JICA海外協力隊の世界日記

ボツワナ便り

悪魔を追い払って幸せに生きる

Dumela! こんにちは、レタケン村で環境教育隊員として活動している長岡早苗です。

ボツワナでの生活も1年9ヵ月が過ぎ、活動も残りわずかとなりました。

ボツワナでの生活の中で、「ボツワナの人って自己肯定感が高いな」、「ボツワナの人って毎日ご機嫌に生きているな」と感じることが多々あります。

その理由が理解できた出来事があったので皆さんにお伝えします。

これを読めば皆さんもボツワナ人のように毎日ハッピーに生きられること間違いありません(笑)。

突然ですが皆さん、虫は得意ですか?

私は大変苦手です。特にゴキ〇〇というデカい虫が本当に苦手です。

常日頃から、「ゴキ〇〇が嫌だ、嫌い、出たらどうしよう」、という話をボツワナ人の同僚によくしていました。

また、「夏が来るのが本当に嫌だ、暑くて眠れない」、「雷の音が大きくて怖い、眠れない、家に雷が落ちたらどうしよう」という話もよくします。

ある時、家の屋根の方から、「タタタタタッ」という何かが走る音が聞こえました。家の外に出て屋根の上を確認しても何もいません。毎日頻繁に聞こえるようになり、私は「屋根の中にネズミがいるんじゃないか、壁をかじってでてきたらどうしよう」と不安になり眠れなくなりました。

その話をいつものように同僚にした際、マダム世代の女性の同僚3人から口々に「怖いならお祈りしなさい。不安になるのは悪魔のせいなんだから神様にお祈りしなさい。」と言われました。ツワナ語で悪魔はMoloi、魔女はBoloiです。

最初は、なぜネズミの話をしているのに悪魔の話が出てくるんだと理解できずにいました。

その後、大家さんに屋根の中を確認してもらおうと電話をかけ、同僚が私の代わりに大家さんと話してくれたのですが、笑いながら「早苗はBoloiだから~~」と始まり、最後に「 Ga go na mathata(問題ありません)」と言って電話を切りました。

大家さんとの電話でも悪魔の話がでてきて、屋根を見に来てくれる話はしてくれませんでした。

悪魔の話が理解できなかったのでその意味を聞いてみると、「早苗は怖い時、不安な時にお祈りしないの?怖いなら、寝る前や起きた時、一日に何回もお祈りしなさい。そうすれば怖くなくなるから。あなたが不安な気持ちになるのは悪魔のせいなの。悪魔があなたの中に入って不安にさせている。だから神様にたくさんお祈りして神様の力をもらって悪魔を追い払わなくちゃ。神様に守ってもらわなきゃいけない。」ということを言われました。

さらに続けて、「早苗はネズミが怖いとか雷が怖いとか言うけど、遠い日本からボツワナに来ただけでもとても強い女性なの!私は怖くて飛行機なんて乗れないよ。あなたは強いんだから、悪魔に人生を邪魔される必要はないの!神様にお祈りしなさい。そうすればあなたは安全、安心、強くなれるの。」と言われました。

ボツワナの人が毎日ご機嫌に過ごしている理由がわかった瞬間でした。ボツワナでは学校の朝会や職場での会議の前など、様々な場面でお祈りをします。さらに日曜日は教会に行く人も多く、神様にお祈りすることはボツワナ人の生活に欠かせないことです。

子どもがけんかしていたり、ひどいことを言う人がいたら、あれは悪魔がついているからけんかしたりひどいことを言うと考えるそうです。そして、神様に守ってもらっているから人から言われたひどい言葉で自分の楽しい人生を邪魔されずに生きられる。お祈りして神様に守ってもらっているからボツワナの人は「私は安全、私は強い」と信じて人生を堂々と楽しく生きているんだなと思いました。

お祈りしたってネズミはいなくならないじゃん……とも思いましたが、そうではなく、そんなネズミや虫や暑さ、雷のような些細なことで不安になり、楽しい人生を邪魔されてはならないのです。

心配してもしなくても夏の暑さは変わらない、憂いていても虫がたくさん出るのは変わらない、であれば心配しないで楽しく生きたほうがよい。

日本人はつい先の先のことまで考え、心配してしまいがちですが、心配ごとの9割は起こらないといいますよね。「何も心配せずに人生を楽しむ」日本人の私には難しいように思えますが、ボツワナの人の考え方はとても理にかなっているなと腑に落ちました。

ボツワナ人とともに活動していると日本人からみたら問題だらけに思えることもボツワナ人は「Ga go na mathata(問題ないよ、大丈夫だよ)」とよく言います。最近では起こってもいないことをあれこれ心配するよりも大丈夫、大丈夫と言っているボツワナ人の考え方もいいなと思うようになりました。

明日は月曜日だと憂鬱になるのではなく、日曜日の夜を最後まで楽しむ。だからボツワナ人は日曜日の夜遅くまで音楽を流しダンスを楽しむんだなと理解しました。

きっと同僚たちには「早苗は悪魔に不安にさせられて、屋根の音や虫なんて些細なことに悩んで人生を楽しめていない人」と呆れられていたのだなと思います。

協力隊としての活動を終えた後は、常に先の先の先のことを考える日本社会に戻ると思いますが、たまにはボツワナ人の「Ga go na mathata」な生き方を思い出して今を楽しみたいと思います。

皆さんは悪魔に不安にさせられずに今を楽しんでいますか?

【追記】

ちなみに後日、屋根の音はネズミではなく屋根の上でハトが走る音だとわかり、安眠できるようになりました(笑)。

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