JICA海外協力隊の世界日記

ニカラグア便り

1歳の誕生日には来てね

1歳の誕生日には来てね。」

7カ月ぶりに再会したお母さんはそう言って笑っていました。腕の中には、元気に成長した赤ちゃん。その姿を見たとき、妊娠中に初めて彼女と出会った日のことを思い出しました。

彼女は私が以前世界日記で紹介した、自宅出産を希望していた妊婦さんです。

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当時、私は配属先であるSILAIS(県保健管区事務所)や警察、教育省、家族省、地域の保健スタッフとともに家庭訪問を行いました。こうした複数機関での訪問は決して日常的なものではなく、母子の命に関わる緊急性が高いケースでした。

私はあの時、「どうしたら安全に出産してもらえるだろう」ということばかり考えていました。

差し迫った状況の中で説得することに必死になり、彼女がなぜ自宅出産を希望していたのかを十分に聞けていなかったように思います。その後、彼女はカサマテルナ(お産を待つ家)へ入所し、無事に病院で出産することができました。

そして先日、7カ月ぶりに再会しました。「どうして家で産もうと思っていたの?」改めて彼女に尋ねてみました。すると彼女は、

「母のようになりたかったから。」

と答えてくれました。その言葉がとても印象に残りました。

ニカラグアで母子保健に関わる私たちにとって、自宅出産はリスクのある選択です。ニカラグアでは母子の命を守るため、施設分娩が推進されています。出産時の大量出血や新生児仮死など、予測できない緊急事態に対応するためです。

けれど彼女にとっては、単に病院で産まないという選択ではありませんでした。母と同じように出産し、母と同じように子どもを育てる。それは彼女にとって、自然な未来だったのかもしれません。さらに、知り合いが病院で出産した時の話を聞いて不安を感じていたことや、実際に病院にたどり着くまでに時間のかかる地域で暮らしており、陣痛が来た時にどうやって病院へ行けばよいのか分からなかったことも教えてくれました。

私はこれまで、「なぜ病院に行かないのだろう。」と考えていました。

しかし本当に見るべきだったのは、出産という結果だけでなく、その選択に至るまでの彼女の暮らしや思いだったのかもしれません。母のようになりたいという思いがあり、病院への不安があり、そして病院へ行くことが簡単ではない現実がありました。彼女が自宅出産を希望した背景には、私が想像していた以上にさまざまな理由があったのです。

別の日、私は栄養に関する研修に参加していました。

研修では理想的な栄養指導について学びます。保健省から各県、各市町村の医療スタッフに向けた研修で、住民へどのような栄養指導を行うかを学ぶためのものです。会場には食事の例として、野菜や果物が並んだ色鮮やかな献立が展示されていました。

一方で現場には、お米や豆を買うだけで精いっぱいの家庭があります。手洗いを勧めたくても水がない。病院へ行きたくても交通手段がない。家庭訪問に回っても、翌日にはその家族がもうそこにいないこともあります。研修でも、「今日食べるものにも困っている家庭に、現実的にどのような栄養指導ができるのだろう。」という声が上がっていました。

彼女との再会と栄養研修での出来事を通して、一人ひとりの選択の背景には、その人なりの理由や背景があることを改めて考えさせられました。

協力隊として活動していると、自分の無力さを感じることもあります。栄養指導の理想がある一方で、食べることに困る家庭があります。また、安全な施設分娩が推奨されていても、病院へ行くこと自体が簡単ではない人もいます。

その間には、想像以上に大きな距離があります。

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それでも、こうして元気に成長した赤ちゃんを抱く彼女と再会し、7カ月の成長を一緒に喜べたことは決して当たり前ではありません。7カ月ぶりに再会した彼女と話をする中で、私はやっと少し彼女のことを理解できたように思います。

「みんな家で産んでいたから、危ないこともあるなんて知らなかった。」「私も赤ちゃんも元気だよ。1歳の誕生日、また来てね。」

その言葉がとても嬉しく、心に残っています。

私の配属先ではこの大きな距離を少しでも埋めようと地域を歩き続けている人たちがいます。私もその一人として活動するなかでこうして母子ともに元気な姿で再会できることがあります。

誰かの話に耳を傾け、その人の思いを知り、その後の成長を一緒に喜ぶ。この出会いの積み重ねが、私にとって協力隊活動の大きな意味だと感じています。

1歳のお誕生日を一緒にお祝いできることを楽しみにしています。

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