JICA海外協力隊の世界日記

Madamadamadagascar!

マダガスカルの農家の工夫

農村部にて「抱えている問題は何?」と尋ねると、必ずと言っていいほど「お金がない」という答えが返ってくることから、配属当初より家計研修に力を入れてきました。家計研修の目的は、一年を通して収支の変動が大きい農村家庭において、家計管理に関する中長期的な計画を立ててもらうこと、また、収入源を増加させることの重要性に気付き、そのためにはどうすれば良いのか家族で話し合ってもらうことにあります。

先日家計研修を行なう過程で、とある農家の方に深く感銘を受けました。

多くの農村家庭において、支出はほぼ毎月同じようにあるものの、収入がある月は限られています。しかし彼の年間の収支状況について尋ねると、ほぼ毎月何かしらの手段を用いて必ず収入を得ているのです。また、稲作の始まる時期にはマイクロクレジットで肥料や、種子などの初期投資のためのお金を借り、収穫期にきちんと返すという計画性にもとても驚かされました。

(写真下:彼の年間収支状況を表にしたもの)

「農村部では栽培と畜産の両方が必要である。なぜなら、両者は補完し合っているからだ。
例えば、子豚を購入するために、種子を売る。
豚の餌を購入するために、鶏を売る。日々の生活費をまかなうために、牛乳を売る。
豚が大きくなったら、豚を売ってまとまったお金を作り、肥料を購入する。上記のローテーションで、1年間やりくりする。
どうしても肥料や種子を買うお金が足りないときには、マイクロクレジットでお金を借り、1年後米を収穫し、種子を販売した後に返却する。
若い頃は病気がちで体を張って仕事をすることが出来なかったから、色々な研修に参加し、頭を使って家計を回すことを考えたんだ。」
と、彼は語ります。
技術を身に着け、それを活かして一家を支えている賢さと逞しさに、ただただ感嘆しました。

(写真上:12月には自宅の桃の木に沢山の実が生り、大きな収入源となります。)

家畜の病気や自然災害などのリスクが多い農家の収入は不確実性が高く、それ故に家畜の飼育や、裏作等の収入源を増やすことはリスク分散、収入向上に貢献します。
しかし実際には、初期投資が必要であったり、やり方が分からなかったりと新しい収入源を確保することは非常に困難を伴います。

何をしようにも「お金がない」と言われ、農家の家計改善のために模索してきたけれど、はっきりとした成果が感じられなくて不安に駆られながら活動をしてきた1年半。
彼と出会ったことで、自分自身が農家にどんなマインドを持ってほしいと考えているのか、少し見えてきた気がしました。
「ないから諦める/支援を頼む」のではなく、「今自分たちの手にあるもので何が出来るか」を考える。
技術も、専門性もない未熟な私ですが、最近では、そんな知恵を持った逞しい農家が増えるよう鼓舞することが、私の役目なのではないかと感じています。

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