2026/02/24 Tue
文化 生活
隊員Gのセントルシア日記_66 〜Temporary Leave for Japan〜

娘の結婚式を祝うために、私は日本に一時帰国をします。JICA海外協力隊員は年間20日以内の任国外への旅行が認められています。広げた見聞を配属先での活動に生かす隊員がいれば、家族や愛する人と再会することによって新たな活力を生み出す隊員もいます。長い2年の任期を乗り切るためには、リフレッシュすることも大切な自己管理の方法なのです。そして、私のように家族をもつ隊員にとっては、自分のためというよりは、家族のために過ごす時間もまた必要不可欠です。
さて、13ヶ月ぶりの日本。私は、海外を旅行するときはいつも、お伽の国を旅するような感覚になります。言葉が違えば、文化や習慣も異なる遠い国は、お伽話に出てきてもおかしくないのです。特に、海外旅行を終えて帰国する最終日には、何か興味深い書物を読み終えたような余韻を残すことさえあります。ところが、今回の一時帰国では、長年住み慣れた祖国・日本が、お伽の国となります。逆カルチャー・ショックとは、もう言い古された感じのある言葉ですが、私にとっては遅ればせながら初めての体験になりますので、今とてもワクワク、ドキドキしています。海外在住の更なるメリットが、思わぬところから転がり込んできたのです。

予想されるのは、まず季節感の混乱。セントルシアには乾季と雨季しかありません。太陽の南中高度をものさしとするならば、日本の秋分の日から春分の日まで(秋、冬、春)が全くないことになります。私が一時帰国するのは、2月中旬ですので、まだまだ厳しい寒さの季節です。そもそも私が常夏の国をボランティア派遣先として選んだのも、寒さが嫌いだったからです。しかし、1年も経過すると人間は、いい加減なもので、そろそろ鍋料理やお風呂が恋しくなってきたところでした。久方ぶりの、冬の乾燥した寒さを、私はどう感じることになるのでしょうか。
続いては、食卓の混乱。セントルシアは南の小さな島ですので、食材が不足し、輸入に頼っているように見えます。しかし、それはアジアの料理やヨーロッパの料理を作ろうとすれば、の話です。実は、ローカル・ルシアンたちは、気候や風土にあった豊かな食材を生かして、地産地消の暮らしを営んでいるのです。そして、私はと言えば、それらのローカル食材を生かし切ることができずにいます。ところが、カレー・ルゥがなければ、カレー粉、小麦粉、オイル、ブイヨンから作り、お好み焼き粉がなければ、小麦粉、だしの素、醤油から作れるようになりました。四季それぞれの食材に恵まれる日本の食卓は、私の目にどんな風に映るのでしょうか。
そして、言語の混乱です。セントルシアでは、平日に日本語を使うことはありません。週末も隊員仲間に会うことがなければ、ほぼ100%英語だけで生活している、といっても過言ではありません。(実際には、互いの生存確認のために、奥さんと毎日5分程度、関西弁でビデオ通話をしています。また、この世界日記も日本語で執筆していますね。)そう言えば、久しぶりに書いた漢字、「新」や「宝」が妙な形に見えて、不安になったこともありました。逆に、簡単な作業の最中であれば、テレビのABCニュースの英語が、無意識のうちに、自然に耳に入ってくるようになりました。日本語から遠ざかり、英語脳に近づきつつある現状を抱えて、日本に滞在するとどんなことが起こるのでしょうか。

今回と次回の2話に渡って、日本への一時帰国について綴ります。まず今回は、帰国に対する期待感と不安感を、私なりに表現してみました。日本の良さを再発見できるのではないかというのが、最も期待するところです。しかし、全く思わぬところから、逆カルチャー・ショックの波が押し寄せるかもしれませんね。また、今回の日本滞在の大義は、娘の結婚式ですので、長い人生の中でも稀有な体験をすることになるでしょう。ハプニングが連続する珍道中になりそうではありますが、次回の世界日記に書き留めて、読者の皆さんと、私の旅の教訓をシェアすることができれば、と考えています。
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