JICA海外協力隊の世界日記

ブータン便り

丁寧で不便な生活

Kuzuzanpola! 隊員の岩井です。

皆さん自炊してますか?ブータンに住んでいると自炊は必須です。日本であればコンビニのお弁当や牛丼チェーン店、ファストフード店などが至る所にあり自炊をしなくとも過ごすことはできますが、ブータンにはそのようなものは無いため自ずと自炊をする必要があります。

私は日本でも自炊をしていたのですが、専らカット済の野菜をスーパーで買い、あとは肉を加えてそこにカレールーを入れるか、醤油とみりんを入れて肉じゃがにするか、鍋キューブを入れるかの3択でした。カット済の野菜は非常に便利であり、その最大のメリットは時短かと思います。自分で準備する場合はスーパーの野菜コーナーで質が良い野菜を探して購入し、自宅ではまな板を出し、ピーラーで皮を剥き、芽や根を取り除き、適当なサイズに切り、食後には調理器具の後片付けがあります。カット済であればこれらの手間が一切不要です。日本で一人暮らしをしている際は何百パック買ったか見当もつかないほどお世話になりました。

しかし、ブータンではこうした便利なものは手に入りません。となると自分で野菜を切らなくてはならないのですが、疲れている時などは正直なところ切るのさえ億劫になりますし、日本のようにカット野菜があればなぁと思ったことは数知れず。
ただ、自分で野菜を切るとその過程で野菜の硬さや柔らかさ、切った瞬間に漂う野菜のほのかな香りなどを感じられます。これらはカット野菜では感じることができません。この過程は不便さを感じる時もあるものの、丁寧な時間を過ごしているなと実感します。

野菜だけでなおく米も同じような状況です。私は米を市場で購入しているのですが、屋外のため鳩がつついていたり、砂埃が付着していたり、ハエが舞っていたりと日本では想像できないような状況で売られています。なので米は必ず研ぐのですが、この過程も丁寧な時間だなと思います。日本にいた際は手間を省く目的から無洗米を買っていたのですが、米を研ぐ時間なんてせいぜい1,2分です。その1,2分を削ったところで人生に大きな変化はありません。研ぐ過程で蛇口から出る水温の変化を感じ、指が米を掻き分ける感覚や音を味わい、糠や汚れが出きった米への小さな達成感を感じます。

ブータンに住んでいると日本にいた時と比べて上記のようにカット野菜がなかったり無洗米がなかったりと不便に思う場面もありますが、それと同時に丁寧な生活を送れているなと感じることもあります。一つ一つの作業を自分の手で時間をかけて丁寧な生活を送ると五感を刺激します。そして五感の刺激こそが”生の実感”なのかもしれません。

私は便利なものを否定しませんし、日本に帰ればきっとまたお世話になります。ただ、効率化や最適化、時短に重きを置いた生活をしていると先述の五感への刺激が失われ、その先に待つのは”無機質で便利な生活”のような気がします。重ねてですが私は便利なものは否定しませんが、たまには敢えて”丁寧で不便な生活”をすることが日々の生活をより豊かにし、精神の安定にも繋がるのではないかと思います。

母国日本を外から見ると多忙極まれりといった感じです。日本に行ったことがあるブータン人と話しても街の綺麗さの次に出てくる話題は日本人の多忙さです。私も協力隊に参加する前はその多忙さの一部でしたし、帰国後にもまたそうなるかもしれません。これを読んでくれた方、そして未来の自分、便利なものにお世話になることも必要ですが、たまには丁寧で不便な生活をしてはどうでしょうか。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ