2026/09/01 Tue
活動
作業療法を通じて地域に寄り添う ‐PNGで新たな挑戦を始めた神崎隊員‐

PNG国ボランティア調整員の武藤です。今回は、JICA海外協力隊として初めてPNGに派遣された作業療法士、神崎正成隊員をご紹介します。
「患者さんは退院した後、どのような暮らしを送っているのだろう。」
そんな疑問を抱いていた神崎隊員が、訪問リハビリで目にしたのは、両足にまひがありながらも力強く生活する患者さんの姿でした。
神崎隊員は、ミルンベイ州立アロタウ病院で作業療法士として活動しています。患者さんへのリハビリテーション支援に加え、病院スタッフや学生への指導、そして作業療法の普及に取り組んでいます。PNGでは、作業療法士という職種はまだ広く認知されているとは言えず、その役割を知る人も多くありません。そのような環境の中で、神崎隊員は患者さんへの支援とともに、作業療法という新しい専門分野の理解を広げる活動にも挑戦しています。
●病院では見えなかった患者さんの暮らし
活動開始から約2か月後、神崎隊員は病院スタッフとともに訪問リハビリに参加しました。
訪問先で出会ったのは、両足にまひがありながらも高床式住居で生活し、未舗装の道を車いすで移動しながら暮らす患者さんでした。さらに、その方は家族の一員として役割を持ち、畑仕事にも関わっていました。神崎隊員は当時を振り返り、「実際の生活は私の想像を超えるものでした。この生活様式に対して、作業療法士として自分に何ができるのだろうかと考えさせられました」と話します。
病院の中で患者さんと接するだけでは見えない現実に触れたことで、生活環境そのものを理解することの大切さを改めて実感したそうです。
●日本の常識が通じない医療現場
活動を始めたばかりの頃、神崎隊員は日本との医療環境の違いにも驚かされました。日本では手術後すぐにリハビリを開始するような骨折患者が、現地では保存療法によって長期間ベッド上で安静にしていることもあります。当初は戸惑いもあったそうですが、活動を続ける中で考え方が変わっていきました。
「自分が教えるだけではなく、現地の医療スタッフから学ぶことも多くあります」 限られた資源の中で工夫しながら患者さんを支える現地スタッフの姿から、多くのことを学んでいるそうです。

●言葉が通じなくても伝わるもの
神崎隊員が関わった患者さんの中でも、特に印象に残っているのが結核性脊椎炎の男の子です。
初めて会った時、彼は足を動かすことができず、回復の見通しも分からない状態でした。
神崎隊員は機能訓練だけでなく、「いいね」「頑張っているね」という気持ちを身振り手振りで伝え続けました。
言葉の壁はありましたが、少しずつ信頼関係が生まれ、男の子は自主訓練やコルセットの装着に真剣に取り組むようになりました。

そして先日、自らの足で歩いて退院していったそうです。
「患者さんやご家族の笑顔が増えていく様子を見ることができたことは、大きな喜びでした」
という言葉からも、神崎隊員と患者さん、ご家族とのつながりが伝わってきます。
●もっと教えてほしい」
患者支援だけでなく、神崎隊員は学生や若手医療従事者への指導も行っています。
ある学生からは、「私たちの学校にも教えに来てほしい」と声を掛けられたそうです。
学生たちは日本のリハビリテーション技術だけでなく、日本そのものにも高い関心を持っており、「どうすれば日本で研修を受けられるのか」と質問されることもあるといいます。
自分の活動をきっかけに、学びへの意欲や将来の夢が広がっていくことに、神崎隊員はやりがいを感じています。
●日々のすべてが学び
最後に、PNGで活動するやりがいについて尋ねると、神崎隊員はこう答えてくれました。
「日々の通勤や日常生活、病院での活動のすべてにやりがいと楽しさを感じています。」
現在は、医療過疎地域でも活用できるリハビリ教材の作成や、障がいのある方々の声を聞く活動にも取り組もうとしています。
患者さんの暮らしを知り、その人らしい生活を支えること。そして、現地の人々と共に学び、共に考えること。
神崎隊員の挑戦は、まだ始まったばかりです。

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