2025/10/27 Mon
活動
ボツワナ流の仕事術

ドゥメラ!トノタ村でコミュニティ開発隊員として活動している井上です。私は県庁の地域開発課に所属しており、活動のなかで、コミュニティ向けのワークショップやイベントに参加したり、自ら企画したりしています。
赴任して1年半。
今回はボツワナの行政機関で働くなかで感じた「ボツワナ流の仕事術」を紹介します。
①形式主義、でも実際は口頭が大事!
ボツワナには「レター(公文書)文化」があります。仕事上で、関係部署に何かを依頼するとき、誰かを招待するとき、モノを調達するとき、サインとハンコ付きのレターが必要です。
この紙ベースの運用、いつも一筋縄ではいきません。「停電でパソコンがつかない」「インクがない」「プリンターが壊れている」「サインする人はランチ中」など...。いつも何かしらの問題に見舞われています。同僚に「なぜそんなにレターが大事なの?」と尋ねると、「責任の所在を明確にするため」という答えが返ってきました。たしかに、何か起こったときに「証拠」として残るのは重要です。
でも実のところ、「レターを出したから安心」というわけでもありません。
先日、ワークショップの会場を確保するためにレターを作成し、正式に承認をもらったのですが...当日行ってみると、まさかのトリプルブッキング!(笑)つまりレターを書くだけじゃダメ!実際に大事なのはやはり口頭での確認とコミュニケーションなのだと学びました。

②関係づくりが肝
実際に物事を動かすには、人との関係づくりが欠かせません。行政は基本的にトップダウンの組織で、上司や発言力のある人が「やろう」と言えば一気に進みます。逆に、その人たちとの信頼関係がなければ、どんなに良い企画でも前に進みません。
周囲を巻き込むことに関しては、これまで本当に多くの苦労をしてきました。ひとつのワークショップを開催するのに数ヶ月かかったこともあれば、半年かけて準備した企画がなくなってしまったこともあります。
また村では行政機関だけでなく、Kgosi(コシ)と呼ばれる村長の存在も大きいです。特にコミュニティ関連の案件では、村長の協力が鍵を握ります。「誰に話をしておくか」は仕事のスピードを左右すると実感しています。

③計画と実行は別物
そして、やっと実行!...となっても直前の延期や変更は日常茶飯事です。日程や開催場所、段取りなど、当初の計画通りに進むことはほとんどありません。
また、「行くよ!」と言っていたワークショップの参加者が来ないこともしばしば。当初はそれにストレスを感じていましたが、今では「焦っても仕方ない」と思えるようになりました。なぜなら、遅刻やドタキャンは全てが彼らの怠慢ではなく、生活インフラの不安定さも背景にあるということがわかってきたからです。水・電気・交通などが計画通りに動かないなかで、「今日は晴れたから種蒔きをする」「雨で道が悪いから行かない」といった判断は、ある意味で自然なことなのです。
行動の裏にある人の心理や環境を理解できるようになってきたのは、現地で生活しているからこそ。こうした日々の奮闘は、旅行では味わえない貴重な経験だと感じます。柔軟さと人とのつながりを大切にしながら、引き続きボツワナでの生活を楽しんでいきたいと思います。
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