JICA海外協力隊の世界日記

ボリビア便り

#234 青空市場の八百屋さん【理学療法士/竹下】

みなさん、こんにちは。コチャバンバ市に派遣されている理学療法士の竹下です。今回は、私がいつも通っている市場について紹介します。毎週土曜日、うちの近所で青空市場が開かれます。農産物の他、日用品、工芸品、観葉植物、ペット(インコやウーパールーパ―など)まで取り扱われています。ボリビアは日本ほど明確に季節が分かれていませんが、年中市場に通っていると時期によって旬の作物が入れ替わり、季節の移り変わりに気づきます。イチゴやスイカ、パイナップル、バナナなど一年中売っている果物もありますが、桃は夏、柿は秋、ミカンは冬、と季節と旬の果物は日本と同じであることが分かります。

その中で、行きつけの八百屋さんがあります。1年半以上通っているので、今回の日記を書くにあたり、八百屋さんについて掘り下げてみました。

写真2.png店主はアンパロさん、野菜を売って25年になります。もともと母親がこの仕事をやっていて引き継ぐ形になりました。が、実は“子供の頃は看護師に憧れていたんだけどね。。”と少し切なさそうに教えてくれました。仕事は月曜から土曜、朝4時から夜7時までで、日曜日は家事をして過ごしているそうです。彼女は早起きが好きじゃないので、仕入れのために朝34時ごろから動き出さなければならないのが一番大変。でも、大好きな野菜を扱っているので、そこは楽しいと。中でもブロッコリー(味が独特だから)が好きだそうです。この仕事をする上で大切にしていることは、お客さんへのホスピタリティです。欲しい品物が彼女の店にないと、他の店から持ってきてくれます。店同士の競争意識がないので、そのような対応はボリビアでは一般的ですが、やはりお客さんへの心配りでやってくれていたのだと知りました。また、袋詰めのカット野菜が売っているのも彼女の店の特徴で、ここでもお客目線で商売していることが分かります。

店頭の価格は仕入れ値に3%の儲けを見込んで設定しており、土曜日一日の売り上げは大体500600Bsとのこと。仕入れ。仕入れと言えば、彼女はどんなところで野菜を仕入れているのでしょう?

ここはコチャバンバ市内の中心にあるトライアングロ市場。普段見ている市場とは、明らかに雰囲気が違います。6月中旬、朝6時。日の出前で寒い(気温3)ので、店主たちは身を丸めて動きを最小限にとどめ、覇気のない声で呼び込みをしています。ここでは店主のホスピタリティより品物の質がものをいいます。“他にも卸市場はあるけど、箱買いしなければならない時もあって、その場合、品物一つひとつを確認できない。その点、この市場では1個ずつ吟味して品物を選ぶことができるからここで仕入れているよ”と、アンパロさんはプロバイヤーの顔を覗かせます。

余談になりますが卸市場の特徴として、重さの単位にkgは使われていません。Cuartilla(クアルティージャ)を一つの単位として価格設定がされます。1cuartillaArroba(アロバ)4分の1の重さで、Arrobaは昔からスペインやポルトガル、中南米にて農産物の重さを量る際に用いられる単位です。アットマーク記号“@”は、Arrobaの略号なので、ある意味私たちにも馴染みのある単位です。国や農産物によって1@の定義は異なるそうですが、ボリビアの青果市場では1@=11.5kgなので、1cuartilla2.875kgということになります。


さて、青空市場に戻ります。この市場は朝6時~午後2時まで開催しており、現在時刻午後2時半。そろそろ店じまいです。

野菜たちを大事に梱包して、ここから2ブロックほど西にあるCALA CALA市場にタクシーで運びます。CALA CALA市場とは常設の市場で、普段彼女はその一画に店を構えています。

そして最後に、私が一番気になっていたことを尋ねました。

私「売れ残って古くなった野菜はどうするの?」

ア「家に持って帰って、自分たちで食べるよ」

おぉ!!売れ残ったら躊躇なく捨てているのかと思っていましたが、さすがにそれはないかと胸を撫でおろしました。しかし、人が一日に食べる量も限界があります。食材も自然の摂理で傷んでいきます。傷んで食べられないものは、やはり廃棄でしょう。ボリビアで暮らしていて当初から持っていた印象、それは人口に対して食べ物の量が多いということです。市場の農産物を始めケーキやアイス、飲食店のメニュー、十分すぎる量が陳列されています。見栄えはいいけど、全てが人のお腹に収まるのは不可能だろうと感じます。街中を栄養状態のよさそうな野良犬たちが闊歩しているのも、人間が食べきれなかった物が犬の胃袋に収まっている証拠でしょう。先日、ある飲食店の店主が、美味しそうな鶏もも肉を店の前でくつろいでいた野良犬の口元に持っていったところ、「いらん。」とそっぽを向いていました。野良なのにそんなお腹いっぱいな時あるんだ?笑

農作物は廃棄になってもいずれ土に還るからまだいいかもしれません。しかし、食料品に限らず日用品や服など消費量に対して圧倒的に供給量が多い印象です。ボリビアのゴミは、以前は焼却処分でしたが大気汚染の問題以降、土に還らない無機物も含めてほぼ埋め立てており、ゴミ問題はこの国で解決すべき優先課題の一つとなっています。ゴミの量を減らすために日本のように分別をしっかりして、環境に配慮した処分システムの確立が求められます。しかし、生産量の調節はどうでしょうか。日本もその点では先進的とは言えません。人口が減少に転じているにもかかわらず、生産量は従来と変わらないのではないでしょうか。むしろ価格を下げるために大量生産を続けている企業も多く、その恩恵を受けている方も少なからずいると思います。かく言う私も例外ではありません。日本で売れなかった古着の一部がどこに行くかご存じでしょうか。途上国に輸出され、一度はその国内で売りに出されますが、売れないものは廃棄。量があり過ぎて埋め立てるというより、ゴミの山をさらに高くしているような状況です。もはやゴミは各国ごとの問題ではありません。先進国によって生産され売れ残ったものが途上国へゴミとして流れているのです。ゴミの処分にいくら注力しても、大元の生産を見直さなければこの課題が解決に向かうのは難しいと、コチャバンバの市場からそんなことを思いました。

写真5.jpg最後に、

アンパロさんに何歳まで働くつもりか尋ねてみると、75歳になったらお家でゆっくりしようかなということでした。長年苦手な早起きを頑張ってきているので、引退後は、ゆっくり朝寝坊してお子さんたちと過ごしてほしいと思います。お話きかせてもらってありがとうございました。

文責 竹下 知慶(2024年度2次隊/理学療法士/コチャバンバ県コチャバンバ市)

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