2026/02/04 Wed
人 活動 自然
パプアニューギニア 東ハイランド州で農業の力を育てるVol.5 ~技術は、人との関わりの中で広がります―PNG・東ハイランド州ゴロカよりー~

1.現場の反応が変わり始めています
緑肥導入から4か月が経過し、現場の空気に変化が芽生えつつあります。州農畜産局 (DAL) 職員の中には、播種方法や次期作の圃場計画について自ら提案する姿が見られ、作業が「指示された仕事」から「自分の役割」へと意識変容していると感じます。また農家の側でも、「次のミーティングはいつですか」と声がかかるなど、展示圃が地域の学びの場として日常に入り込みつつあります。

土壌講習会: すでに職員や学生の間で活発な意見交換が行われている
2.観察から見えた 「技術の芽」
採種圃ではあえて余分な口を出さず、現地の栽培技術を尊重しました。その結果、日本では基本とされているばら撒きが条撒きへ、施肥も条施 肥へと自然に変化していきました。限られた資材を「少しずつ、丁寧に使う」という態度が印象的でした。また、日本では等高線栽培が一般的ですが、山岳地帯である東ハイランド州では排水を優先した斜面方向の作付けが合理的でした。土地が変われば技術も形を変えることを学ぶ機会となりました。

写真2 PNGの慣行栽培である条播きによる緑肥(クロタラリア)の発芽状況
3.課題は 「理解」と「残し方」
一方で、課題も明確になってきました。採種した種子の保存方法は3月以降に改めて整理が必要であり、理解の揺らぎも見られます。そのため最近は説明の際に質問を交える形で進めています。PNG の現場では口頭説明が霧のように消えてしまうことがあります。そのため、理解の促し方と記録の残し方に工夫が求められます。
4.記録と整理が技術の継承につながります
私の活動は緑肥導入と普及にとどまらず、DAL の取組の一つである「農家による出荷組織の育成」にも間接的に関わっています。展示圃や見学会を通じて、職員の側でも農家が集まり、集落内で緑肥の波及方法を話し合わせようとする小さな動きが見え始めています。今後は、採種の技術確認、収量調査、緑肥導入前後の土壌変化などを記録し、小さな観察を次の判断材料につなげたいと考えています。また、活動が進むにつれ、記録の重要性が増してきました。
展示圃の結果をまとめるだけでなく、
・種子輸入手続き
・緑肥の保管
・栽培技術
・土づくり
・病害虫防除
・DAL から求められる日本の農業組織紹介
など、蓄積された情報は幅広くなっています。そのため印刷物を作成し、オフィスだけでなく担当職員へ配布し、JICA 事務所にも保管をお願いするなど、成果が埋もれない仕組みづくりを進めています。また、成果集としてまとめ、ポートモレスビーのDAL本部に共有することも検討しています。
5.技術は人によって育ちます
振り返ると、技術の変化は土壌より先に、人の変化として現れるのだと感じています。展示圃が前進したのは DAL 職員が動いた結果であり、採種圃が進んだのは NAQIA(国立農業検疫検査機構)の調整と JICA の支援があったためです。活動は決して一人の働きではなく、地域の主体性と制度が共に動いた結果であることを改めて実感しました。

図1・2 これまでの記録を活用した様々な資料を作成 左;緑肥作物クロタラリアの採種方法、右;緑肥を組み入れた輪作方法
6.おわりに
展示圃は作物が育つ場所であると同時に、人が育つ場所でもあります。緑肥の根が土をつかむように、技術と経験が人と組織に根づき、任地を離れた後も続いていく。その仕組みづくりを、これから職員の皆さんと一緒に進めていきたいと思います。
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