2026/10/20 Tue
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コロンビアの資源回収型農業

―コロンビアと日本の農業。
現地でこの2つを比較してみると、非常に興味深いことが分かりました。当然ながら、日本で生活している限り、コロンビアの農業について想いを馳せる事は多くありません。
実際、私自身もそうでした。例えばコーヒー、チョコレート。例えばカーネーション。これら、コロンビア産の農産物及び花卉は、日本のマーケットにも広く販売されています。
しかしながら、私たち日本人にとっては、どちらかと言うと、KALDIのような輸入食料品で並ぶ、数多く存在する品目・原産国の一つ、つまり「One of them」のような印象の方が強いのではないかと思います。
コロンビアに来てみて、まず私が感じたことは、意外に思われる事かも知れませんが、「小規模面積の農家が多いな」という事でした。
私自身がコロンビアに赴任する前に想像していた中南米の農業というのは、広大な土地を利用して、小麦やトウモロコシを育てる大規模集約型の農業です。より具体的に言うと、日本の北海道の農業を数十倍~数百倍にスケールアップした農業を想像していました。おそらく、隣国のブラジルなどが、そのような農業を取っていて、数百~数千ヘクタールの土地で、大豆なら大豆、小麦なら小麦のような形で一品目に絞って、栽培する体系です。
コロンビアにもそのような大規模型農業がないわけではありません。ただ、私が赴任したアンティオキア県カルダス市は、元々、アンデス山脈のような山と谷に囲まれた地形で、農業を行う土地も、まず「傾斜のある土地」という前提条件で成り立っています。それは、日本の中山間地の農業、具体的には東北や信州・北陸の農業がイメージに近いかもしれません。

さて、私の活動先である国立職業訓練校(通称SENA)は、日本の農業大学校のような専門校なのですが、ここでは特に、資源回収・資源循環を意識した農業をメインに行っています。
先ほど申し上げた通り、アンティオキアは傾斜のある地形が農業の前提ですので、トラクタ-を動かして敷地全体の畑を大規模に耕す、というような様式は、ここではあまり行っていません。
“行っていない”わけではないのですが、上の写真のような畑が敷地内各地に点在しているので、トラクタ-が入ると逆に出し入れに手間がかかってしまうのが実情です。
実を言いますと、私自身がこれらの畑を最初に観た時の第一印象は、とても「非効率なこと」をやっているな、というのが印象で(配属先の先生方、すみません)。例えば、一つの区画・敷地を使うのであれば、フリホル(インゲン豆)やトウモロコシ、ジャガイモなど、一品目に絞って管理すれば、肥料や農薬の散布や、除草作業などももっと簡便に、最小の手間で済むのに、こちらではあまり、そのような作付け様式は取りません。
むしろ、一つの区画の中にも長ネギ・大根・レタスを一緒に育てる、つまり混色栽培のような形を取ることが多いです。また、もう一つ興味深いのが、配属先では、普通に化成肥料を使った慣行農法と、堆肥のみを使用する有機農法、そして肥料も農薬も一切使用しないリジェネラティブ農法(生態系農法)を、それぞれ別の場所で同時並行的にやっていて。
私自身は、どんな農法でも収穫物の味や品質は変わらないと思っているので、なぜそのような事をわざわざしているのか、不思議に感じていました。ふとした空き時間に、「なんでこんな事をやっているの?」と同僚の先生に聞いてみると、曰く、要は色んな手法の農法がある事を教える方が、生徒達の理解も深まるし、いざという時のリスク分散にも繋がるとか。
うーむ、なるほど。この一見、遠回りで方向性があまり定まってないようにも見える作付け様式にも、それなりの理由があるのだな、と考えさせられた次第でした。

また、興味深かったのが、配属先の「堆肥生産」です。実は、コロンビアの国・生産者・消費者たちにとっては「収穫残渣の廃棄物をどのように有効活用していくか?」というのが、今、一つの大きなテーマになっています。
コロンビア政府が2019年に発表した施策の一つに、”Estrategia Nacional de Economía Circular de Colombia(コロンビア国家循環資源戦略)”というものがあり、農作物の収穫残渣や家畜ふん尿、食品残渣などの生ごみなどを堆肥・バイオエタノールとして積極的に利用する、そして、2030年までに残余バイオマスの利用率を基準値比20%増加させる、という数値目標が掲げられています。
実際、私の配属先も国の職業訓練校であるため、この施策の影響を強く受けているのか、作物生産と同時に、堆肥生産にはかなりの力を入れていました。
堆肥の作り方は、日本の「ぼかし堆肥」の作り方と基本的には一緒で、家畜の糞と作物の収穫残渣を混ぜて、微生物の種液・糖蜜などを加えます。それを一週間おきに切り返して、計8週間で完成。堆肥はふるいにかけて、粒度を均一にして、袋詰めします。
配属先で生産した堆肥は、自分達で使うだけでなく、窒素・リン酸・加里がある程度保証された有機肥料として、地域の生産者さん達に販売しています。
私は、元々肥料を生業にして生きてきた人間なので、なんだかその地域で取れる天然の肥料を創っている気持ちで、実習生の子達と有機残渣を集めたり、堆肥の切り返しをしたりする時間が、とても楽しく嬉しいです。
なぜ、コロンビアの人達はこれほどまでに「資源回収」に拘るのだろう、と考えた時、私は大きく分けて3つの理由があるのかなと考えています。
理由①:コーヒー・バナナ・サトウキビなど、バイオマスの大きい作物の有機残渣を再利用したい。
理由②:窒素・リン酸・加里などの肥料原料の殆どを海外からの輸入に依存している。
理由③:アンデス山脈をはじめ、国内は起伏の激しい地形のため、貨物の輸送など物流にかかる負担が大きい。
以上、これら3つの理由がこの国の「資源回収型農業」を形作る基盤のようなものになっているのかなと考えました。
これらの要因を私たちの国、日本と比較してみると、コロンビアと日本の農業は、違いもあれば共通点も多くあると分かります。
特に、肥料資源の確保やバイオマス残渣の再利用などのテーマは、コロンビアも日本も、他国に資源を依存しているからこそ、今まさに同じベクトルを向いているように感じます。
コロンビアに来れて、本当に良かったです。まだ、活動を振り返るには早いですが、コロンビアの農業を知るたびに、私自身はまだ農業について何も知らないという事を知れました。協力隊の任期が終わり、日本に帰国したら、私はこのコロンビアで出会った「資源回収型農業」をより深く探求する道、もしくは多くの方々に知ってもらう活動を、私自身が発起人のような形で取り組みたいと思っています。
私は、有機農法が非効率でだめだとも、化学肥料を使った慣行農法が悪いとも思いません。
また、農業資材のインプットを一切使わない自然農法が良いとも悪いとも思いません。
誰かの農業を否定したくないし、誰かの想いを否定したくない。
誰かのことを否定せず肯定もせず、ただ、耳を傾けること。
そうすれば、私たちの世界は、ミクロな日常から、マクロな社会まで、より良い場所になるのではないかと想います。
本記事を読んでいただき、ありがとうございました。
皆様の普段のご活動、そして生活がより彩とご縁のあるものになる事を、心から願っています。
2024年度3次隊・土壌肥料・コロンビア
佐藤博友
参考文献
・World Bank,Colombia Fertilizers imports by country in 2022: Colombia Fertilizers imports by country | 2022 | Data
・OECD Economic Surveys: Colombia 2019: Boosting exports and integration into the world economy: OECD Economic Surveys: Colombia 2019 | OECD
・Estrategia Nacional de Economía Circular: Estrategia Nacional de Economía Circular | Ministerio de Ambiente y Desarrollo Sostenible
・Flujo de Biomasa: Flujo de Biomasa – Economía Circular
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