JICA海外協力隊の世界日記

マラウイ便り

あらためて考えさせられる、命について

名 前:上山 結子
隊 次:2023-1
職 種:看護師
配属先:サリマ県病院
出身地:兵庫県

アフリカ・マラウイに来て現在10か月が過ぎました。昨年9月に約1か月間のカムズセントラル病院での研修を終え、同年10月から看護師としてサリマ県病院のNCDs外来で活動しています。
マラウイに来て最初に過ごした首都では気付かなかったこと、サリマに来て、強く感じたことについてご報告します。
私の暮らしているサリマは、マラウイでは人口8番目ぐらいの街で、近くにセンガベイという観光地もあることから、それなりの賑わいのある街だと感じています。首都でしか手に入らない物がある街がたくさんある中、比較的なんでも手に入る街です。そんな街ですが、街にはたくさんのヤギ・牛・鶏がいて、ヤギと鶏に至ってはどこでも見ることができます。ヤギは当然、放牧されている牛でさえ病院に入ってくるような環境です。首都のリロングエではそのような光景を見ることはありませんでした。私は動物が大好きで、アフリカを任地に選んだ理由の一つは動物を見ることができることでした。実際、当然のことながら野生動物は保護されていて、どこでも見ることができるというわけではありませんでした。それでも、出勤途中などに街で見るヤギ・子ヤギや鶏・ヒヨコなどを本当にかわいらしいと思ってはじめは見ていました。
でも、それは当然のことながら全部食料なのです。

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ふわふわのヒヨコたち

私は鶏肉が大好きです。今でも、毎週スーパーマーケットで鶏肉を購入して食べています。マラウイに来て、ヤギを食べる機会もありました。とてもおいしいです。毎日、かわいいと思いながら見ている動物たちを食べているわけです。それについて、本当に心がざわつきました。肉を食べるということは、日本でも何も変わらない行動ですが、目の前にいて、かわいいと思っている動物を自分が食べているのだということを受け止めるのは、今でも心がざわつきます。ヤギや、豚が自転車の荷台に貼り付けのように乗せられて運ばれている姿や、鶏が足を持たれて逆さずりに運ばれていく姿は本当に心が痛みます。でも、私はそれを食べているのです。
命をいただくということについて考えることは、日本ではほとんどないように思います。マラウイで見るような光景を一般的に日本で見ることはありません。
また、病院での出来事においてです。マラウイでは、誰かが亡くなるときに個室に入ったりすることはなく、大部屋のみんながいるベッドの一つで誰かの家族が亡くなるのをみんなが見ているという状況です。そして、誰かが霊安室に運ばれるとき、誰かがそこから自分の村や町へ帰るとき、みんなで見送るというような光景を何度も見ます。日本の病院ではこのようなことはありません。命の終わりを見るのを避けているように思うこともありました。
マラウイの人たちが、命をどのように思っているのかは私にはわかりませんが、命をいただくこと、命の始まりや終わりを普段から感じること、日本でも昔は知っていたこの光景は、物があふれて何もかもを当たり前のように感じでいる今の日本に、とても重要なのではないかと感じます。
ここに来て、改めて感じた命について、任期終了まであと1年少しありますが、今の気持ちを心に留めて、日本に帰ってからも伝えていきたいと思います。

2024年5月

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病院の敷地内で草を食べているヤギたち

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