2026/10/10 Sat
隊員機関紙
ブータン隊員機関誌DRUK58⑨ ブータン料理大研究!

ブータンから毎月第2土曜日発信の隊員機関誌DRUK58号⑨!
こんにちは、看護師隊員の日髙香織です。今回は「ブータン料理大研究!」をテーマに、ブータンで暮らし、旅をする中で出会った食について綴っていきたいと思います。
編集上の調整により、当初予定していた「ブータン人の実生活調査②(地方編)」は次号に掲載いたします。
ブータン料理といえば、唐辛子とチーズをたっぷり使った「エマ・ダツィ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ブータンの食事に唐辛子は欠かせません。食卓には「エゼ」と呼ばれる唐辛子のペーストが並ぶことも多く、今では私もすっかり、自分からエゼを取りに行くようになりました。
でも、ブータンで暮らしていると、ガイドブックには載っていないような料理にもたくさん出会います。今回は、そんな私がブータンで出会った、さまざまな「食」をご紹介します。
伝統的な食器「ダパ」に盛られたブータン料理
グレーの丸いものはそば粉のパンケーキ ブータンではそばもよく食べられています
遊牧民ブロクパの食(メラ・サクテン)
東部のタシガンからさらに山道を進んだところにあるメラ・サクテン。ここには、遊牧民であるブロクパの人々が暮らしています。
メラのお正月に訪れた際、出会ったご家庭で、まずは「コロッパ」という、積んだ石に石を当てて倒すゲームに参加させてもらいました。そのまま「ごはんも食べていきなさい」と招いていただき、ランチをごちそうに。そこで出てきたのが、Gentiana(ゲンチアナ)という苦みのある花を使ったスープでした。乾燥させた花をお湯で戻してから調理するそうです。花も分けていただき、私も自宅でスープにしてみました。
その後、シャクナゲのお祭りで再びメラを訪れました。ガイドさんのご両親がブロクパというご縁で、ヤクの放牧地にある山小屋でランチをごちそうになったのですが、そこでも同じ花を使ったスープが出てきました。メラでは身近な山の恵みとして食べられているのだと感じました。
メラのお正月でごちそうになったランチ
メラでいただいたGentiana(ゲンチアナ)の乾燥させた花
メラでは、ヤクの肉もいただきました。ヤクはブロクパの人々の暮らしに欠かせない存在で、とても貴重なものです。ヤクとともに暮らす人々の食卓でいただいたからこそ、さらに特別なものに感じました。![]()
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ヤクのお肉と、Gentiana(ゲンチアナ)のスープ
4,000m超のトレッキングの食
4,000mを軽く超える山々をテント泊しながら歩くトレッキング。ガイドにポータ、荷物を運んでくれる馬と馬使い、そしてパーティーに欠かせないのが「シェフ」です。
一日歩き疲れてキャンプ地に到着すると、私たちより後に出発したのに、シェフと馬たちは先に到着しています。すでにテントが張られ、温かいミルクティー出迎えてくれます。
昼食は保温容器に入れて運ばれ、夕食も毎回違う料理を作ってくれます。
先日出かけたトレッキングでは、標高4,550mのヤクの放牧地にあるビニールシートで覆われた簡素な小屋の中で、バターを作っているところを見ることができました。ブータンでは、木の筒のような容器にミルクを入れ、ついて攪拌させながらバターを作っていたそうです。ところが、標高4550mの放牧地で使われていたのがなんと手動の機械!専用の機械にミルクを入れ、ハンドルを回しながらカードとバターを分離させていて、以前のように長時間ミルクを攪拌させる必要がないそうです!そんな画期的なバター作りが、4,550mの山の中でも行われていることに驚きました。
専用の機械でミルクをバターとカードに分離
また、チュゴと呼ばれる乾燥チーズを作っているところもみることができました。チュゴはブータンの首都ティンプーの市場や、路上の売店でもよく目にする、ブータン人が大好きな食べのもの一つです。まさかこんな高地でチュゴを作っているところに遭遇できるとは!チーズの塊をひもに通してヤク小屋の軒先に吊るして乾燥させていました。普段、街の市場や売店で何気なく見ているチュゴが、こんな場所で、こんな風に作られているのだと思うと、とても興味深い光景でした。
一つ一つ丁寧にひもに通していきます
標高4550mのヤク小屋の軒先につるされているチュゴ
そして、山の中だからといって食事が簡素とは限りません。というよりは、普段の私の食事よりも何十倍も豪華(笑)。朝から小麦粉をこね、レスキュー用に持ってきた酸素缶で生地を伸ばし、ナンやチャパティのようなもの焼いてくれたこともありました。どの料理も本当にびっくりするくらいおいしいんです。
一日歩いた体へのエネルギーチャージになるのはもちろん、「今日は何を作ってくれるのかな」と、食事もトレッキング中の楽しみの一つ。標高の高い大自然の中でいただく温かくておいしいごはんは、疲れた体を満たしてくれるだけでなく、心までほっとさせてくれます。
焼きたてのナン、ミルクティーとダツィーとともに
毎食、おかずはバラエティに富んでいます
生地から作って蒸しあげたティンモモ(肉まんの皮のようなもの)とおかずたち
私の好きな料理の一つ、バトゥップ
私の好きな料理の一つが「バトゥップ」です。日本の麺料理にも少し通じるようなところがあり、平たい麺だったり、短く切った麺だったり、形はいろいろ。スープもおいしく、温かくて、どこかほっとする味です。
そんなバトゥップを、先日のトレッキングでも作ってもらいました。
トレッキング4日目、その日は4877mの峠を越え、一日中歩き続けていました。そこで「軽めで、胃に優しい夕食が食べたい」とシェフにお願いしました。すると、作ってくれたのがバトゥップでした。
標高4,100mのキャンプ地で、小麦粉をこねて麺を作るところから始まります。今回の麺は、いつものバトゥップとは少し違い、イタリア料理のニョッキのような形。一つひとつ手作りされた麺がスープに入り、温かい夕食になりました。
高地で食べる手作りのバトゥップ。峠を越えて疲れた体にやさしく、いつも以上においしく感じました。
標高4100mで作ってくれたバトゥップ
ニョッキのような形 優しいお味
お店でいただいたバトゥップたち お店によって麺の形は様々
道端の焼きトウモロコシ
夏になると、道沿いのあちこちでトウモロコシを焼いて売っています。皮をむいて、その場で焼いているので、ブータンの方は新鮮なものをちゃんと見てから買います。
日本の甘くてジューシーなトウモロコシとは違い、甘みもかなり控えめ、少しモソモソっとしていますが、それでも、なぜか食べ始めると止まりません。
ドライバーさんに教えてもらった、ライムを絞って塩をかける食べ方を試してみると、これがおいしい!そのまま食べるよりも、ぐっと食べやすくなります。見かけると、つい気になってしまう存在です。
旅先で頼りになるKOKA
地方を旅していると、いわゆる「レストラン」がない場所もあります。道路沿いの簡素な食堂に入っても、KOKAならある!
KOKAはシンガポールのインスタントラーメン。野菜や卵を加えてくれるなど、お店によってちょっとずつアレンジされていて食べ比べするのも面白いです。
普段はインスタントラーメンをほとんど食べない私ですが、なぜか旅先では食べたくなってしまう。知らない土地で食べるKOKAは、ちょっとした旅の楽しみの一つです。
左:チーズがトッピング、チャナ(ひよこ豆)入り 右:卵がトッピング、野菜たっぷり
ピクニックや職場ランチの持ち寄り・シェア
そしてブータン人との食事で欠かせないのが、シェアすること。
ブータン人とのピクニックやハイキング、職場のランチでは、一人一品ずつ持ち寄ってシェアしていただくことがよくあります。ピクニックでは、大きな鍋を持参し、薪を集め、みんなで野菜や肉を切って料理することも。料理をする人、ゲームをする人、食べる人……みんなで一緒に楽しみます。暖かいミルクティーやバター茶も欠かせません。
病院に届けられる温かい食事
私は医療隊員として病院で活動しているのですが、病院では患者さんや付き添いの家族に無料の給食が提供されています。それとは別に、親戚や友人が大きな保温容器やティーポットを持って、食事の時間に温かいごはんやお茶を届けに来る姿をよく見かけます。「温かいものを食べてもらいたい」という気持ちも、ブータンの食文化の一つなのかもしれません。
こうして振り返ってみると、私がブータンで出会った「食」は、料理そのものだけではありません。山で待っていてくれる温かいごはん、知らない私を招いてくれた家庭の食卓、季節になると道端で売られる焼きトウモロコシ、そしてみんなで持ち寄って分け合う食事。
ブータン料理大研究、まだまだ研究は続きそうです。
次回のテーマは「ブータン人の実生活調査②(地方編)」です。お楽しみに!
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