JICA海外協力隊の世界日記

ボリビア便り

#246 「作業療法を広めたい」―ボリビアで感じる作業療法の現在地【作業療法士/猪谷】

こんにちは!

3回目の執筆となる世界日記です。今回は、私の活動と、活動を通して感じているボリビアの作業療法について書きたいと思います。

「作業療法を広めたい」

まずは、この一言に尽きます。

ボリビアの作業療法士・言語聴覚士の養成は、約15年前、日本の援助のもとで始まりました。その最初の養成校が、現在の私の活動先でもあるラパス県のUniversidad Mayor de San Andrés(サン・アンドレス大学、以下UMSA)です。そのような背景もあり、大学内でのJICAの知名度はとても高く、「voluntaria de JICA(JICAのボランティア)」と言うと、みんなすぐに分かってくれます。これは素直に嬉しいです!笑

まだ15年ほどと歴史が浅く、すべての病院やリハビリテーション施設に作業療法士がいるわけではありません。そのため、作業療法そのものの認知度もまだ低いのが現状です。

また、UMSAの作業療法学科は1学年5〜10人程度と非常に少人数です。加えて、現在ボリビア国内で作業療法士を養成している大学はUMSAのみのため、毎年誕生する作業療法士もわずか5〜10人ほどということになります。日本では毎年約7,000人が作業療法士の国家試験に合格していることを考えると、その差の大きさに驚かされます。

一方で、ボリビアの作業療法教育には素晴らしいところがたくさんあります。私が特に感じているのは、大きく2つです。

一つ目は、実習時間の多さです。

ボリビアでは作業療法士になるための国家試験はありませんが、大学は5年制です。最終学年では、2か月ごとの実習を年間を通して行い、1年間ほぼすべてを臨床実習に費やします。

さらに、1年生の頃から最低でも週に1回程度は実習の機会があります。授業の中でも先生が「小児領域の実習に行っている人は、ここを確認してみてね」と声をかけるなど、授業で学ぶ知識と臨床経験を結びつける機会が多く設けられています。

実習分野も、精神・高齢者・身体・小児など幅広い領域を経験できるようです。学生のうちにさまざまな分野を経験しながら、自分が将来どの領域に進みたいのかをじっくり考えられるのは、とても魅力的だと感じます。

二つ目は、授業の実践性です。

私は現在、成人領域と小児領域の授業に参加しています。どちらも症例検討や、実際の症例に対してどのようなアクティビティを行うかを考えるなど、臨床に即した内容が多いと感じています。

また、スペインをはじめとした海外の先生から、手外科などの授業を受ける機会もあります。こうした場面に出会うと、改めて「言語を学ぶ」ということは、単に人と話すためだけではなく、さまざまな国の知識や考え方、方法を学ぶための手段でもあるのだと感じます。日本語を母語とする私からすると、少しうらやましくもあります。

現在、ボリビアのリハビリテーション領域では、理学療法士や心理士が中心となっているように感じます。他施設を見学させてもらった際には、心理士がマット運動を担当している場面を見ることもありました。作業療法士が少ない分、他職種が担う領域が非常に広いことを学びました。特に理学療法士の養成課程には、作業療法概論にあたる内容も大学のプログラムに含まれているようです。

作業療法士がいなくても、他職種がその役割の一部を担うことで「なんとかなっている」現状がある。だからこそ、作業療法士の認知度や人数がなかなか増えていかないのだろうか、と考えることがあります。

一方で、実際に学生や先生たちと関わっていると、作業療法教育そのものには多くの強みがあります。だからこそ、まずは「作業療法士が何をする専門職なのか」をより多くの人に知ってもらうことが、大きな課題の一つなのではないかと感じています。

そして、活動をする中でもう一つ課題だと感じているのが、「評価」です。

日本で作業療法士として働いていたとき、私は評価を丁寧に行うことの重要性を繰り返し学びました。なぜなら、適切な評価なしにはその人に合った適切なリハビリテーションを考えることができないからです。

一方、こちらでは「どのような活動を提供するか」に重きが置かれ、「なぜこの人に、この活動が必要なのか」という部分については、十分に検討されていないように感じる場面があります。それは、患者さん一人ひとりに合わせた個別性の部分だけでなく、実習生に課される課題の内容などからも感じています。また、病院で働いていた頃には、脳画像を含めた医学的情報を確認することの重要性も学びました。しかし、こちらではカルテの記載が十分でないことや、脳画像がリハビリテーション部門に共有されないまま介入が始まることもあります。また、CTは撮影できてもMRIは利用できないなど、医療資源そのものに制約がある場合もあります。

そのため、「評価を大切にしたい」と思っても、そもそも必要な情報を集める段階から難しさがあることも、ここで活動して初めて実感しました。日本で当たり前だと思っていた「評価できる環境」そのものが、決して当たり前ではないことを学んでいます。

最後に、

ボリビアに来て、あっという間にもうすぐ1年が経とうとしています。

作業療法士の人数を増やすことも、作業療法の認知度を上げることも、教育や臨床のあり方を変えることも、私一人が短い期間で大きく変えられることではありません。だからこそ、今の自分にできることを日々考えています。

学生と一緒に「なぜこの評価をするのか」を考えること。

一つの症例について、「なぜこの活動を選ぶのか」を話し合うこと。

そして、作業療法の面白さや可能性を、一人でも多くの人に知ってもらうこと。

大きなことをいきなり変えるのは難しいけれど、小さなことを一つずつ積み重ねていきたいと思います。そして任期を終えるとき、ほんの少しでも「作業療法って面白い」「作業療法士って必要だな」と思ってくれる人が増えていたら嬉しいです。

文責 猪谷あま美(2025年度2次隊/作業療法士/ラパス県ラパス市)

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