2026/01/21 Wed
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パプアニューギニア 東ハイランド州で農業の力を育てるVol.4 ~展示圃が動き出した ― 二つの圃場と職員の変化― PNG・東ハイランド州ゴロカより~

1.職員の対応の変化
緑肥の展示圃を動かし始めて、ようやく「人が動き始めた」と思う瞬間がありました。これまでは、職員たちは私の話を聞いても「ふんふん」という感じでした。ところが最近は、「これは採種なの? 農家に見せるため?」といった質問が来るようになりました。PNGの人たちは、自分が人に説明できることを喜びに感じる傾向があります。深く理解しているわけではありませんが、説明しようとすること自体が技術の広がりの芽なのだと感じています。
2.圃場は、ただ置けばいいわけではありません
当初、展示圃は丘陵地の放牧場となっているコロフェグ地区に設置する予定でした。しかし現地で土壌調査をした結果、粘土質で肥料分もほとんど存在しないため、採種には向かないことが分かりました。そのため 内で相談し、採種試験はゴロカ地区の畑地に変更しました。一方で、コロフェグ地区は土壌条件が悪いため、緑肥の「土づくり効果」がより見えやすい場所です。採種には向かないけれど、技術展示としては適地という位置づけになりました。展示圃にもそれぞれ役割がある――これを職員と共有できたのは、大きな一歩でした。

写真1 コロフェグ地区の展示圃予定地、各ブロックとも が低く肥料分が少ないため採種地としては適してない。家畜侵入防止柵設置後播種予定
「EC値(電気伝導度)は土中に溶けている肥料成分量の目安となる指標で、 低すぎると肥料不足、高すぎると施肥過多を示す。」

写真2 ゴロカ地区の採種展示圃、畑地のため土質は良いがEC値は低く、採種のため化学肥料の施用を決定した11月下旬に播種済み
3.現場には現場の課題があります
今回導入したクロタラリアを含め、緑肥の中には、種類や摂取量によっては家畜の健康に影響を及ぼすおそれがあるものがあります。そのため放牧場であるコロフェグでは、柵の設置が必要となり、職員が現在準備を進めています。柵ができ次第、播種する予定です。一方、採種圃となったゴロカ地区では、土壌分析の結果、「土質は良いが、窒素がほぼない」という状況でした。そこで化成肥料を入れて播種を行い、今後は計画的に採種状況を確認する予定です。机上の計画と現場の現実には、いつも差があります。その差を埋めていくことが、自分に求められていることだと感じています。
4.組織も少しずつ動き始めています
近く、農家リーダーと DAL 職員が集まる会議が予定されています。ここで展示圃と試験の進捗を報告することになりました。さらに職員からは、「現地で講習会をした方が理解しやすいのでは?」という提案も出ています。これが実現すれば、展示圃が届けたい技術が広がる場へと変わる瞬間になると思っています。
5.展示圃から学んだこと
展示圃は、単に土地を確保して種を撒けばできるものではありません。農家が知りたいこと―土づくり、施肥、病害虫防除。その全てを説明できるよう準備し、同時に土壌や気象条件も確認しながらできるだけ失敗を減らす必要があります。展示圃は、技術とその広がりの可能性を同時に試す場所だと実感しています。緑肥そのものはまだ芽を出したばかりですが、圃場をめぐる「人の動き」はすでに芽生えています。技術の広がりとは、作物だけでなく人と組織が動き始めることなのかもしれません。
6. Vol5(最終回)では
これまで実施した活動を、次年度や担当者が変わっても続けられる形にするための、任地での引き継ぎと継承方法について紹介したいと思います。
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