JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_89 〜Help Others and Contribute to Society〜

 私は2024年度2次隊で、セントルシア国派遣の同期は、私を含めて5名です。同期隊員のおかげもあり、任期終了まであと半年というところまで、何とか辿り着くことができています。彼らに対して、心から感謝の気持ちを表したいと思います。ありがとう!あと半年、互いに励まし合いながら、頑張ろうね。
 ところが、私たち仲良し同期の意見が、真っ二つに分かれる瞬間がありました。それは、忘れもしない、新人隊員時代の現地訓練の英語授業の時間。「遭難して、無人島に流れ着く。生き残ったのは2人。無人島でのサバイバル生活が始まったが、運が悪いことに、2人の性格が正反対で気が合わない。」この状況を仮定する中で、「あなたは気が合わない相手と力を合わせますか。それとも、一人でサバイバル生活をする道を選びますか。」という問いが、私たち5名に投げかけられたのです。もちろん、私は、「生死がかかっているんだから、誰もが、相手と力を合わせて生き残る道を選ぶだろう。」と思い込みました。しかし、結果は、「相手と力を合わせる」が2名、「1人でサバイバル生活する道を選ぶ」が3名でした。しかも、驚くことに、「相手と力を合わせる」2名は、私を含めて、学校教育に携わった経験のある隊員だったのです。やはり、学校教育バブルの中にいると、どうしても理想を追い求めたくなるのでしょうか。

 さて、マズローの欲求5段階説というものを、ご存知でしょうか。「お腹が減った」「もう少し眠りたい」という生理的欲求から始まり、「安心して暮らしたい」「安全を守られていたい」という安全欲求、「素敵な家族に囲まれていたい」「楽しいクラスに所属したい」という社会的欲求、「いいぞ、その調子」「よく頑張ったね」と褒めてもらいたい承認欲求、そして、「英検に合格したい」「昇進したい」という自己実現欲求が、人間にはあるというのです。私は、この「欲求」が満たされた際の「しあわせ」に置き換えて、この表を眺めることにしています。「お腹いっぱいで、しあわせ」「安全が守られて、しあわせ」「所属できて、しあわせ」「褒めてもらって、しあわせ」「夢を実現できて、しあわせ」というように。ところが、私には、他に少しレベルの異なるしあわせがあります。「人の役に立てて、しあわせ」「社会の役に立てて、しあわせ」と感じるのです。時には、自分自身の生理的欲求や安全欲求を抑えてでも、「他者のため」を考えることさえあります。これも、40年という長い歳月を学校教育バブルの中で過ごしたところに、原因があるのでしょうか。人から「ありがとう」「Thank you」「Merci」と伝えられると、たまらなく幸福感に包まれるんですよね。

 私が、JICA海外協力隊に応募したのも、「人の役に立つ」「社会の役に立つ」ことが、私のしあわせにつながるからです。私立学校の教員として、家族を養い、生計を立てていたときから、この気持ちに変わりはありません。しかし、今は特にボランティアとして無償で奉仕していますので、余分なところが削ぎ落とされ、とても清々しく活動できていると感じるのです。というのも、給料をもらっていませんので、給料アップを願う必然が、全くありません。即ち、給料のために働くという側面が綺麗に消え失せ、唯一こども達の成長のためだけに、時間をかけ、そして汗を流すことができる状況なのです。もちろん、労働対価を得ながら教員生活を送っていた時代を、蔑むつもりは少しもありません。その時代に積み上げたスキルや見識があるからこそ、今、国際協力に勤しむことができているのですから。  無人島で生き残った相手が、たとえ性格の合わない人であったとしても、「(相手の)役に立ちたい」と、私は思うかもしれません。もしかすると、「(相手の)ありがとう」を期待して、幸福感を味わいたいのかもしれませんね。

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