2026/10/26 Mon
活動 生活
ヤップの離島で出会ったもの。電話も水道もない島の暮らし

ヤップで看護師隊員として活動している瀬川です。
私は活動の一環でヤップ州の離島、ウォレアイ環礁(2026年3月)とファイス島(2026年9月)を訪問しました。


そこで出会ったのは、私たちが普段当たり前だと思っている生活とは大きく異なる、島ならではの暮らしでした。美しい自然、豊かな食文化、受け継がれる伝統。そして、島を訪れて初めて知った課題もありました。

[電話も水道もない暮らし]
訪問した島では、電話回線やデータ回線がなく、携帯電話を持っている人も限られています。インターネットが使える場所も、小学校やディスペンサリー(診療所)など、スターリンクという衛生インターネットが設置されたごく一部です。
水道もありません。生活用水には雨水タンクに貯めた水を使います。飲み水や料理、シャワーなど、毎日の暮らしに必要な水を雨に頼っています。

売店も限られ、島によっては一軒だけ、あるいは売店そのものがありません。ヤップ本島から不定期に運航する船で物資が運ばれ、本島に住む家族から食品などが届けられます。
離れて暮らす家族とのつながりが、島の生活を支えていることが印象的でした。
[食べ物は豊かなのに、なぜ肥満が多い?]
離島の食事といえば、魚やココナッツ、タロイモなど、自然の恵みを生かした食べ物が印象的です。

一方、船や飛行機で運ばれる食品もあり、缶詰の肉やパン、インスタントラーメン、米なども手に入ります。
私が驚いたのは、こうした自然の恵みが身近にある離島でも、肥満が大きな健康課題となっていることです。過去に行われた成人調査では、肥満率が90%を超える島もあり、本島より肥満率が高い島が見られました。
食べ物だけでなく、食生活や生活環境の変化も健康に影響しているのかもしれません。NCD(非感染性疾患)対策に携わる私にとっても、島の暮らしを知ることは、健康づくりを考えるうえで大切な経験となりました。

[ヤシガニにロブスター!島ならではの食文化]
ファイス島での滞在中には、ヤシガニやロブスターなど、普段なかなか食べる機会のないごちそうをいただきました。「日本で食べたらいくらするのだろう」と、つい考えてしまうほどのぜいたくな食材です。

ファイス島ではサメやタコを食べる習慣もあり、食文化にも違いがあります。
伝統的な衣服も印象的でした。女性が身につける巻きスカートや男性のふんどしなど、伝統衣装が今も使われています。島ごとに織物の模様が異なるとも聞きました。

さらに、サタワル島やイファリク環礁などでは、波や星を読み、コンパスに頼らず海を渡る伝統航海術が受け継がれています。ローカルカヌーは、島の人々と海との深いつながりを感じさせてくれる存在です。
同じヤップ州でも、島によって異なる文化や習慣があることに驚かされました。

[南の島に残る、日本とのつながり]
ウォレアイ環礁には、第二次世界大戦中の日本軍の駐留に関わる歴史が残っています。当時はメレヨン島と呼ばれ、戦闘だけでなく、食料不足や飢餓によって多くの命が失われました。
現在も慰霊碑や防空壕などの戦跡が残り、遺族による遺骨の捜索も続いていると聞きました。

美しい海と自然に囲まれた島に、今も戦争の記憶が残っている。そのことは、忘れられない印象の一つとなりました。
[島の暮らしが抱える課題]
島にはディスペンサリーと呼ばれる保健施設があり、住民にとって身近な医療を支えています。しかし、医師や看護師が不在の島がほとんどで、医療物資も充分ではありません。

教育環境には制約もあります。高校にあたる9~12年生を学べる学校は限られているため、進学のために島を離れる子どもたちもいます。
また、ミクロネシア連邦の人々は、一定の条件のもとで米国に入国・居住し、就労することができます。仕事や教育の機会を求めて島を離れる若者もおり、人口減少や地域社会の将来も課題となっています。
[離島を訪れるには、準備と心構えが必要]
ヤップの離島には、一般的なホテルやレストランがほとんどありません。訪問者はホームステイをしたり、ディスペンサリーやコミュニティハウスなどに宿泊したりします。
滞在には事前に入島許可を得る必要があり、「カピタルワ」と呼ばれる贈り物を納める慣習もあります。食料品店も限られているため、飲料水や食料をある程度持参するなど、事前の準備も欠かせません。
それでも、訪問した際には島の人々が温かく迎え、地元の料理を振る舞ってくれました。限られた環境の中で、食事を分け合い、訪問者をもてなしてくれたことが心に残っています。

[離島を訪れて感じたこと]
離島で過ごした時間は、私にとって貴重な経験となりました。
自然の恵みを活かし、限られた環境の中で力強く暮らす人々。便利な生活に慣れた私にとって、当たり前だと思っていたものを見つめ直す機会にもなりました。
島ごとに異なる文化や歴史、そして暮らしの中にある課題。実際に訪れ、人々と接したからこそ知ることができたことがたくさんあります。
離島の人々から、たくさんのパワーとエネルギーをもらった訪問でした。私自身も、今あるものを大切にしながら、たくましく生きていきたいと思います。

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