段一緒に活動を行っている酪農家さんのもとへ、新しい乳牛がやってきました。

見た目もかなりホルスタインに近い未経産牛(まだ出産を経験していない牛)で、人工授精によりジャージー牛との子供を妊娠中。

稼ぎ頭になるであろう、前途有望な女の子です。

パラグアイでは乳生産よりも肉生産が盛んです。

そのため、多くの人が所有している牛も肉用種であり、

肉用種を育てるついでにお乳のでそうな牛から牛乳を搾ろう、と酪農業を始めた人も多数。

その結果、小規模酪農家が所有している搾乳牛の大半も肉用種です。

もちろん、肉用種は肉を取るために改良されてきた種であるため、

どれだけ良い状態を保っても、その乳量はたかが知れており、

平均で1日2 ~ 5リットルほどです。

一方、今回酪農家さんが購入した牛は、

牛乳を取るために改良されてきたホルスタイン種の交雑種であり、

肉牛系3頭でようやく搾ることのできる10リットルをたった1頭で生産し、さらにそれ以上の乳量が期待できます。

酪農家さんに牛探しを頼まれ、見つけ出したこの牛の値段は4,000,000グアラニー。

ありがたいことに、もともとは5,000,000グアラニーだったものを、

「普段活動を頑張っているようだから」と1,000,000グアラニーもまけてもらえました。

この4,000,000グアラニーとは、日本円になおすと8万円ちょいと、牛1頭の値段だと考えれば高い買い物ではないかもしれません。

しかし、任地での平均月収が1,500,000グアラニーほどであることを考えると、

月収2倍以上の金額と、なかなか簡単に進む話ではありません。

そんな中、

この酪農家さんはもともと家で飼っていた肉牛種の搾乳牛を売却、

購入資金を手に入れ、購入にこぎつけました。

(新しくやってきた牛と酪農家さん)

「新しいものを購入する。」

なんて、普通のことですが、

私にとって今回の出来事は少し意味合いが違います。

自ら投資をしようとはせず、

市役所や県庁、その他関係機関に「乳牛が欲しい、牧草の種が欲しい」と頼み、もらえなければ「何も支援してくれない、もう何年も待っている」と文句ばかり言っている酪農家さんをたくさん見てきました。

このような人達もいる中で、自分から行動を起こしたこの酪農家さんには感服です。

私の帰国日が8月23日なのに対し、この牛の出産予定日は9月。

一体何リットルの牛乳を出すのか、見届けることができないのは残念ですが、

ルシーと名付けられたこの牛がたくさんの牛乳を出して、

少しでも酪農家さんの手助けになってくれれば、と願うばかりです。

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