JICA海外協力隊の世界日記

マラウイ便り

芝生の上のチテンジ

名 前:塩間 渚
隊 次:2023年度2次隊
職 種:看護師
配属先:ンチェウ県病院
出身地:大阪府

芝生の上に敷かれた、たくさんのチテンジ(アフリカ布)。

マラウィアンの母たちが病院で洗濯をして、芝生の上で干しています。すぐ近くに物干し竿があり、スペースもまだあるのに…。どうして物干し竿を使わないの?と尋ねると、「チテンジの全面に太陽の日が当たり、草が水を吸収し、すぐ乾くからだよ」と。

私は看護師として、病院の質向上(Quality Improvement)の一環である5S活動を行うために、ンチェウ県病院に派遣されました。5Sのアセスメントで病院内をラウンドしていると、改善できそうなポイントをたくさん見つけることができます。しかし、現地の人から話を聞くと、「あぁそうだったのか。」と思うことがあります。

日本の多くの方は、芝生の上で洗濯物を干すなんて、せっかく洗濯したのにまた汚れてしまう。虫がつく。と思うのではないのでしょうか?私もそう思った1人です。洗濯物は物干し竿に干すということが当たり前だと思っていました。たくさん物干し竿があれば、皆がそこに干せるようになると思いました。衛生面を考えると、芝生の上より物干し竿の方が衛生的です。私は医療者なので、できれば物干し竿を使ってほしいと思っています。病院側も十分な数の物干し竿を現在製作中です。(おそらく…笑)

マラウィアンにとってチテンジは生活必需品です。女性の腰に巻いて服となっていたり、入院ベッドのシーツとして使用したり、風呂敷にしたり、赤ちゃんの抱っこ紐になったり。そのため、早く乾けば乾くほど良いのです。マラウィアンの母からしてみれば、今まで当たり前に芝生に干してきたのをダメと言われ、困ることだと思います。


どちらの文化や価値観に合わせれば良いのでしょうか。
どちらかに合わせないといけないでしょうか。
どちらかを肯定し、どちらかを否定しないといけないのでしょうか。


マラウイに派遣されて、半年以上が過ぎました。最近よく思うことは、「発展とは何か?」です。マラウイの割とローカル寄りの暮らしを半年も経験すると、初めは不便だ、日本と比べて遅れているなと感じていた暮らし方も、今では「普通」になってきています。雨季の時期は停電が頻発し、計画停電もよく実施されます。断水は日常茶飯事で、3,4日断水することもあります。私の家のキッチン(と呼ぶに値するかは置いといて)にはシンクがありません。洗濯機もありません。
たしかに日本はすごく便利な国です。「日本がマラウイと比べて便利」なだけであって、このマラウイの暮らしが発展していないというわけではないのではないでしょうか。
停電、断水が頻発する国で、逆に日本の便利な製品は「不便」になりえるのです。


 このような考えや思いを抱くことができるのは、まさに海外協力隊の醍醐味ではないでしょうか。しかし、これらの気持ちの落としどころがわからず、ただ悶々としています。

いま、私が気づいたことは、国際協力は暮らしをまるっきり変えることではないということです。その暮らしを尊重し、正しく理解して、現地の人々が納得できる方法で解決していくべきだと思います。しかしこれはとてつもなく難題です。だからこそ60年という歴史で海外協力隊がマラウイに派遣され、暮らしてきたのだと思います。現地に住み、現地の人々と共に暮らし、共に働き、そして現地語を話す。「これが草の根か」と。

ボランティアの活動を通じて、私は引き続き現地の声に耳を傾け、彼らと共により良い解決策を模索していきたいと思います。私たちが共に成長し、より良い未来を築いていけることを信じています。この経験が、私にとっても、マラウイの人々にとっても、より豊かな未来への一歩となることを願ってやみません。

2024年7月

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