JICA海外協力隊の世界日記

マラウイ便り

理学療法分野における学生たちの就職事情~その苦悩と将来性~

名 前:柿山知子
隊 次:2022-4
職 種:理学療法士
配属先:ドーワ
出身地:千葉県

マラウイでの理学療法の歴史はまだ浅く、2014年に第1期生が卒業したばかりです。つまりはその誕生からまだ10年余りしか経っていません。日本ではリハビリテーション分野の重要性・認知度はかなり浸透しているので、さぞかしこれら卒業生たちは医療機関に引く手あまたなのだろうと思いきや、現実はそう上手くはいきません。少なくとも私がマラウイで出会ってきた学生たちは卒後の就職先探しに大変苦労しているようでした。今日はそんな学生たちを取り巻く現状とその課題、将来性について少し私見を書かせてほしいと思います。

そもそもマラウイにおいて理学療法を学んでいる学生たちは、皆エリート層の学生たちです。大学への入学試験も非常に難しく狭き門な上に、大学でのハードな単位取得や臨床実習を終えた後は国家試験、さらにそのあとは1年間のインターンが必須となります。このような長い課程を経てようやく臨床の場に立つことができるのです。

私もこれまで何人かこのインターン中の学生たちに会ってきましたが、皆一様に口を揃えて言っていたのが「このインターンを終えたとしても、理学療法士として働ける場所がなかなか見つからない」という現状でした。

なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか?私なりにいくつかその要因を考えてみました。

  1. 高度資格者の位置づけであるが故に相対的に給与水準は高い。よって特に県病院レベルでは小人数しか配置できずに結果的に卒業生が飽和状態となっている。
  2. 理学療法の重要性やその認知度の低さが故に需要が伸び悩んでいる。その結果患者数の増加につながらず、「理学療法士は少人数で十分 ⇒ 限られた人々(患者だけでなく医療スタッフ含め)しか理学療法の重要性を実感できない ⇒ やはり需要が伸び悩む」という負のスパイラルが起こっている。

恐らく現実は、これらに加え病院運営システム的課題やマラウイ保健省の課題など様々な要因が複雑に絡み合った結果だと思います。加えて知識や技術面の不足も一因ではあるでしょう。

しかし現隊員として実感しているところとしては、特に②の理学療法の需要の低さは大きな課題だと感じています。なぜなら本当に優秀で勤勉な理学療法士学生たちが大勢この国にはいることを知っているからです。そのような学生たちが紛れもなくマラウイのリハビリテーション分野にとってより良い未来を創っていくと確信しています。そんな彼らが国家資格を取ったものの就職できずに異なる職業についた場合、マラウイの理学療法分野における損失はいかほどか測りかねます。

 この課題に対して私ができることは余りにも微力ではありますが、例えば理学療法の重要性や効果を患者さんのみならず他の医療スタッフにも理解してもらうこと。また理学療法士自身にも自分の職業の可能性を認識してもらうこと、学生にはいかに自分たちがマラウイの医療分野にとって重要なポジションにいるかを伝えること。そのようなことは今後も自らの活動のなかで少しずつ伝えていきたいと考えています。

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